十界剣を扱いし剣聖
「処分に異論をお持ちの方は挙手を」
髭が目立つ裁判官が裁判関係者に問いかける。暫く静まりかえっていたが、1つの手が人混みの中上がった。
「では前へどうぞ」
老人が手招きする。すると、鎧を着こんだ筋骨隆々の大男と背丈約160センチほどの華奢な少女が人混みをかき分け前にでてきた。鎧の装飾品や、きらびやかな服を見る限り高貴な身分であることは察した。もう少し観察しようと思っていたが、老人が代弁してくれた。
「おぉこれは、これはアルムヘイム家の方ではありませんか」
アルムヘイム。何処かで聞いたことがあった。すると、ライカが話したことについて思い出した。
(確か、アルムヘイム家は代々、王族直属の剣士を務めているって聞いたな。しかも代々、剣聖を輩出しているエリート家系ときた。見たことは無いけど現剣聖は、400年に一度の天才で若くして剣聖まで登り詰めたと噂されているみたいだけど・・あのガタイの良さとただならぬオーラ、そして若くてイケメン。絶対あいつだ。)
「で、アルムヘイム家のお二人方は、どのような処分をご所望になられるのでしょうか?」
髭を触りながら問いかける。
「そうですね。我が家に伝わる宝剣「十界剣」をどのようにされたか存じ上げませんが盗み、勝手に使用し、我が帝国の誇る神聖樹を再生不能までにしたのですから。闇魔力の使役者の類いと見て間違いないでしょう。帝国の反逆者として即刻の死刑を求刑します!」
本当の事実から誤解が生じるのは、こんなにも辛いと初めて実感した。
「ちょっと待ちなさい!」
先程の少女が凄い剣幕で場を制した。良く見てみると、容姿端麗で艶のある赤い長髪を持ち、それでいて気の強い女性を思わせる立ち姿だった。
「この際言わせてもらうけど、あんた自分の生まれ育った家の宝である十界剣の能力も把握してないわけ?この金髪が持っていたのは、「第4界 滅界のゼルカニカ」この剣の真の能力は「破滅」。対象を込めた魔力量に応じて自分の思い通りに事象を滅ぼす力を持っているの。」
「と、いいますと?」
「察しが悪いわねぇ。反逆者の考えは筋が通っていないってこと。そもそも神聖樹が帝国にとって観光資源の観点からして超重要であることを知っていればこんな無謀な事はしない筈だし、もし帝国陥落を目的にしていたならばもっと違うところを攻めていたでしょ。だとしたら、さしずめ、神聖樹の超速度の再生を誰かから聞いて、心の中でその再生速度を止めてやる!みたいなことを考えて打ったら本当に止まったってところかしら」
(げっ勘も鋭いのか、女子ってやっぱこわっ)
「あのぅ、あなた方はアルムヘイム家のどういった方なのでしょうか?」
老人とよく考えていることが一致する。なんだか友達になれるように感じた。
「これは、お見苦しいところをお見せしました。この体躯だけの男は私の愚弟であり補佐のレグルス アルムヘイム。そして私こそが現剣聖にして歴代の剣聖が扱えなかった領域、第6界を制した「シェリエラ・アルムヘイム」と申します。以後お見知りおきを。
気になることがございましたら質問をしてくださると幸いです。今後の改善点として、組み込ませていただきます。ご要望も可能な限り対応していきたいと思っておりますので、是非気兼ねなく送ってください。