26.ラブ・イズ・ヒア《わたしはここにいるよ》
「__んん? パパァ?」
全く起きる気配のなかった、マリアの目が覚めた。
「《 ー ◎ 昇天という黒魔法弾丸 ー 》」
BANッ!!!
グシャ!!
「ギギギギギ、ィィーGYAAAAAAAAAAAAAAA ーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
サキュの断末魔が響く。
サキュの下半身が、ユーサの魔法の弾丸により撃ち抜かれ、肉が引きちぎれるような音を立て消えた。
「___や、め、ろ」
「あなた!!!?」
悪魔の姿をしたユーサの顔が、少しずつ優しい人間の顔に戻っていった。
ク・エル達に向けていた左腕を、右手が抵抗するかのように抑え込み。
サキュがいる上空に指先を向けて、弾丸の軌道を変えた。
「__ディア、マリア、にげ、__て」
ディアとマリアに、必死で伝えるユーサ。
「おおおお、、おのれ!! ユーサ・フォレスト!! こ、、これは、、再生できない!? ッチ!!」
人が変わったかのように、うろたえる小悪魔。
胴体が半分無くなっても生きている姿が、普通の生命体ではない事を物語っていた。
「……サ、キュ」
「アラアラ。ク・エル。お互い無様な姿ね。……また会いましょう。まぁ、その悪魔を倒せたらでしょうけどね」
サキュは、何か呪文を唱え始め、一瞬で姿を消した。
「AAAAAAAAAAAーーーー!!!!」
ドゴッ!!!
ユーサの左拳が悪魔の意思を持ったかのように、ユーサの顔を殴った。
ユーサの顔が徐々に悪魔の表情に戻った。
「__返セ、コレハ、ボクノ、、、身体、、、ダゾ、、、」
ユーサの口から、おぞましい声がした。
「__ヤット、戻レタンダ、、、行カナキャ、、、アノ場所ニ、、、」
ユーサの身体が、ぐらんぐらんと揺れ始まる。
「あの場所?」
ディアが、そう声に出した。
ユーサは、声がする方を向いた。
ユーサの悪魔側の顔が、ニヤリと厭らしい笑顔で笑う。
「__抵抗スルナラ、オ前ノ大事ナモノヲ、壊ス、、」
「!!? あなた!!」
悪魔の姿をしたユーサが、ディア達に接近する。
ユーサの左側が拳を上げる。
今にも、ディア達を殴り殺そうとする仕草。
ユーサの拳が、ディアに当たる瞬間。
「パパッ!! やめてーーーーー!!!」
マリアの叫声と同時にユーサの拳が止まった。
「……まさか。コレが」
ク・エルと、オトキミ達は見た。
目を閉じていたディアとマリアには、何が起きているのかわからなかった。
傍から見れば、ユーサが殴るのを止めたように見えるが。
「……マリアちゃんの……神秘術?」
マリアが光輝き、ディアとマリアを守るバリアがユーサの拳を止めていた。
「__!!? コレハ、、!!?」
ユーサの上着のポケットからマリアへと光り輝くオーラが現れていた。
そのポケットには、シ・エルがマリアに渡した黒曜石の宝石が入っていた。
「あれ? このバリア、、さっきの?」
マリアの声にディアが目を開けた。
怪我をしていていない自分達に気づいたのか、目の前にある自分達を守るバリアに気づく。
「確か、、悪魔達が、、神鉄の処女。って言っていたような……」
「……え?」
ディアが口にした呪文の名前を聞いて、ク・エルが声を失うように驚く。
「__A、A、、アアアアアアアアアアアアアーーーーー!!!!」
マリアのバリアに触れているユーサの拳が離れず焼き尽くされていく。
「__ハ、、離セエエエエエエェェェェーーーー!!!!!!! AAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
悪魔の姿をしたユーサの身体が拳から、腕、肩、体、顔、と少しずつ灰になるかのように焦げ付く。
「パパッ!!?? イヤ!! やめて!! バリアさん!! とまってええええーー!!!」
「マリア!!?」
「……まずいですね。マリアちゃんが、まだ神秘術をコントロールできていない」
「!? ク・エルさん!! どうすれば!!!?」
「……ディア様。申し訳ございません。私には……」
「そんな……どうしよう。どうしよう」
取り付けられた爆発物の処理方法がわからなくなったかのように。
どのように対処して良いのか、成す術もなく混乱する一同。
