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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

腹黒聖女さんの婚約破棄代行〜からの絶望的な終わりをプレゼントしました。

作者: 水定ユウ

「えっ、婚約破棄の代理人ですか!」


 私、セレーナ・ヘリオローゼは驚いて声を上げてしまった。

 すると私の目の前に座る彼、リドル・デラ・トラムベムは深刻な顔をして私に伝える。

 そんなにまじまじと見ないでほしい。


「いくらこの部屋が防音だとは言え、あまり大声で言うのはやめていただけるかな聖女様(・・・)


 私は叱られてしまった。

 口をしっかりと閉じ声を絞ると、彼は事情を話し始める。

 仕方がないので、聞きたくもないが耳を傾けてあげる。感謝してほしい。

 

「僕が貴族で、この国の王家の方の1人と婚姻を結んでいるのは知っているよね」

「はい、有名な話ですから」

「そこが問題なんだよね。僕はその方、ルミナリア・アヴェルジア様と別れたいんだよ」


 勝手な話だ。だけど別れたいのなら別れればいいのではないだろうか。

 普通なら、そんな呑気なやり取りで済むのだろうが貴族同士の婚姻はそう易々とはいかない。

 にしてもこんな重要な話に巻き込まれる私の身のもなってほしいものだが、彼はそんなこと一切考えていないらしい。

 イライラがムカムカに変わり、腹の内では不本意だった。


「それでどうして私がこの話題に巻き込まれるのでしょうか?」

「それは君がこの国の大使であり、もうじきこの国を去る噂を聞いたからだよ」

「確かにそうですね。ですが、それと何の関係が?」

「賢い君ならわかるだろう。聖女様」


 話は大体わかった。

 とは言え、やはり気乗りしない。それは責任の全てを私に丸投げしているだけにしか聞こえないからだ。

 いくら相手が隣国のそれなりに地位と権威のある貴族の次男だからと言っても、限度と言うものがある。

 私は貴族なんてものが嫌いだ。好きかって言って、結局責任転嫁するだけの奴が多い。

 そう思い始めたのはこの国に派遣されたからだろう。こんな職務、もう辞めたくなっている。


「要はお互いに名誉(めいよ)のために穏便(おんびん)に事を済ませたいので、貴族としての爵位が高い人から断ってほしい。そういうことですよね。ドロドロの政略結婚が盛んな今の貴族社会のようです。それに、下手なことをすれば爵位(しゃくい)剥奪(はくだつ)され、最悪奴隷の身分にまで落とされる。この国ならではですね」

「そうです。だから聖女様にお願いしたいんです。聖女様でしたら、追放されるだけで済むそうですから」

「ふふっ。勝手なことを言ってくれますね」


 めんどくさい。私は素直にそう思ってしまう。

 私が聖女? 見た目と肩書だけで判断されるなんて()骨頂(こっちょう)ではないでしょうか。

 本当の私を誰も見ようとしない。

 もっとも見せる気もないのだが、こんなヘラヘラとした上っ面に騙されるなんて、馬鹿みたいな話だと心の内で笑ってしまう。


「すみませんね、リドルさん。私はそのようなことに関わりを持ちたいとは思わないんです。悪いですが他を当たってください」

「そうですか。……では」


 リドルさんは私にナイフを突きつける。

 交渉が決裂した段階でこうすることは読めていた。

 だから私は何も動じることはなく、ナイフの先端に指先を当て捻じ曲げてしまう。これは私の魔法だ。


「流石は聖女様だ。僕みたいな素人の脅し、どうとでもなるんだね」

「貴方にその気がないことはわかっていましたよ。だけど1つ聞かせてください」

「何かな?」

「どうして婚約破棄を? 貴族の間では男性であれ女性であれ複数人の方と婚儀を行うのも珍しくはないそうですが。中には馬が合わず、価値観のズレで婚約を破棄される例もありますが、この国は独裁国家ではありますが大国ですよ?」

