第5話 ハードル高すぎ問題
はたらかなきゃいけないことは分かったけれど、やっぱり働きたくないでござる。
働きたくない、はたらきたくないでござる。
と、悶々としていても仕方がないので、とりあえず気持ちをリセットして再検討開始。
先に検討した時に判明した、働かない為に必要な貯蓄額は以下の通りだ。
10年、2,040万円
20年、4,080万円
30年、6,120万円
40年、8,160万円
この額が「はたらきたくないでござる」を叶える為に必要な貯蓄額。
現状、貯金は頑張っているが、その貯金と不労所得分加味して考えても、完全無労働の場合20年も持たない。
そして私は20年、30年では老齢年金はもらえない年だ。
貯金がもたなくなってから土地を売って、その利益で食いつなぐという方法も考えられるけれど、そうすると所得が完全に消えてしまうことになる。
これはあまりに心細い。
うぅむ……やはり、もう少し不労所得を増やす方法を検討しないと、アーリーリタイアは現実には不可能な遠い夢でしかない。
嗚呼、厳しいにも程があるだろう。
現実よ。
さて、こうなっては仕方ないので、新たな不動産投資という方法をメインに新たな収入源を増やす方法を模索することを決め、色々とインターネット上で物件を漁ってみた。
漁ってみた。
漁ってみたよ。
漁ってみたけど、まー、探せども探せども、どれもアウト物件ばかり。
インターネット上で見つけられる情報は情報だけ見てもマイナス面が大きいように思えたものばかりで、基本的に『売れ残る』物件しかないように思えた。
そもそもにして考えてもみれば、お金をかけて宣伝している物件は、お金をかけないと売れない物件ということの裏返し。
本当に良い物件であれば、表に出る前に話一つで売れている可能性が高いから、やはり良い投資先というのは、そうそう表に出てくることは無いようだ。
なので物件探しについては、駐車場でお世話になっている不動産屋に情報提供を呼び掛けて切り上げることにする。
とりあえず「情報求む」のメールだけ今、出しておいた。
あと現状の駐車場の拡張する為に土地を売る気が無いかなど機会を見てご近所さんに聞いてみることにしよう。
ご近所さんに聞くというのは中々にハードルが高い取り組みだけれど、現状で収益が見込めている物を大きくするというのも有効な手には違いないはずだ。
もちろん、その拡張の方向として現状の駐車場からアパートにして収益の拡大を目指すという方法も考えることはできる。
実際建物を建てれば、駐車場1台よりも入居者の方が何倍もの収入になる。数年前に近くにアパートが建ったが、そこは今でも満室で盛況。
建てるだけなら、貯金をフルに使い、不足分を銀行借り受けなどにして対応すれば充分に可能な範囲に収まる。
だがイニシャルコスト、ランニングコスト、そしてその建物が20年過ぎてからの入居率を考えると、まず駐車場以上の利益になるかは難しいように思えるのだ。
なぜなら建物は長い目で見れば『消耗品』。消耗品は必ず駄目になるから消耗品なのだ。
なので現状、不動産投資などの不労所得について、これ以上の有効な手は私の頭では思いつきそうにない。
思考の切り上げ時だ。
さて、検討内容が無くなったので視点を変えて考えてみることにする。
例えば『田舎で自分の食べるものを作って生活費を抑える』など、そもそもに発生する金額を抑えこむ方法がないかなどだ。
俗に言うUターン、Iターンという方法だ。
田舎は発生する金額が抑えやすいようなイメージがあり、なんとなく頭に浮かんでしまった。
月17万発生を見込んでいるのを12万に抑え込めば、数字としても、まだとっつきやすい。
だが、過去に田舎者だったことのある私には見える。
『水道? あぁ●●さんに任せとけ』
『日用品? あぁ〇〇さんとこ行け』
『修理? あぁ××さんだな』
『食料? あぁ△に行けばいい』
