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1-1.A Fateful Encounter The Disinherited Princess

神の眼とは?

 普通の人間が感じ取れないはずのものを感じ取る能力。始原種の奇蹟。

 エメリーの場合は【秘密】だが、何を感じ取るかは人それぞれ。

 他にも【モノの記憶】を読み取る神の眼もあるらしい。




「こ、ここが郡立エレシア中等学校。」


 ジョードさんと別れた私は入寮手続きのために学校を訪れた。


 郡立エレシア中等学校。

 グランファリ郡の初代行政官が資源の少ないこの郡で足りない人材を登用するために建てられた公立の学校でエメリアの学校のでもかなり歴史がある学校として知られている。

 「あらゆる者に分け隔てなく勉学の機会を与える」というのがモットーであるため生徒のほとんどが平民で構成されており、学費もかなり安くしかも成績が優秀な生徒は学費が免除されている。

 そのため、農家の娘でしかない私が学校に通えるのはこういった理由がある。


 それはともかくこうして校門を一歩入って一言。


「「とっても広いですね(狭いわねえ)。」」


 ………。


「「え?何を言っているんですか(いるのかしら)?」」


 私は思わず声のする方向を見た。


 ウェーブのかかった黄金の髪に色白の肌に白銀の瞳。質素ながらも品のよさそうな服を着た少女。

 庶民である私でも分かるくらい高貴な人間だということは分かる。どう見ても貴族様だろう。

 明らかに私とは住む世界が違う。

 そんな彼女がどうして平民の学校に来ているのかは不思議であったが、「あらゆる者に分け隔てなく勉学の機会を与える」というのがこの学校のモットーだ。貴族様が入ってきてもおかしくはないだろう。


「貴方……その学校のどこが広いんですの?」

「えっと………。」


 そういわれて改めて周囲を見渡す。

 まずは校舎。

 3階建ての石造りの赤い屋根の城のような建物。その横には2階建ての木造の校舎が渡り廊下でつながっている。

 そして校庭。校門から入口までの間に広がる庭はかなり手入れされていて以前一度だけ言った公都のお城のような庭園が広がっている。(無論公城の庭園に比べるとかなり狭いが)

 そして案内板を見ると校舎の裏側には運動するための運動場も全体の半分近くの広さがある。


「……ふむう。」


 案内板を見るからにこの学校の広さは私が暮らした村と同じくらいはあるだろう。なので私はこう結論づけた。


「やっぱり広いですよ?私の村くらいはありますし。」

「狭いですわ、だってこの学校、私の館の半分くらいしかないのですから。」

「「え?」」


 一体この人は何を言っているのだろうか?

 学校の……つまりは私の村の倍の広さもある家なんてあるはずがない。

 さすがに今のは私は聞き違いだろう。私はそう思うことにした。


「まあいいわ。そこのあなた……名前は!」

「は、はい?エメリーです。」

「ではエメリー!この私を事務室に案内なさい!!」

「……はい?」

「私はこれから入学と入寮の手続きをしなければならないのだから、後輩を導くのも先輩の務めでしょう!!」

「いえ、あの私も新入生なんですけど……。」

「「………。」」


 私達の間に気まずい空気が漂った。。


「こほん。それじゃあ、事務室に案内なさい。」

「そ、そう。それじゃあ一緒に行きましょうか……えっと……名前は?」

「……シャーラよ。」

「じゃあシャーラ。これから3年間よろしくね。」

「………。」


 普通に受け答えをしたつもりだったが、途端に彼女の機嫌が目に見えて悪くなった。


「えっと……どうしたんですかシャーラ?」

「あ、あなた……私に対して馴れ馴れしく、しかも呼び捨てにするなんて……。」

「え、えっと………。」

「小娘!私を誰だと思っていますの!!私は……おっと。」

「私は……なんですか?」

「………何でもありませんわ。忘れなさい。」


 そういって強引に話を終わらせようとするシャーラ。


 ここで突然だが、ここで私の【剔抉の眼】についてわかる範囲で説明をしておこう。

 この眼はいつでもどこでも相手の秘密が見れるというわけではない。

 基本的に対象が現地点で秘密を意識している場合にのみ頭上に表示するという制限が存在する。

 

