剣聖 シェリエラ アルムヘイム
「現剣聖にして第6界まで制した「シェリエラ・アルムヘイム」と申します。」
この華奢な女の子が400年に一度の天才?
「あっあなた様が現剣聖で仰せられるのですね。女性である事は、存じ上げていたのですが。・・・まさか」
(おじいちゃん、言いたいことはわかるよ、けど絶対言わないほうがいい!)
「こんな可愛らしいお嬢さんとは、思いもしませんでしたよ。」(いっちゃったよ!)まずい状況になることを薄々悟りながら彼女に視線をやる。
「そうですか、まさか現剣聖がこんなにも小さく華奢でろくに戦えもしなさそうな女の子だとは思ってもいなかったと仰るのですね。」
うわ、かなり怒ってる、さぁどう対応する?おじいちゃん。危うい状況を傍観者として見るのは、罪悪感もあるが実に面白い
「これは、失礼極まりない失言をしました。その節は大変申し訳ごさいません。それで話を戻すのですが、剣聖はこの咎人をどうなさるのでしょうか。」
いよいよ傍観者でいられなくなった。
「姉上!まさか、この反逆者を庇うおつもりで?」
「そんなことしないわ。私の大切な十界剣を盗んだこの金髪には、私直々に処分をくだすつもりよ。あの時は、あんたが私の第4界の能力を闇の力と揶揄した事が許せなかっただけだから。」
「それは、身勝手なことをしました。」
180近くある大男が小さい女性の前で片方の膝で膝まずく。膝まずいても彼女の胸部辺りに頭がきていた。
「分かればいいのよ、さぁ早く立ちなさい。」
どことなく焦っている訳はある程度察した。
「では、早速場所を移しましょうか。テレポート」
彼女がそう言うないなや裁判に同行していた大勢の者たちが、帝国闘技場の観客席に転移していた。一方、話をしていた当事者と咎人は、中にいた。まるで場所だけが移動したように。
「さぁエリト・ヴォルターナ。あなたをここで処刑します。」
さらっと猟奇的なことを言われた。手錠をしたまま歴代最強の剣聖と敵対するなんて、完全にまな板の上の鯉ではないか。状況を上手く理解してはいなかったが、そんなことには目もくれず、最強の剣士は戦闘態勢に入った。
「ゲート!」
少し聞き覚えのある単語が聞こえ、焦りが消え失せた。すると彼女の左の地面に突如、空間にぽっかり真っ黒な穴が空いた。
「なんだあれ?確かゲートっていっていたような。サモンゲートと関係があるのか?」
すると、すかさずお得意の説明タイムが始まった。
「はい。彼女が作り出したのは「ゲート」サモンゲートの下位互換といえるものでしょう。サモンゲートとは異なり、使用制限がありません。その点だけであれば、勝るとも劣らずといったところでしょう。」
説明を聞いている合間にゲートから剣のようなものが見えてきた。彼女はそれを取り上げる。次の瞬間、剣を持った右手から全身にかけて彼女のチャームポイントだった赤いような雰囲気がみるみる青いもののように変わっていく。髪は、先程よりも長くなり、地面に着くか否かのところで止まった。色も赤から青に変わっていく、そして瞳の色も赤から優しい青に変わった。全体の雰囲気も気が強い感じだったが物腰が低く優しげを感じる雰囲気となった。
「第2界 水界のカルノナウム」
彼女の容姿、口調とともに性格までもがまったくの別人のように感じた。
「もう一度宣言いたします。エリト・ヴォルターナさん、このシェリエラ・アルムヘイムがあなたをここで処刑いたします。」
涼しげに言われるとかえって恐ろしさを感じる。体が震えていた、いやそれよりも懐が妙にざわめく
「クソっ!あいつ何やってんだよ!」
いきなり頭の中で声が響いた。
「どうした。ライカ?誰に向かっていってるの?」
頭の中で会話を始める。口に出さずともある程度、意思疎通ができるようになっていた。さすがにこの状況下で独り言は、まずい。