「そこが問題なんです。僕は元々、ルミナリア様に興味はなかった。家柄的に断ることができず、押し付けられてしまったんです」

「押し付けられる? ルミナリアさんにはお会いしたことはありませんが、何かあるのですか?」


 私はふと尋ねた。王族とのかかわりは極力避けてきている。

だから興味がないとは言えない。

 するとリドルさんは、神妙な顔で話し出した。


「聞いたことないですか。呪い姫の噂」

「呪い姫ですか? さぁ、初めて聞きました」


 リドルさんが話し出したのは、この国の王女の1人に掛けられた呪いの話だった。

 武力により世界を席巻しようとし、今も独裁的なことを繰り返すこの国にとって隠したがる要因の一つで、生まれたときから魔法が使えない呪いに掛かっているそうだ。

 そのせいもあり国王と女王からは見向きもされずいない子扱いされ、姉妹たちからは嫌悪され、傍付もおらず部屋に閉じこめられているらしい。やっぱり酷い国だ。

 ましてや自分の子供に酷いことをしているのが王族なのが一番の問題なのだろうが、そのことを誰も咎めていないことが嫌悪されるべきだろう。しかもそんな子供を国外に追放しようとする。何とも下劣だった。

 だからこそ私は、早くこの国を出たい。この国の末路が既に見えているからだった。


「話はわかりました。ですがそれなら貴方が助けてあげたらいいのでは?」

「嫌だよ。僕には誓い合った許嫁がいるんだ。それにそんな子を連れていたら、僕の立場も危ういだろう。少しは考えて欲しいものだよ」


 私は落胆した。やっぱり彼も自分のことしか見えていない。

 もっとも私が言えた口ではないが、そんな相手の言い分を素直に飲むわけもない。

 それに私に声を掛けた時点で、既に何をするのかは決まっているはずだ。


「わかりました。とりあえず話は付けてきます」

「ありがとう、助かるよ」


 リドルさんは感謝した。溌剌(はつらつ)とした笑顔を向けては来るが、やはり外面でしかない。

 だからこそ、私は辛辣(しんらつ)で冷たい眼差しを送り、リドルさんを睨みつけた。


「とは言え私も無償でするわけにもいきません。私は便利屋ではないので」

「それはわかっているよ。だから、これを持ってきたんだ」


 ドン! とテーブルの上のシルバーのケースが置かれる。

 その中にはたくさんの現金が入っていた。ざっと見るだけでも100枚留めの束が100個入っている。


「1000万だ。これが報酬だよ。何なら、これは前金で後で追加で1000万振り込むよ」

「なるほど1000万セレスですか。合計で2000万セレス。……少ないですね」

「はぁっ!?」


 リドルさんは声を上げた。よく聞こえなかったのだろうか、私はもう一度言ってあげる。


「少ないです。トラムベム家の次男でしたらもっと出せるはずですよね」

「ううっ、言ってくれるね。流石は腹黒聖女様だ。わかったよ、5000万……いや1億は出す。それ以上は出せない」

「1億? はっ、笑わせないでください。今貴方は人の人生を天秤にかけている。しかも斧が欲求のためです。それで世界が根底から覆るとも知らずに、ただの私欲ために他人の人生を壊すなんて馬鹿げています。残念ですが、これでは受けられません」


 私はきっぱりと断った。

 しかしリドルさんはそれでは困るらしく泣きついてきた。

 男らしくもなく、威厳をなくして泣きべそをかく。当然嘘泣きだ。


「た、頼むよ。本当に、これ以上は出せないんだ!」

「いいえまだ出せるはずです。トラムベム家は貴族であると同時に政治家としても名がある。その総資産は数100億。私に依頼をしたのが間違いなんです、何ならこの話題を外部に漏らしても構いませんよ?」

