第9話 ゴミ拾い
「はぁ~、なんで俺がこんなことを……」
放課後。
俺はジャージに軍手、さらには右手に大きなゴミ袋という出で立ちで校庭に集合していた。
周りには俺と同じ恰好をした生徒たちがちらほら見受けられる。
九月にしてはやや肌寒く、こんな日はさっさと家に帰って暖かい部屋でひと眠りしたいところだが。
「ごめんね霧矢くん。付き合ってもらっちゃって」
いつの間にか俺の隣に立っていた篠崎さんが申し訳なさそうに上目遣いで俺を見る。
「あ、いや、全然平気だよ。大体自分からやるって言ったんだし」
「そっか、ありがとね」
にこりと微笑む篠崎さん。
今日は学校周辺のゴミ拾いを行う日なのだそうだ。
生徒会が主体となって決めたらしく生徒会役員は全員参加しているが、ほかは全学年の各クラスから二名ずつが代表で選ばれている。
俺が学校を休んでいた間にうちのクラスからはクラス委員の篠崎さんが出ることが決まったらしい。
だがもう一人がなかなか決まらなかったようで篠崎さんは気を揉んでいたのだとか。
そのことを今朝輪島から聞いた俺は、篠崎さんに「俺も一緒にやるよ」と申し出たというわけだった。
常日頃からボランティア精神が皆無な俺にとっては、学校周辺のゴミ拾いなど面倒くさいことこの上ないのだが、篠崎さんに週番の仕事をすべて押し付けてしまった手前仕方なく、本当に仕方なく引き受けることにした。
なるべく楽をしよう。
足元を眺めながら心の中でそうつぶやいていると、
「みんな、よく集まってくれた! 私が生徒会長の御影だっ!」
一人の女子生徒が俺たちの前にやってきて、はつらつとした声を上げた。
「街がキレイになれば心もキレイになる! さあ、諸君! 私と共に青春の汗を流そうじゃないかっ!」
冗談なのか本気なのか、よくわからないテンションで生徒会長がこぶしを天高く振り上げる。
その様子を見て、ほかの生徒会役員たちと集まっていたクラス代表の生徒たちは「「「おおーっ!!」」」と一斉に叫ぶ。
横目で見ると篠崎さんも楽し気に手を上げていたので、俺もしぶしぶこれに同調した。
「それでは午後七時まで約四時間、各自ゴミ拾いを始めてくれっ! 解散っ!」
「「「おおーっ!!」」」
こうしてやりたくもないゴミ拾いの時間がスタートした。
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