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第三話 メンタルブレイク耐性-3

「ギャウッ」

「グゥエ!」



魔獣達が次々と倒されていく。

倒しているのはエリュシカだ。

俺が何かする事は無い。

時にはエリュシカの何倍もの大きさの魔獣も現れる。

現れるのだが、しかし当たり前のように無傷で倒してしまう。



最初は魔獣が弱いのかと思ったが、とある魔獣の一撃で太い幹を持つ木々が一気に三本折られたことがある。

その威力たるや、恐らく俺が十人いても五秒とかからず瞬殺されるのは間違いないだろう。

そんな魔獣の一撃を交わし、受け流し、そして的確に攻撃を浴びせ続け倒してしまう。

無視の域になった魔獣も容赦なくとどめを刺す。

強すぎる。

どちらが魔獣か分からない位にエリュシカは強いのだ。



そう考えると旅の動向を提案した俺の判断に間違いはなかった。

ナイス判断。俺グッジョブ。



ともかく、俺はエリュシカが魔獣を倒している間に乾いた木の枝を集め火を起こす。

魔獣の肉を焼く準備を始めているのだが、

ライターなんて物は無いから、火打石で火をつけるのだg、これがまた最初はなかなか火がつけられなくて困った。

カチカチと石と石を当てても微かに火花が散るばかりで全然枝に火が付かないのだ。

エリュシカに聞いて何度か実演してもらう事でやり方のコツを掴み、今ではようやく火をつけられるようになったが、いまだに火をつける為に頑張ると腕が筋肉痛になる。

ともあく、火打石を付けるのが自分でも上手くなったなと思い始めていた次の瞬間である。



「ん……」



異変を感じた。

なんていうか自分の身体に何かが来たというか……。

言葉で言い表すには難しい感覚なのだが、ともかくそれは突然来たのだ。



「身体に何かが来た感じがする!」



そう言ったのはその日の夜の事だ。

川で返り血を洗ってきたエリュシカに聞いてみた。

ちなみに過去覗こうとしたことがあるが、裸を視界に入れる前に剣が飛んできたからそれからしないようにしたのだがその話は今は割愛しよう。



ともかく、発言的にちょっと頭がおかしいんじゃないと思われるんじゃないかと不安だったのだが。

エリュシカは俺の頭のおかしい発言に対して別に当然の事のように頷いた。

そして右手をフリップした。

フリップ、そう、携帯の画面を指で滑らせるような感じで……である。

すると白い半透明の画面が出てきた。

それはステータスの書かれた表だった。



「え、なにそれ」



聞くとエリュシカは不思議そうに首を傾げる。

何言ってんだこいつ……とでも言いたげな顔である。

最近少しだけだが言葉を使わなくてもエリュシカの言いたいことが分かるようになってきた気がする。

少しだけだけど。



「えっと、普通に指を振るだけで出るのか?」



確認を取るとエリュシカはうんと頷く。

ならば……と早速指を振るが出てこなかった。



「なんだよ、出ないじゃん。なあエリュシカ! 嘘じゃん、出ないじゃん!」



文句を言うと頭を叩かれた。

むっとした顔をしている。

嘘つき呼ばわりされてちょっと怒った様だ。



「こう……」



エリュシカが指を振ると再びステータス表が現れる。



「こう?」



振るが出ない。



「違う、こう」

「こう?」

「……センス無い」

「指振るのにセンスなんてあるか! 絶対教え方が下手なだけだし!」



もう一度頭を叩かれた。

そして何度も挑戦してようやくそれは出た。



「おお! やったエリュシカ! 出たよ、ありがとう。出た出た!」



白いステータス表だ。

まるでゲームのような枠があり、一番上には自分の名前、そして下に自分の能力値とスキルが表示されている。



ネーム

高山光紀

クラスD

筋力66、耐久値78、敏捷性46、魔力23、運9

スキル

麻痺耐性1、火打石1、交渉1、メンタルブレイク耐性-3



これが俺のステータスである。

クラスはどこまで段階があるのか分からないが、クラスDが最上だったなんて話は聞いたことがないから恐らく俺の能力は低いのだろう。

更に麻痺から回復したためか、麻痺耐性があり、火打石1なんていう地味なスキルも存在している。

交渉1……エリュシカの旅に同行出来たからか? それとメンタルブレイク耐性-3。

ちょっと待て。



「おい、これ見てくれよ」



エリュシカは俺のステータスを見ないようにそっぽを向いていた。

この世界には人のステータスは見ない……なんていう暗黙の了解があるのだろうか?