「……腹黒女が」

「何とでもおっしゃってくださって結構です。それにもっと黒い噂がトラムベム家にはありましたよね? 確か盗難……」


 私が口を滑らせた直後、リドルさんは顔が真っ白になる。

 クリンヒット。完全に折れてしまった。

 どうやら権力を奪われることが相当怖いのだろう。


「いくら払えばいい……」

「50億セレスです。それ以上は負けません」

「……わかった。払うよ」

「所定の口座にお願いしますね。もし私に危害を加えるようでしたら、トラムベム家は完全に終わりますがね」

「くそがぁ!」


 リドルさんは怒りで歯を噛んだ。

 私に相談したことが間違いなんですよ。ばっちり腹黒さを露見させ脅すと、私は早速王城に向かった。

 腹黒いとはいえ、根は真面目な私だ。とは言え、今回は興味の方が打ち勝っていた。


 *


 聖女の身分とはかなり都合がいい。

 聖職者として王城には度々足を運んでいる。その都度感じるのは常にだれかに見張られているような陰惨とした気配。

 ここが独裁国家として有名な理由はそこにある。

 町の人たちもきっと税金で苦しめられているはずだ。


「聖女様、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「要と言うのは大したことではありませんよ。騎士の方たちが怪我をされてしまったそうなので、治療に参ったのです」

