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No.0 世界最強の辻斬り

行き当たりばったりで書き始めたものです。もう2話投稿します。



「今日こそ殺ってやるぜ、『殺人スマイル』リズさん!」

「…………」


 時代劇の舞台のような橋の上で、向かい合っている二人の男。


 一人は無精ヒゲを生やした長槍使い、ランキング6位『信長施設兵』ブラック・冗句。もう一人に向かって武器を構えている。

 もう一人は二振りの刀を両手に下げた白髪碧眼の少年、ランキング1位『殺人スマイル』リズ。無表情を保っている。


「ひとり?」


 リズが口を開く。少し残念そうな声色だった。一人では勝負にならない、と言わんばかりに。


「そう出来りゃよかったがな、殺人スマイルさん。悔しいが一人じゃあんたに勝てない」


 そう言い放つと同時に、どどどど、とけたたましい音が鳴り響き、凄まじい数のプレイヤーが橋の前に集まる。


「……おお、けっこういるね」

「まあな。これだけいても正直きついと思うが」


 一対数百人。圧倒的不利な状況であるように見えるがリズは無表情を崩さず、まっすぐ歩き出す。笑っていた。冷酷なまでの、純粋で狂気的な笑い。


「……ふふっ」

「……ッ!! 行くぞお前らッ!!」


 リズが笑うのと同時に、ブラック・冗句含む数百人が駆け出した。しかしそれに動揺することなく、ただ歩いていく。刀も下げたままだ。


「「ウオオオオォォォッ!!」」


 吼え、突進してくるプレイヤー達の攻撃は、リズの最低限の動きで全て躱されていく。

 もちろん、ただ躱すわけではない。攻撃を躱す度にまた最低限の動きで急所を切り飛ばし、即死させる。


 凄まじい速さでそれを行いつつ、遠距離で弓を撃とうとするプレイヤーには刀を投擲、次の瞬間には予備の刀で別の敵を斬っている。本来2~3秒必要なはずのメニューウィンドウ武器切り替え操作をコンマ数秒で行っているのだ。


 彼以外には為し得ない神業を目にして、一部のプレイヤーは感嘆に息を呑む。もちろん、彼の速さについて行けているこのゲーム『ソードアフェクション・アーツ』──通称、『気狂(きぐる)・アーツ』真の最強、ランキング上位10人通称『十英雄』に入る実力者とそれに近い者限定ではあったが。


「だあああああッ!!」

「!」


 もちろん、プレイヤー達も黙って殺されているわけではない。リズが切り替えに割いた時間はほぼ0秒とはいえ、このゲームでそれなりの装備を揃えられるということは相当のVRゲーム廃人か努力を重ねた者なのだから。


 プレイヤーの一人がリズに斬りかかる。しかし、攻撃を当てることは叶わなかった。リズは基本的に複数戦闘時、あらかじめ攻撃が来そうな場所全てに意識を向けている。

 最小限の動きでパリイを成功させ、即座に首を斬られて終わりだ。


 いつの間にか、200人前後いたプレイヤーは半分ほどに減っていた。そこらには彼らが落と(ドロップ)した武器や防具、ウン十万という金がかかる高級アイテムが数多く散らばっている。


「……おいおい、マジかよ殺人スマイルさん。これじゃ、前回の100対1がまるで茶番じゃねえか」

「でも、前回も楽しかったよ」

「今回は?」

「……もっと楽しい」


 そこまで言うと、リズはゆっくり歩き出す。


「ふふふ……。──行くよ?」


 殺気が微塵も含まれていないが故におぞましく、その歩みを止める者はいない。


 その一瞬の隙を逃さず、リズは刀を投擲、反応が遅れたプレイヤーから虐殺していく。一人、また一人と数が減っていくが、先の戦いは前座とばかりに速さを増したリズの動きを止められる者はいなかった。


「……ちぃっ! これから本気ってか!?」


 毒づき、後ろに下がろうとするブラック・冗句と残りのプレイヤーを見逃すはずもなく、リズの投擲によって数を減らされていく。


 残り人数が10人を割り、残ったのはブラック・冗句とランキング4位『背中目玉野郎』DVOYGの二人。


「ずいぶん少なくなった」


 無邪気な笑みを浮かべる。光で灰色にも見える白髪が小さく揺れた。


「やっぱり……きみたちを斬るのが一番楽しい」


 リズの言葉に弾かれるように、二人の強者は武器を構え直す。おそらくこれが最後の攻防となるだろう。

 

「……行くぜ!」

「最後の抵抗でござる!」




 ***




 

 完全没入型(フルダイブ)VRオンラインRPG、『ソードアフェクション・アーツ』


 そのゲーム最大の特徴は……とにかく極限まで高難易度化を突き詰めたこと。


 他ゲームとは比べるに値しないほどにプレイヤースキルが強く求められ、レベルを1上げることすらとてつもない労力が必要だ。


 一番簡単なはずのフィールドですら即死級の攻撃を連発する敵が雑魚モンスターとしてわんさか出現。


 また、死にゲーも真っ青なトンデモクソ挙動を行うモンスターばかりで、突っ立っているだけでは1秒と経たず装備紛失(アイテムロスト)


 更に町中でもPKが可能であったため、レベルや装備の充実を図るには必然的に他プレイヤーを殺さなければ強くなれないと言っても過言ではない環境となった。


 その上新規勢はレベルも装備のスペックも低い。そのため、実質プレイヤースキルだけで高レベルプレイヤーに勝つ必要がある。更に初心者と上級者の差が広がってしまったのだ。


 ひたすら苦行なレベル上げ、即死技連発雑魚モンスター、町中PKによる世紀末化、低レベルプレイヤーほど苦労するスキル制の初心者お断り。


 その他もろもろのヤバイ仕様によって、極限までの高難易度化が実現した。このゲームの開発者が語った俗に言う『完全実力者厳選計画』の完成形だった。



面白いと思っていただけたでしょうか。よければブックマークや評価などいただけると嬉しいです。


しっかし計画性も何もねえな……

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