俺からすれば隠すことでもないからどうでも良いのだが。



「この-3ってなんだよ」



エリュシカは俺のステータスを覗き込み、最初は真剣な顔で眺めていたがある一点。

最後の部分を見て、急に顔を両手で覆った。

声は出していないが身体がプルプルと震えている。

メンタルブレイク耐性-3、要はめちゃくちゃ傷つきやすいとステータスに書いてあるところを見た途端だ。



「レ……レア……スキル」



身体を震わせながらぼそりと呟いた。

レアスキル。

それはゲームでもあるが、いわゆるなかなか持っている人がいないスキルという事である。

百歩譲ってそれは良い、新しい世界で俺だけが持っているスキル……というのはちょっと嬉しい。

俺はあっちの世界にいた頃ゲームが好きだった。

自分だけが持っているスキル……なんて話を聞いたらついい目を輝かせてしまうし、誇らしげに思ってしまうかもしれない。



しかし、しかしだ。

メンタルブレイク耐性って! -3って!



「何がレアスキルだ! これ全然プラスじゃねえだろ!」



完全にマイナススキルである。

無いに越したことがないスキルだ。

だが、どうしてこんなスキルを俺が持っているのかという理由に関しては思い当たることがある。

だからこれ以上は文句は言うまい。

俺のところにこのスキルが来たのは偶然ではないだろう。

しかし、これがレアスキルなら向こうの世界には、このレアスキルを持っている奴は吐いて捨てる程いるように思えるのだが。



これも何かしたら改善するのだろうか、麻痺耐性のように麻痺を解除じゃないがメンタルブレイクを解除したら耐性に変わったり……。

そういう事だったりする?

ーーと聞こうと思ったのだが、隣を見ればエリュシカがまだ顔を両手で覆ったまま身体を震わせていた。

こいつどんだけ笑ってんだよ。笑い上戸か。



「おい、いつまで笑ってんだよ。人のマイナススキル見て笑いすぎだ。ていうかお前のも見せろ」



言うとエリュシカは顔を覆っていた両手を離し、嫌そうな顔をする。



「何嫌そうな顔してんだ。お前だって俺のステータス見たんだから当然だろう」



そこまで言ったところでエリュシカはようやくステータス表を見せてくれた。



「どれどれ」



軽い気持ちで見て愕然とした。



ネーム

エリュシカ・シープ

クラスA

筋力688、耐久値653、敏捷性796、魔力142、運4

スキル

状態異常耐性3、家事3、投擲3、マグナスの呪い



ものすごい能力値である。

強いなんてものじゃない。チートだ、チートレベルに強い。

間違いなくそのうち能力値がカンストしてもおかしくなさそうである。



「お前めちゃくちゃ凄いじゃん! なにこの能力値、高すぎだろ。それにしても魔法ははつかえないんだっけ? にしては魔力が高いな、エリュシカってもしかして魔法の才能あるんじゃないか? それに状態異常耐性も高いし家事も出来て投擲は投げるやつか……ん?」



マグナスの呪い?

何だこれ……って聞こうとした瞬間。

バッとエリュシカは凄い速度で俺から距離を取った。



「え、あ……え?」



その表情は険しく、それでいてどこか怯えているようにも見えた。

俺は瞬時にやばいと気づく。



「あ、あー……おいおい、まだ俺途中までしか見てなかったっつーのに。まあ良いよ。それだけ強くて家事3って凄いな、何でもできるんだな」



とっさに嘘をついた。

本当は最後まで見ていたけど途中までしか見てなかった……というように話を反らした。

普段通りの顔が出来ていたかは分からない。

ーーが、エリュシカはしばらく俺の様子を見て、最後まで見られなかったと感じたのか分からないが、硬かった表情を少しだけ緩めてうん……と頷いた。



「えっと……そうだ、能力値って限界はどこなんだ? なんとなくだけど能力値を上げたら一定の段階で暮らすとかも上がったりするんだろ?」

「クラスDなら200、Cなら400、Bなら600、Aなら800が限界。ただどこでクラスが上がるかまでは知らない」



珍しく一気に説明してくれた。



「そうなのか、まじかあ……じゃあ俺がクラスアップするのはまだまだ先みたいだな。簡単に上がる方法とかってないの?」

「…………」



聞いたが返答は帰ってこなかった。

方法があるのか、それとも単位最後のスキルを見られたかもしれないというのがそれほど嫌だったのか。



「……おやすみ」

「あ、ああ。おやすみ」



それだけ言って横になる。

それにしてもマグナスの呪いって何だったんだろう。

そんなことを考えながら目を閉じた。

ここでとりあえずプロローグ、出会い編完です。

ここまで閲覧ありがとうございました。

続きはまた後日書きますので、少しでも興味持ってもらえたらまた読んでいただけると嬉しいです。

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