「それはありがとうございます。それではいつもの修練場に」


 案内をしてくれるのは王城で暮らすメイドだった。

 名前は確か、リーシア・リュヴェイムと言い先々代からこの国に仕えている騎士でありメイドの1人だった。

 顔色には覇気を感じられず、目は腐ったみたいに死んでいる。

 その目を通してみると世界が真っ赤に染まって見えたが、それほど心に穢れを抱えているようだ。私もこのメイドにはお世話になっている。だから耳打ちして教えてあげた。


「すみません、1つお聞きしてもよろしいですか?」

「はい何でしょうか?」

「ルミナリア様にお会いしてもよろしいですか?」


 リーシアは無言で立ち止まった。

 背中から放出されるのは禍々しい気配。踏み込んではいけない領域なのはわかっているが、片足を突っ込んだ状態で戻ることもできない。

 ここはズケズケと侵入する。


「その方が特殊な呪いを受けているようですので、少し興味が湧いたんです」

「……やめておいた方がいいですよ」

「えっ?」


 リーシアは冷たい空気を放った。

 しかしそれには裏があり、私のことを心配してくれている。

 やはりここで失うには惜しい人材だ。


「ルミナリア様に関わる発言・行動はこの国では禁句(タブー)とされているんです。最悪聖女様の身の安全も危ぶまれます」

「そうなっては完全に戦争ですね。この国は隣国からも敵対心(ヘイト)を買っていますからね。間違いなく終わるでしょう」

「だから危ないんです。この国は今、一瞬で弾けてしまうような爆発寸前の爆弾のようなものなんですよ」


 例えがそのまますぎて逆にわかり難い。

 かと言って、彼女は私の身を案じていることはわかった。だから素直に忠告は受け取っておくが、そこで立ち止まる気はない。

 この国がどうなろうと、私には関係のない話だ。


「ご忠告ありがとうございます。ですがリーシアさん。……裏道を使ってください。場所は郊外の地下トンネルです」

「えっ?」

「今日しかありません。私もやることを済ませてから逃げ出します。必ず今晩中に存在を抹消(まっしょう)して逃亡(とうぼう)してくださいね」


 私はそう言い残すと一歩身を退いた。

 誰にも見られてはいない。そんなへまをするような私でもないのだが、今の一瞬で気づかれた可能性だってある。

 そもそも怪我人何て最初から出ていないのにここに来た時点で嘘がバレる可能性は高い。

 緊張感が絶えず精神を(むしば)んでいくが、リーシアは私の頃場を信じてくれたらしい。彼女もこの国を捨てる勇気がある勇猛果敢な正義の騎士だ。


「ルミナリア様のお部屋は城の一番奥です。南京錠が掛けられているはずですから」

「わかりました。それでは治療に行って参りますね」


 私はリーシアさんに感謝を伝えた。

 やはりまだ完全に毒されてはいない。そのことを確認しただけで満足だ。

 だがここからが大変だ。

 後は時間との勝負になるが、私はしくじる予見(ビジョン)を見てはいない。

 薄気味悪い笑みを浮かべて、城の中を歩いていた。


 *


 リーシアさんに言われた通り廊下を進んでいくと、南京錠で閉ざされた部屋があった。

 どうやらよっぽど表沙汰にしたくないらしい。

 他国なら監禁罪になるだろうと思いつつ、この国は法律の段階から死んでいる。

 王家が悪いので誰も口出しできないのだが、流石にやり過ぎだと感じた。


「流石に私でも引いてしまいました。何とかしてあげたいですね」


 胸を突き動かされる気分になった。

 部屋の中にいる彼女が今の状況を望んでいるのなら別なのだが、流石に私なら現状を変えたいと望む。しかしルミナリアさんの心境まではわからない。

 しかし騎士の1人も付けず、部屋の前を無防備にしているなんて相当杜撰(ずさん)だ。

 でも今日ばかりはそれでいいと思った。


「時間もありません。すぐに行きましょう」


 私は扉の前に立つと南京錠を破壊した。

 しかも破壊された痕跡が残らないように、魔法を使ってバレないように偽装する。

 さっきと同じこと(・・・・・・・・)をしたまでだ(・・・・・・)


