限界突破
「アルティメットスキル『ポッシヴィリタース』獲得」
オレの体から力が沸いて来た。これであいつを倒せる気がしてきた。
「よし、これで魔法が使えるはずだ。覚悟しろ、えいっ」あれっ出てこない。
「全然使えないではないか、さては、おぬし弱いのだな。弱き者に相手をしてもつまらん、退くがいい」
ダメだこのままでは、アリアさんがやられてしまう。と思った矢先
「スキル『ポッシヴィリタース』により、『平均能力許容超過』(アベレージオーバー)の使用が可能です。」
何かカッコいい技名が聞こえた。
「じゃあ、使用する」
「それでは、そこにいる女性の名前を呼び捨てで大きな声で叫んでください」
「よしっわかった、ん?えー!何で?」
「良いから叫んでください、行わないということは、使用しないと見なします。」
「わかったから。叫べばいいんでしょ、アリア!」
「声が小さいです。」
「アリア!!」
先ほどよりも大きな声でいった。こんな経験は初めてであった。すると体が急に光りはじめた。
「アベレージオーバー発動。発動により身体の状態を人間が得ることのできる能力の許容量を遥かに超越した位置までに向上させます。」
体に力が漲る、いや漲りすぎてる気がする。そして身長が120あたりだったのが180ぐらいまで一気に伸びた。
「アベレージオーバー完了。全身の筋力1000%向上、魔力量9999%向上。尚、魔力量の向上により環境への影響の懸念があるため、総魔力量の三分の一の使用を範囲とします。体自体は、身体的に一番ピークである、18才の体としています。」
「おぉ、すっげぇ体が軽い。これならいける。」
そして、一つ軽くジャンプしてみた。すると、空高く飛び雲の上まで越した。
「えっ、はぁーー?跳びすぎじゃない?あいつが小さく見えんだけど。」
驚いた矢先、また女性の声が聞こえた。
「はい。アベレージオーバーは、自身の平均能力でなく人間の限界平均値そのものを飛躍的に向上させるサブスキルです。この世界では、自身の筋力だけで10メートル跳んだという記録がありますのでその10倍の筋力となっています。」
「あれっでも、その10倍の100メートルでもこんなに飛ぶ?」
「はい、いろいろ要因はありますが話が長くなります。自身の目的を忘れていませんか?」
自分の目的をすっかり忘れていた。
「そうだった。アリアを助けにいかなくては、ねぇ?オレに関する今の情報を脳に直接伝達することは、可能かな?」
「可能です。賢明な判断といえるでしょう。では、私に名前を付けてください」
「だ・か・らなんで?」
「その事は、あとで詳細を伝えます。では、早急かつ素晴らしい名を」
「そうだなぁ・・・ナヴィレなんてどう?」
ナビゲートしてくれてるからって理由だけどさすがに安直過ぎた名前だろうか。
「ナヴィレですか・・・なっなかなか良い名前ですね。では、そうお呼びください。別に気に入ったって訳ではありませんからねっ」
えっ何このナビゲーション、ツンデレ機能ついてんの?
「じゃあさっそくお願いします」
「情報伝達起動」
空高くで、何か騒がしいのを横目にニライカナイの歩は進んで行く。アリアは、漸く体勢を整え、双剣を再び構えた。
「なぜ、八種族中最強の魔竜族である者がここにいるのですか。しかも、伝説の十輝竜星だなんて。」
アリアは驚きが隠せないでいる。
「我の存在を知った上での行動であったのか。勇敢だな、そこまで答えを乞うならば我を切り伏せてみよ、我は常に強き者に従う。我に力を示せ!」
「くっ、残念ですが。私にはあなたを退ける力すらございません。しかし、帰らなければ行けないところがあるんです。あの御方の下へと帰らなければいけないんです。ここでくたばるものですか。」彼女の信念が空へと響く。
「ほう、おぬし力の源は、あの小さき者への忠義か、我と似ている。しかし手加減はせん、本気でいかせてもらおう」
二人の戦いの叫びが聞こえる。
「魔具解放。風雷双剣、アストロテイン」
双剣に魔力がこもる。さっきのスピードの数段速く攻撃がくりだされる。
「なかなか、速いな。しかし我が同胞よりは劣るな。では、我もゆこう」
そう述べるやいなや、湖の水が渦を巻き、だんだんと大きくなっていく。
「流水暴乱渦」
巨大な渦が彼女を襲った。彼女は渦に巻き上げられ宙にほうりだされた。宙に浮く感覚を感じながら彼女は、あの方は悲しむだろうか、自分がいなくなったらどうなるのか、とこのような状況下でも自分すら案じなかったのである。自分自身より主人を慮るなんと素晴らしいほどの忠義だろうか。しかしそのような意識も遠くなっていき地面へと落下していく。死んでしまっても差異のないほど意識が消えかけたところで誰かに抱えられた感覚がした。うっすらと姿が見える。金髪の髪に背の高い男性。なぜか自分に合ってない小さい、見慣れた服を着ている。全然知らない男だがどこか知っている気がした。この違和感を最後に意識が完全になくなった。
「えっまさか死んじゃってないよね?」
「はい。ただ気を失っているだけです。」
「よかったぁー、流血もあまり見られないし思ったよりも軽症ですんでるみたいだ。さてアリアが頑張ってくれた分オレがやらなくちゃ、」
そう言うとニライカナイに鋭い視線をやった。今までの自分にはなかった自信が沸いてくる。家に引き込もってゲームばかりしているあのオレではない。今だけは別の自分になっている気がした。
「オレは今、手加減できないけど大丈夫か?」
アリアを木の下へ優しく置いた後、怪物に自分の莫大な魔力を見せつけた。(これで去ってくれればいいのだけれども)
「この気配、さては先の小さき者だな。どのようなからくりで、その強大なる力を得たかは知らんが。一つとして我が退く理由になり得ないな。いや、どちらであれば非常に楽しみでもある。なんせ400年以上同胞以外で強き者を見たことが無いのだからな。我にあの愉悦を再び味わせてくれ強き者よ」
ニライカナイが身構える
「いいよ、オレも自分の力を試したかったんだよね。本気で行かせて貰うよ。」
エドワードも地面に裸足を押し付けて構えた。