63.召命⑦『六つの召命を完遂した後、君には死んでもらう』
ユーサ。
これが——“最後の召命”だ。
召命七『六つの召命を完遂した後、君には死んでもらう』
六つの召命を成し遂げたあと、君には、生きることを終えてもらう必要がある。
理由だが……覚えているかな?
召命三——
『黒冠位悪魔の【死の灰】を六つ、最天使長が持つ【秘宝石】を七つ集めろ』だったね。
気づいたかもしれないが、その【死の灰】の——最後のひとつは、君の身体なんだよ、ユーサ。
君自身が、“七つ目”の存在なんだ。
だから今ここで、神が、君の命をもって、君の物語を完結させる手もある。
君の【死の灰】を、地上にある誰かの【秘宝石】のもとへ送り届け、別の者に、同じ召命を託すことだってできる。
……でも、できることなら、神は、その選択を取りたくない。
君にも、選んでほしくはない。
慈悲を与えられない神など、神ではない。
神である神が、その選択をすれば、神である意味がない。
存在としての尊厳も、価値も、消えるべきであり、
奇跡も秘術を唱える資格さえ、神にはない。
君が歩んできた物語も、絆も、選択も、すべて未完成のまま——ただ破滅のためにあった結末へと収束してしまう。
……かつて、
我が身を血に染めて、一つの戦いを終わらせた者がいた。
その終焉の刹那に、彼女は——自らの終わる意味を、自ら選んだ。
神は、それを君にも。
いや、それ以上のことを、君ならできると信じている。
そして——君が今、真っ先に悩むであろう問いも、私は知っている。
「家族に言うべきか?」
「仲間に隠しておくべきか?」
……そうだろう、ユーサ。
なんでも一人で抱え込む、真面目で、優しい君らしい迷いだ。
その答えに、君が沈黙を選ぶこともあるだろう。
けれど、勘違いしないでほしい。
黙っていることが美徳なのではない。
“言わなくていいことを黙っていること”が、“美徳”なのだ。
神としての意見を述べさせてもらうなら——
言いたいことは、言った方がいい。
そして、『言うならば、“タイミング”をよく考えること。』
薬というものがあるだろう?
正しいタイミングで飲めば、命を救う。
だが——間違えれば、それは毒になる。
言葉も、同じだ。
どれだけ正しい内容でも、
伝える“時”と“相手”を誤れば、それは、相手の心を壊してしまう。
“真実”を持っていることは、責任であり、覚悟でもある。
だが、“真実を伝えること”が、常に正義とは限らない。
“言葉”も、“真実”も——伝えるべき“時”がある。
そしてそれは、君にしか見極められない。
……人は、なぜ“言葉”を与えられたのか?
通じ合うためだよ。
すれ違うためじゃない。
だが、皮肉なことに——
この世界に“死”という概念が生まれた起点は、
**原初の夫婦神の“言葉のすれ違い”**だった。
彼らは互いを深く愛しながらも、“言葉のタイミング”を間違えた。
そして、お互いの“伝えたかった言葉”に対して、最後まで耳を傾けなかった。
だから、“死”が生まれた。“命”が分かたれた。
“言葉”は、薬にもなれば、毒にもなる。
伝えるべきことを、伝えるべき時に。
それができなければ、時にそれは——取り返しのつかない傷を残す。
ユーサ。
何が言いたいかというと、間違えるな、ではなく、神ですら間違えるんだ。
たった一人の生命体である君が間違えても、仕方のない事だ。
君の真面目な謙虚さは素敵だと思うが、最善策を見逃す可能性がある。
手を抜くんじゃなくて、肩の力を抜きたまえ。
頭に浣腸を刺すぐらい、物事は柔軟に考えるんだ。
だから、タイミングに迷ったときは、これを思い出してほしい。
『物事が上手く進む為の【優しい嘘】は、悪ではない』
何が“優しさ”かは、君自身が決めるんだ。
見せかけの温もりじゃなく、
本当に相手のためを想った嘘なら——それは、誠実だ。
それも、一つの【魔法の呪文】だ。
優しい嘘が誠実になり、誠実が真実に近づく。
そして、前に進むための一歩になれる。
忘れないでほしい。
君という存在は、命には、意味がある。
誰かの——希望に変わることがある。
こんなところで、止まる命であってほしくない。
最期の瞬間まで、君自身の物語を、君の意志で歩みきってほしい。
……召命という名の、神からのお願いになっているね。
……大変残念だが、君が描く“家族と平穏な日々を過ごす未来”は、叶わない事を許してほしい。
神が言うのもなんだが……
「こうしておけばよかった」と後悔しても、
人生にリセットボタンがあったとしても、
最初からやり直すことは、できない。
『選び続けるか』
『選び直すか』
いずれにせよ、“進む”しかないんだ。
改めて聞くよ、ユーサ・フォレスト。
今ここで死ぬか。
召命を終わらせてから死ぬか。
運命を受け入れないで。
君が、君自身の「命」を、どう「運ぶ」のか、選んで見せてくれ。
最初に決めていた召命を、やっと全て書き終えました。
そして、どうするのか、凄く悩みました。
けど、これで進んでみます。
伝えたかった人への手紙に書けなかった思いを。
作品に通して。