「これで開きましたね」


 外から見ても何の変化も感じない。

 しかし実際は鍵は開いていて、私は鎖を解いて部屋の中に入った。

 重たい扉を開けると、ベッドの上に座ったまま感情を無くした少女がポツンとしていた。


「誰ですか?」

「お初にお目にかかります、ルミナリアさん。私はセレーナ・ヘリオローゼ。この国に派遣された聖女です」


 私は軽い挨拶を交わした。どうやら話しはできるようですね。安心しました。

 私はルミナリアさんの元に寄ると、しゃがみ込んで目線を合わせる。

 年齢は同じくらいでしょうか。まずはコミュニケ—ジョンで距離を縮めましょうか。


「何かお喋りしましょうか」

「お喋り?」

「はい。ルミナリアさんのことを教えてください」

「私は……粗悪品です」


 開幕一発目にそれは寂しい。

 私は表情を歪め、陰気な気が蔓延していることに気が付く。


「粗悪品。どうしてですか?」

「私は呪い持ちだから。誰も私なんて必要としていない」

「……」

「私なんて居なくなればいいと思っているから」


 ルミナリアさんの心は酷く汚れていた。

 私はどうしても助けてあげたくなった。こんな純情な子を見捨てるほど、私も腹黒ではない。

 見殺しにはできないものがある。


「そんなことはないですよ。少なくとも、私は貴女のことを知りませんからね」

「呪いの子なんて、誰も要らないから」


 その呪いを解いてあげることもできる。

 だけどまだそれはできない。だから私は彼女の心を解くことを優先する。

 しかし生半可な気持ちでは彼女の心を動かすことはできない。だからここは私も覚悟を決める。

 腹白になって、私は息を吸い込んだ。


「では、貴女のことは私が貰ってあげます。底がこれからの貴方の居場所です」


 空気が一変した。

 どんよりとした重たいものから、急に不思議と明るい気配に変わる。

 まだ俯いたまま。だけど首が少し動く。


「居場所がないのならその居場所を与えます。それが必要とされる理由です」

「私が必要?」

「はい。その価値を見出すのは、貴女自身です。だからルミナリアさん顔を上げてください」


 私は呼びかける。

 しかし応答がない。ここは仕方がない。もう少し深めに言葉を突き刺す。

 言い切り系の形に変えて、正直な気持ちをぶつける。


「では貴女は今日から私のものです。いいですね」

「えっ!?」


 ルミナリアさんは顔を上げた。

 どうしてそんなに驚いているんだろう。私にはわからなかったが、目的がないなら見つけさせればいい。

 家族からも嫌悪され軽蔑されているのなら尚更だろう。

 誰からも見向きもされていないのなら、それはそれで好都合。私は彼女を救いだすことよりも、私の理に適っていることに目を付けた。


「私もそろそろお手伝いさんが欲しかったんです。好都合ではないですか?」

「でも私……」

「はい、まずそこです。ルミナリアさんには喜怒哀楽の成分が足りていないんですよ」


 私はズバズバと心を貫いた。

 しかしルミナリアさんにはその意味が伝わらない。これは本当に重症だと思い、溜息を吐いた。

 すると彼女は気負いする。


「ごめんなさい……」

「謝らなくても結構です。まずはその感情から豊かにしていきましょう」

「感情を豊かに?」

「はい……ですから私と一緒に来てください。私は嫌いになったりしません。手放したりも、ましてや軽蔑もしません。信じてくれるのなら、この手を取ってください」


 私は手を差し出した。

 しかしそう簡単に見ず知らずの私の手を取ってはくれない。しばらく目を瞑って待ってはみたが、感触がないので腕を引こうとした。

 その時、私に手に温かい感触がした。

 ぷにぷにの手のひらの感触だ。


「手を掴んでくれましたね」

「私はまだわかりません。でも……私を必要としてくれるのなら」

「はい、もちろん必要ですよ。これからはいつも一緒です」


 腹黒を一時的に捨てる。

 すると飛び込んできたのは、涙を浮かべるルミナリアさんの顔。

 勇気を振り絞ってくれた。それが何より嬉しく、純真に突き刺さる。


「ありがとうございます。でも今は待ってください」

「どうしてですか?」

「今は時間がないんです。少しだけです。少しの間だけ待っていてください。必ず迎えに来ますからね」


 チュッ!


 断言して言えた。その証拠に頬にキスをする。

 これで誓いは結ばれた。


「これで約束です。その傷が証です。それでは失礼しますね」


 口付けした頬に火傷のような傷ができる。かなり深いが、もちろん偽装(フェイク)だ。

 私は素の表情を受かべ、ルミナリアさんの頭をポンポンと撫でる。

 それから私は一時の別れを告げ、重い扉を閉めた。

 部屋の中にはいつもの寂しい空気はなく、未来に花咲く明るい空気で纏われていた。



 *


「さてと、あの国はどうなりましたかね」


 私は小さな小屋の中で新聞を読みながら、薄ら笑いを浮かべる。

 窓枠に肘を当て、流し目で呼んでいると昨日『終戦』を迎えたらしい。

 あの後、傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な独裁国家は瞬く間に滅んだ。

 きっかけは小さなことではない。見事に私の裏工作が効いたのか、隣国からの非難を受けて戦争に発展した。

 武力しか取り柄のない国でも弱小国家と(さげす)んできた隣国が束になって掛かると、簡単に崩壊するものだ。それもそのはず、民衆を味方に付けることもできずましてやより苦しめていたことで、騎士や民衆が反旗(はんき)(ひるがえ)し内部から崩壊したらしい。

 本当に最初から最後まで最低最悪の国だった。


「ですがこれで婚約破棄もできましたね。にしても、自分が犯罪者の汚名を着せられるなんて、リドルさんにとっても予想外。思ってもみなかったでしょうに」


 私はほくそ笑んでいた。


「それにしても上手く行きましたね。霊安室から持ち出した死体を私に見えるように細工して、適当に血液を混ぜただけでこのザマです。本当に体たらくですね」


 今回の騒動の発端となったのは、リドルさんの発言からだ。それにこの事件の首謀者もリドルさんにすり替えておいた。

 人の心を捨てた貴族にはこんなプレゼントがぴったりだ。

 おかげで彼の家は崩壊。

 ですがお金は既に振り込み済みなので問題ないでしょう。

 私のことについても記憶ごと消しているのでバレることもありません。

 腹黒いことこの上ない。


「それに彼が悪いんですよ。あんな良い子を見捨てるなんて真似をするからです」


 私は紅茶の入ったティーカップを唇に触れさせた。

 

「でも私には関係のない話です。さてと、国王と女王は処罰の対象になりましたが、王女たちは奴隷になったみたいですね」


 王家の人間は特に厳しい処罰を受けた。

 その中で1人だけ私は助けたいと思っている。約束を果たすためもあるが、貰えるものは貰っておく。

 そのために脅しをかけておいたんだ。使わない手はない。


「貴女は私のものです、他の誰にも渡しませんよ」


 腹黒聖女の表情は気味の悪い笑みを浮かべていた。

 しかし内に秘めているのは単なる純真。愛しているのではない。

 けれど彼女からは愛されている。そのことに気が付けないのが、何とも腹黒い。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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