4.いつも通りの昼
「お、お嬢様、大丈夫ですか?」
ゼンが慌てながら駆け寄ってくる。
落ち着いて。
私は大丈夫。今更心配しなくても、これくらい慣れたわ。
安心させたくて、少し微笑む。
パンパン
「ゼン、リーナお嬢様をお部屋に。
サラ、手当するために救急箱を。他は仕事に戻りなさい」
執事長のキースが場を落ち着かせようと手を叩き、指示を出していく。
「私ものちほどそちらに向かいますので、ゆっくりお休みください」
そう言ってキースは去っていった。
思ったより強く叩かれたようで、頭がグラグラしてきた。
まだ、やらないといけないことが残っているのに...
「お嬢様!」
「いい加減、落ち着きなさいゼン。お嬢様のお体に障るわ」
「サラ、君の声も十分大きいから。静かになりなよ」
「なんですって!?」
相変わらず仲良しね。
2人の声を聞きながら、私は意識を手放した。
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窓からの日の光がふわふわとあたり、ベットの中はとても暖かい。
少し寝たおかげで体が朝より軽く、気分もだいぶスッキリとした。
「はぁ....。いい加減、あれをどうにかしなければ」
キースの低く冷たい声が聞こえる。
「同感でございます。さっさと追い出すか、始末するか、やってしまいましょう」
サラの不穏な言葉も聞こえる。
お、落ち着いてサラ、そんなことしてはダメよ!?あなたの命が危ないわ。
「そうしたいのは山々ですが、あれは腐っても侯爵の娘で伯爵夫人。そう簡単に消せる相手ではないのです。それにあちら側には侍女長をはじめ、何人か使用人が肩入れしている様子。まったく、めんどくさい」
「それでは、旦那様は何をされているのですか。いつからか覚えておりませんがお屋敷には帰られなくなり、お嬢様のことはほったらかし。このままではー」
サラが何か言いかけていたけど、私が起きたのに気付いたようで話すのをやめてしまった。
「リーナお嬢様、お目覚めでしたか。お体のご加減はいかがですか?」
体の調子は朝より元気よ
キースとサラに伝わるよう手をパタパタと大袈裟に動かす。
「お嬢様、元気なのは伝わっています。しかし、急に動いてはお体によくありません」
サラは眉を下げて、私に心配の言葉をかける。
私、体が弱いどころか丈夫だと思うのだけれど、それは伝わらないのかしら。
ニコッ
気のせいかしら、二人が一気に笑みを浮かべた。なぜか怒られてる気分...。
「お元気になられたのなら、気分転換にお庭に参りましょう」
そういえば、昨日サラとお庭に行く約束をしたの思い出す。せっかくなら、洗濯を押すところ以外の場所がいい。
そんなことを考えながら、サラの後をゆっくりとついていった。
お読みいただき、ありがとうございます!!
次回こそ庭に行きます!!