1.5 205 room equal The Ominous room
竜種について
・この世界に存在しないはずの生物。
・地球で確認できる龍のイメージと同じ。
・人に化ける能力を持つ。
・睡眠、飲食、繁殖の必要がない不変の存在。
とりあえず今説明できるのはそんなところ。
「あ、着いたよ!ここが205号室だよ?」
階段を1階分上がり右に曲がってすぐの部屋。
205と書かれた木製の扉の前に私達は立っていた。
非常にありふれた扉だが新生活を始まる私にとって特別な扉だ。
竜であるトルテちゃんと同居することにはなったけど、トルテちゃんはいい子だし今のところはそれほど実害はないので気にしていない。
ダレル諸島に伝わる【クート=レイムの悪龍伝説】では3つの集落の人間を殺し尽くした伝承が残っているけど私は気にしない。
【赫い竜と蒼い竜】の伝承では2柱の竜の衝突で北の大陸の生物が絶滅したとしても、私は気に……しない(涙)!!
「じゃあトルテちゃん2人だけど3年間よろしくね。」
「え、違うよ。学生寮は4人部屋でね。205号室にはあと2人いるんだ。」
「え?あと2人?」
2人。という言葉に思わず反応する私。なんだろう。ものすごく嫌な予感がする。
「そ、そ、それってどんな人?」
「とってもいい子たちだよ?」
「そ、そうなんですか。」
いい子たちと聞いてホッとする私。
しかしこの思いは次の言葉ですぐにひっくり返されることになる。
「1人がキンキラな子でもう1人が真っ黒な子。2人とも可愛くていい子だからすぐに仲良くなれるよ。」
「………はい?」
【キンキラ】と【真っ黒】。その言葉を聞いた途端、私の背筋が凍る。冷汗が止まらなくなった。
似た特徴を持った少女達に何をされたか思い出したからだ。
「ご、ごごご、ごめん待って。まま、まだ心の準備が……。」
「みんな!最後の一人が来たよ!仲良くしてあげてね!!」
「あ……。」
私の必死の言葉を無視したトルテちゃんによって勢い良く扉を開かれ。
「「「………………………………。」」」
開いた扉の先には話の通り2人の少女がいた。
1人は黄金の髪を膝まで伸ばした少女。
1人は漆黒の髪を短くそろえた少女。
言うまでもなく。先程の2人であった。
「ああああああああああああああっ!!」
「……はあ。」
金の少女の絶叫と黒の少女の溜息が耳に入ってくる。
私の【剔抉の眼】で他人の心の中は読めないが、眼前の2人は「ああ、面倒なことになった。」と考えていることは分かった。
なぜなら。
「(ああ。面倒なことになった。)」
私もそう思っているからだ。
「なんだあ。みんな知り合いだったんだ!!ふふふっ!楽しくなりそうだね!!」
この状況を全く理解していないトルテちゃんは、朗らかに無垢な笑顔でこういった。
「「「(なるか!!!)」」」
くどいようだが私に心を読む術はない。だがこの時私達3人の心は一致していたと確信していた。
黎歴1638年春。郡立エレシア中等学校の学生寮タンタリア205号室。
私の学生生活が幕を開けた。
同居人は3人。
1人は大国の皇女様。
1人は秘密結社の構成員。
1人……いや1柱は竜。
……どうやら。これからの学生生活が波乱万丈なものとなることを確信した。
………誰か、助けてください。
こうして出会った4人(3人と1柱)。
キワモノに囲まれた一般人エメリーちゃんの学校生活ははいかに!!
……あれ?【神の眼】なんて持ってるエメリーちゃんだって十分キワモノじゃ……。