必要なものを相談すると、こんな回答が返ってくる事が。
これが何を表しているかと言えば『事業の独占』が起きている証拠。
ネット通販で賄えるような部分は、田舎と言えど独占が崩壊している可能性があるが、暮らすとなればネット通販では賄いきれない事が多い。その部分は確実に独占者によって高価な値がついていることだろう。
ただ田舎ならではの人付き合いで親しくなれば独占が故に安くなることもありうる。『あーいいからいいから』と無料になったりすることまで考えられる。
だが、そのためには人付き合いが必須。
そして田舎で人付き合いが増えるというのがどういうことか。
『祭りだ』
『町内費だ』
『あそこのじっさまが亡くなったぞ』
『選挙だ』
『集まりだ』
『寺が』
完全な田舎は人付き合いがヤバイ。
蔑ろにすると、まーヤバイ。
暗黙のルールやシステムが完成していて、とにかくヤバイ。
なにせ前時代から時間も時代も止まっている。
それが『完全な田舎』の特徴だ。
この完全な田舎では、なろう小説ばりの権力者が存在し一帯を支配していることがありうる。
そしてその権力者こそがルールであり。法律? そんなもんより〇〇さんの言うとおりにしとけばええ状態だ。
男尊女卑はもちろんのこと、誰かが死んだ時にでた土地なんかも法的な相続なんてものも存在しない。あそこはアイツがいるから、アイツが全部継げばいい。おらんもんは知らんの一言で全てが決定され実質的な占拠が開始されることまでありうるのだ。実質的な占拠は強い。なにせその土地に住んでいないものは余所者で敵なのだ。一致団結力がヤバイ。じわじわ境界があいまいになってゆくのだ。
この権力者に取り入り有利な立場になる為には滅私奉公が求められる。
労働し、尽くし、金も出す。
正しく付き合えば、食うに困ることはないだろう。
だが、出ていくものは恐ろしい速さで出ていくに違いない。
なので田舎に住めば、都会に住んで節約生活するよりも、ずっと金がかかる可能性が高い。
特に例えで出したような権力者が『持ってるヤツが出せばいい』と考える地域にノコノコと行くようなことになれば、まさにカモがネギ背負ってやってきたという状況になること間違いなし。想像したくもない。
勇気をもって完全に付き合い無しも選ぶことはできるだろうが、その場合、最初から別荘などの扱いにして『完全にお客様』状態を作り、いざという時の為の逃げ場はきちんと別に用意しておく方が無難といえる。
なんか、かなり田舎をディスってしまっている。
ごめんなさい。
なにせ私は田舎者だった。
だからこそ田舎の話題になると『田舎になんか絶対行かない方がいい』という気持ちが疼いて仕方がないのだ。
とても極端な話ではあるが、田舎という存在については、なろう的異世界に紛れ込んだと思うくらいでちょうど良いとすら思っている。
真の田舎で常識や法律が通じると思うなよ? と。
田舎暮らしを経験し、現状、そこそこの都会に住んでいる人には、これまで書いた言葉に『分かる』感がある人も多いのではないかと期待したい。
なので、UターンやIターンの場合には、そこそこ都会に近い『そこそこの田舎』であれば、まだ、ここまで過酷なことはないだろうから、そういった場所でならば食べる物を作り生活費を抑えるという選択肢はアリかもしれない。
でも……やっぱり結局は働くことになるのよね。
やはりどうやっても『はたらく』の呪いからは逃れられない。
というわけで、ここはひとつ、この『働く』という行為について考える必要があるように思う。
『はたらきたくないでござる』で許容できる労働が無いか。
『働く』という行動について許せる労働と、出来る限りしたくない労働の線引きをする。
そして『しても良いと思える労働はする』という方向で考えないと、まずもってアーリーリタイアの実現は難しそうに思えた。
さて、では自分の中での、しても良い労働とはなんぞやろか。