第6話 病室
「……ぅん……」
目覚めた俺が最初に視界にとらえたのは真っ白い天井だった。
すると、
「先生、霧矢さんが意識を取り戻したようです」
「うむ、そのようだね」
若い女性としゃがれた男性の声が左隣から降ってくる。
顔を横に向けるとそこには、白衣を身に纏った女性と男性が立っていた。
「え……こ、ここは……?」
「気がついたね。ここは病院だよ」
病院……?
俺の問いに答えた男性は、
「笠井くん、お母さんを呼んできてあげて」
と女性に向かって指示を出す。
それを受け女性は「はい」と部屋を出ていった。
「僕からも質問。きみはどこまで憶えてる?」
「えっと、どこまで……?」
男性の話している意味がよくわからない。
そんな表情を察してか男性は質問を変え再度訊いてくる。
「きみの名前は霧矢秀作くん。年は十六歳でお母さんと二人暮らし。それは間違いないかな?」
「は、はい」
「秀作くん、きみはね、おうちの庭で倒れたんだよ」
「た、倒れた……?」
「そう。それをお母さんが発見して救急車を呼んだんだ」
俺は男性の言葉を頼りに記憶を手繰り寄せた。
……たしか俺は、電気のこぎりでスマウォを破壊しようと――
「秀作っ!」
そこまで思い出したところで顔面蒼白の母さんが病室に駆け込んできた。
俺を見るなり抱きついてくる。
「秀作っ! あんた無事だったのね、よかったわっ!」
「母さん、痛いって。っていうか母さん、顔色悪いよ」
すると看護師さんが、
「お母さんはずっと看病していたんですけど具合が悪くなっちゃって、さっきまで隣の部屋で休んでいたんですよ」
と優しく説明してくれた。
「秀作、もう平気なのっ? どこも痛くないっ?」
「あ、ああ、うん。大丈夫、だと思う」
「あー、よかったわっ!」
そう言って再度抱きつく母さん。
医者の先生と看護師さんの手前、恥ずかしい。
「では病状の説明をしますのであちらへ」
「あ、はい、申し訳ありません」
母さんは看護師さんに連れられて病室を出ていく。
一人部屋に残った先生はベッドに横たわる俺に視線を落とした。
そしてやや深刻そうな顔で問いかけてくる
「念のため訊いておくけど、まさか自殺を試みたんじゃないだろうね」と。
「え? 自殺? 俺がですか? いやいや、そんなことないですよっ」
「そうかい、ならいいんだが。きみの体から検出されたのは植物の毒なんだよ。おそらく庭に生えていた毒草が誤って体に入ってしまったんだろうね」
「そ、そうですか」
「業者さんに頼んで庭の草はすべて枯れさせた方がいいだろうね」
「は、はい。わかりました」
そう答えつつも、俺は体内に入った毒のルートが庭の毒草などではなく、今も左腕の手首にあるスマウォであろうことは察しがついていた。
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