ー 大丈夫だよ、ディア ー
「!!?」
ディアは、ユーサの声が聞こえた気がした。
ー 困った時はね、こうすれば良いんだよ ー
何かを思い出したかのように、ディアは覚悟を決めた顔で、マリアのバリアに触れた。
「……ディア様!!? 危ない!!」
「大丈夫です。ク・エルさん」
ディアはそう言いながら、バリアをすり抜けた。
バリアがディアを異物と判断しなかったのか、ディアは無傷のままだった。
そして、ディアは、ユーサとマリアを抱きしめた。
「ママッ!! たすけて!! こわいよ!!!」
「大丈夫よ。マリア」
「__ナンダ!!? ヤメロ!!! ユーサノオンナ!!!」
「大丈夫よ。もう一人のあなた」
「__ア、、、」
ディアの一言に、悪魔の姿をしたユーサが動きを止めた。
まるで、泣き叫んでいた子供が泣き止むように。
やっと自分を見つけてくれた事に、嬉しくなり言葉を失うかのような反応。
「ラブ・イズ・ヒア」
ディアの周りが微かに優しいオーラで包まれる。
ディアが呟いた一言で、マリアのバリアが消えた。
そして、焼き尽くされていく悪魔の姿をしたユーサの身体が、少しずつ人間の形に戻っていた。
「だから、安心して」
ディアがそう呟いた頃には、ユーサの身体から禍々しい悪魔の魔力は、嘘のように消えていき。
ユーサは立ち上がる力すらないのか、ディアにもたれかかった。
「ディア……マリア……ありがとう……」
「うぇえええーーーん!!! ママァー!! ありがとおおーー!!
ユーサの口から、いつもの優しい声がした事により、マリアが泣き叫ぶ。
「おかえり。あなた」
「パパァーー!! おかえりーー!!!! あいたかったよーーーー!!! うぇええーーん!!!」
「うん。ただいま」
時間にして半日も経ってはいなかったが、三人にとって長く感じた再開の場面。
三人の家族が、泣きながら抱きしめ合っていた。
「……なるほど。……だから、シ・エル様は、ディア様達を守るように……と。納得がいきました」
ク・エルが、何かに気づいたように呟いた。
そして、今までの疲れが彼女を襲ったのか、壁にもたれかかったまま、ゆっくりと肩の力を抜いた。
「ぐっすん! 良かった! 良かったよぉ、ユーサのアニキィーー!!」
「泣、い、て、る(オレも)」
「うるさい!! 俺、家族物に弱いんだよ!!」
「オトキミ様。それ別に言わなくても知ってます」
オトキミ達も、ユーサ達の姿を見て安心したのか、全てに決着が着いた安心感に浸っていた。
「オトキミ様。この都市の周辺に魔力反応が無くなりました」
「となると……」
「終、わ、り(クエスト・クリア)?」
「よっしゃあ! ユーサのアニキも戻ってきたし! この都市を襲った、さっきの小悪魔達がいなくなって全てがチャンチャン(終わりの合図)! って事だな!?」
戦士の休息。
悪魔達が都市の市民達を襲った事件の幕が下りた。
「……いえ。まだ終わりではありません」
ク・エルが、何かに気づき、そう言った次の瞬間。
「いたぞ!!! 捕らえろ!!!!!!!!」
「「「ハッ!!!」」」
ダッダッダッダッダッダッダッダ……!!!!!!!!
大勢の足跡が、ユーサ達がいる場所まで駆けつけてきた。
「え? 教会の……信徒??」
そこには、百人以上の教会の信徒の姿があった。
「え? __ぐああっ!!!」
「!!?? あなた!!!」
「いや!!! はなしてええーー!!」
大勢の信徒が、ディアからユーサとマリアを引きはがした。
そして、ユーサを地面に這いつくばらせ、両腕を背中に持っていき拘束した。
「ユーサ・フォレスト!! 貴殿を、悪魔として異端審問にかける為、拘束する!!!」
大勢の信徒の中で、上官にあたる人物がユーサに告げた。
「え? な、、なんで」
「とぼけるな!!! 貴殿は、悪魔にしか使えない【魔法】を唱えていたという目撃情報が入っている!!!」
ユーサの住む、この異世界では。
【魔法】は、魔族、悪魔にしか唱える事ができない【魔】の呪文方法として存在している。
「そして、明日の朝、貴殿をこの事件の首謀者である容疑も含め、処刑する!!!」
その言葉通り。
次の日の朝、ユーサの公開処刑が始まった。
(・∀・){クリスマスの日に、異端審問の話を書くなんて。。。メリクリ。あ、ハリークリスマス!




