第7話 LP3000α
退院したあと家で母さんから聞いた話では、俺は二日間昏睡状態だったらしい。
一時は生死をさまようほどの容態だったそうだが、奇跡的にも助かったということだった。
つまり《クエスト》を失敗した俺は、そのせいで本来ならば死ぬはずだったということだ。
そんなことを知ったらますますスマウォを手放さずにはいられない。
そこで俺は電気のこぎりやハンマー、万力などでスマウォの破壊を試みた。
がしかし奮闘むなしくそのどれもが返り討ちに遭い、驚くべきことにスマウォには傷一つつけることさえかなわなかった。
そのため今現在も俺の左手首には呪われたスマウォががっちりとロックされている。
拾ったスマウォを軽々しく手首にはめてしまったことを後悔しつつ、俺はこれからどうするべきかを考える。
スマウォの頑丈さからいって、俺個人の力で壊すことは不可能だと思われた。
さらに試してみた限りでは、スマウォ自体に登録情報のリセット機能などはないこともわかった。
よって現段階ではスマウォから解放されるすべはおそらくないのであろう。
だがスマウォをいろいろと操作した結果、それなりに有益な情報も得られた。
まずこのスマウォの正式名称はLP3000α。
どこの誰が作った代物かはわからないが、正式な名前がある以上作った人間はどこかに確実に存在しているはずだ。
その人間にならばきっと外せるに違いない。
また、このLP3000αに表示される俺のステータスは、現実世界の俺自身とリンクしていることが確認できた。
何を言っているのかと思うだろうが、LP3000αによって出された《クエスト》をクリアすることで画面に表示される俺のレベルが上がり、それによって実際の俺のレベルも上がるのだ。
信じられないだろう。
そりゃそうだ、俺だって身をもって体験していなければ信じることなんて出来なかっただろうからな。
しかし実際に小石を使ってスキル《投擲》を試したところ、たとえ目を閉じて投げても俺の放った小石は狙った的に百発百中だったのだ。
そしてここからが非常に重要なところだ。
《クエスト》に成功した場合は俺のレベルが1上がり有用なスキルを覚えることが出来るが、もし仮に《クエスト》に失敗した場合は致死量の毒が俺の体内に注入されるのだという。
つまり俺の入院騒ぎはやはり前回の《クエスト》失敗に原因があったわけだ。
そして本来ならば俺はそこで死んでいたはずだったのだ。
なんの因果か前回は奇跡的に一命をとりとめたものの、もう一度助かる保証などありはしない。
だからこそ、俺は一刻も早くこのLP3000αを手首から取り外さなければならないし、それまではなんとしてでもLP3000αの出す《クエスト》をクリアし続けなければならないのだった。
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