第8話 休み明け
退院して数日後、俺は学校に復帰することになった。
勉強は決して好きではないが、一日中家にこもって誰とも顔を合わせない生活もそれはそれで息苦しい。
なので久方ぶりの学校へ俺は意気揚々と向かっていた。
ちょうどそんな時、バス停付近で輪島に出くわす。
幼稚園からの腐れ縁である輪島は、挨拶を済ませたあと俺の顔をじぃっとみつめてから、
「なんだ霧矢、お前面会謝絶だった割には全然元気そうじゃないか」
軽口を叩く。
「本当はただのサボりだったんじゃないのか?」
「バーカ。これでも実のところ、結構ヤバかったらしいんだぞ俺」
「そうなのか? まあどっちにしても元気なら何よりだけどなっ」
言いながら輪島は俺の背中をばしんとはたいた。
体格のいい輪島の手荒い歓迎に「ごほっごほっ」と俺はむせる。
「入院明けなんだから優しくしてくれよ、まったく」
「はははっ、悪い悪い」
ちっとも悪びれるそぶりを見せずに輪島。
だが根は優しい輪島のことだから、それなりに心配してくれていたのだろう。
「おっと、そうだ。これお袋から。見舞いに行けなかったから渡しておいてくれって頼まれてたんだ」
輪島は通学かばんの中から包装紙にくるまれた何かを取り出し俺に渡してきた。
「中身はクッキーらしいぜ」
「そうなのか。母さんに渡しておくよ。ありがとうございますって伝えておいてくれ」
俺はそれを素直に受け取る。
かばんにしまったところで、
「そういや篠崎の奴、先週はお前がいなくて一人で週番やってたから大変そうだったぞ」
隣を歩く輪島が思い出したように口を開いた。
「あー、そういえばそうだった。篠崎さんには悪いことしたなぁ」
月曜日以外は病院と家にいたから俺は結局のところ、週番の仕事は一日しかしていない。
結果的にその間の週番の仕事は篠崎さんにすべて押し付けてしまった形になっていたのだった。
「そう思うんなら借りを返すとっておきのいい方法があるぞ」
「なんだよ、いい方法って?」
「へっへっへ。それはなぁ~……」
輪島は意味ありげにニヤリと笑った。
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