「何ってあいつだよ。」
「あのシェリエラって娘?」
「違う違う、その娘が持ってる剣のことだ。」
訳の分からない話に発展してしまった。
「あの剣の名前カルノナウムは、オレの後輩の魔竜族にいたやつだ。魔力系統が一致していて意気投合してたんだが。あいつの奴、突如、オレに何も言わずにどっかいっちまってたんだよ。まさか封印された状態で再会するとは、思わなかった。」
「あの剣が封印された竜?」
「そうだ、封印に関してはあくまで推測なんだが。俺たちのような上級魔力所持生命体は、完全に生命が絶たれることは例外を除けばあり得ない。有機体としての身体の組織は事実上倒されたとなった場合消え失せる。しかし今の俺がなっている玉の状態のように無機質で構成された物質に、残っている魔力量に応じて変形することができるんだよ。魔力量が元に戻ったら、あの姿にも戻ることができるんだ。ところで、なぜあいつが封印されたかと推測したかと言うと、剣の姿が三段階の変形の中でも一番オリジナルに近いからだ。封印という手段自体が対象の魔力の消失を最小限に抑えたものであって大体の上級魔力所持生命体は、封印されたら武器になるんだ。ちなみにこの玉の状態は、三段階の中でも一番下だけど。」
長い説明の間でも最強の剣士の歩みは止まらない。剣になんだか魔力を注ぎ込んでいる様子が見られる。
「ライカ、一つ良い方法を思いついた。今のオレならできるかもしれない。」
暫く頭の中で提案を議論した結果
「本当にいいのか?あんたに、あまりメリットが無いように思えるんだが」
「いいよ。だって仮にも友達みたいなものなんだから」
「仮ってなんだ!?仮って!」
提案は、難なく通った
「(ヨシッ、早速・・・)ということで、逃げろ!」
両手を手錠されながらも必死に逃げる。手が塞がっているとかなり走りづらい
「往生際が悪いのですね。こちらも参ります。水撃斬」
鋭い水の斬撃が空を切りながら逃げ惑う哀れな男に向かっいく。
「ワッ!!なんて威力だ!」
思い思いで避けることができたが地面に当たった斬撃は、闘技場の硬い地面を易々と抉った。斬撃はこの後も何度も男に向かい放たれた。大怪我までとはいかないが何度かかすり、傷からは血が流れていた。いつの間にかシェリエラの怒涛の攻めにより壁際まで追い込まれていた
「なかなか度胸もあるのですね。しかし次はそうはいきません。これで決めさせて頂きます。」
すると碧色をした美しい剣をこれまでより大きく構えた。さっきの斬撃とは比にならないものがくることは目に見えていた。しかし最後の悪足掻きをするようにエリトは片手を天に上げ叫んだ
「テレポート!」
明らかに転移魔法であるがエリトのいた位置は一つとして変わっていなかった。
「最後まで往生際のお悪い方ですね。エリト・ヴォルターナさん。我が宝剣を盗みになられたことを奈落の底で深く反省してください。水界究極魔法 極大水流一刀断」
巨大な水の斬撃が身体を両断すべく男に向かって放たれた。裁判関係者の大半が圧倒的な力の差をみせられ剣聖の存在を改めて帝国の要だと思っていた頃、咎人の上空から何かがものすごい速さで落ちてくる。それを感知していたのは、その場で三人もいなかったであろう。上空から来た物体は、巨大な斬撃を止めると同時にエリトの手錠の鎖を易々と切り裂いた。辺りが未確認物体の飛来による砂煙に包まれた後、シェリエラが叫んだ。
「何が起こったのですか?」
すると切り裂いたはずの男の声がした。
「いやぁー魔力操作。会得しておいて良かった。危うく本当に死ぬとこだったよ。さてと、ここからは俺たちの番だ。」
気になることがございましたら質問をしてくださると幸いです。今後の改善点として、組み込ませていただきます。ご要望も可能な限り対応していきたいと思っておりますので、是非気兼ねなく送ってください。