 そして今目の前の彼女は秘密を意識しまっている。

 ……ということは。


「やっぱり……。」


 案の定、彼女の頭の上に文字が浮かぶ。

 ここまではいつも通り。予想の範囲内だった。

 が、目の前の少女から浮かび上がった内容については。少々、いやかなり予想を飛び越えていた。


・ローセス帝国皇太女

・現在一時的に皇位剥奪中


「えっ!」


 ローセス帝国。

 この国エメリアの隣国にしてレアート大陸最大……というよりほぼ全土を治める大国家。

 世界的にもクナシリア・ギスレヴ・キシュエンと並ぶ世界四大国の一つ。


 その大国の第一継承権を持つ皇太女。どこまでも庶民である私にとって一生関わりがないはずのお方である……のだが……。


「え?どうして帝国の皇女様がこんなところに……?」

「え?」

「あ……。」


 あまりの衝撃につい口を滑らせてしまった。

 そしてそのまま沈黙すること数秒。


「ど、どどどうして私がローセス帝国皇太女シャーロット・ヴェルヌ・アッシュフィールドだとわかったのかしら?」


 先ほどの毅然とした態度とは打って変わってしどろもどろになっているシャーラ。

 この眼のことを言ってしまおうと考えたが、先程ジョードさんに【神の眼】については大っぴらにしない方がいいと言われたばかりなのでここは適当にごまかすことにした。


「え?あ、いやなんとなくそんな感じが……。」

「あらやだやっぱり皇族のオーラが……って違う。」


 思わずノリッツコミをする様子を見るあたりそんなに大変な状況じゃないらしい。


「まずいまずい。こんな辺鄙な田舎なら私の顔を知っているものなど誰もいないと踏んでいましたのに……。」


 前言撤回。相当に大変な状況らしい。

 色白の顔を青くさせながらブツブツと喋り始めたシャーラ……ではなくシャーロット様。

 この様子を見て私はとんでもないことをしでかしてしまったことを悟ってしまった。

 なのでここは、そろりそろりとその場から逃げようした私だが、


「待ちなさい。そこの小娘!」


 シャーロット様の鋭い声に思わず体を硬直させる。

 同い年なのに小娘呼ばわりされるのは釈然としなかったが、そんなことを言える雰囲気ではない。

 振り返ると、先ほどの動揺を見せた表情とは打って変わって、見た者をものを安心させるはずの柔和な笑顔。

 しかし私は父さんがブチギレた時の怒りの表情よりのうすら寒いものを感じとった。


「いいこと?貴方はこれからの人生、私の正体を決して誰にも言わずに生きなさい。」

「は、はい…。」

「もし、もしこのことをバラシたりなんかしたら貴方を絶対に……絶対に……ッ!!!」

「は、はは、はい分かりました。この秘密は絶対に墓場まで持っていきます!!」


 詰まらせたセリフの先をなんとなく察してしまったので思わず首を縦に振る私。

 シャーロット様と出会って数分程度だが彼女の立場と性格、そして現在進行形でにじみ出てくる迫力から続くセリフを容赦なく実行するだろう判断した私に首を横にする選択肢などあろうはずがない。


 この時ようやく先ほどジョードさんの言いたいことが何となくわかった。

 秘密の暴くのは先程のスリの件の時のようにいいことばかりではない。

 秘密を暴かれた場合、下手すれば命の危機にまで及ぶことが、この学校で始めて学んだことだった。


「ううう。どうしてこんなことに……。」




早速、元皇太女に目をつけられたエメリー。

しかし!!彼女の受難は終わらない!!


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