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第十一話 再びユーグォへ

 テントに入ると西条がニコニコしながらこっちを見ていた。

 机にはコップが二つ。

 まるで俺が追ってくるのを待っていたかのようだ。



「おや、どうしました?」



 コップを用意しておいて白々しい。



「話がある」

「ふふ、まあ立ち話もなんですからどうぞ」



 椅子に座ると飲み物を飲むように言われる。



「要らない、それより」

「まあまあ、一口飲んで落ち着いてください

 これはクバの実のジュースです。どうぞ」

「……オレンジジュースみたいだな」

「落ち着きました?」

「多少は」



 西条は二コリと笑う。



「まさかユグナレスに斬りかかるとはね、死んでもおかしくなかったんですよ?」

「だろうな、自分でもびっくりだよ」



 これは本音だ。

 きっとトランス状態だったんだ。トランスミツキ。ラスボス目指せるな。



「さて、それで何が目的ですか?」

「単刀直入に言う、エリュシカを助けたい」

「なぜ?」

「なぜって……」

「あなたも気づいているでしょうが私はこの世界の人間ではありません。

 勿論あなたもそうでしょう?」

「そうだな、少し前に気づいたらこの世界にいた。お前は?」

「私もそうです、どうしてここにいたのか分かりません。

 どうすれば元の世界に帰れるのか、この世界はどこなのか?

 旅をしながらいろいろ調べました。碌な答えは得られませんでしたけどね」



 西条は小さなため息をついた。



「もしかしてそれでお前伝説のアイテムの事とか知ってたのか?」

「そうですね、知っていますし様々なアイテムを集めました。情報もね。

 それもあってあなたの手助け位なら出来ると思ってます」

「助けてくれるのか?」

「同郷を助けたいと思うのは当然じゃないですか」

「本当かよ」

「おや、疑うので?」



 心外だとでも言いたげだ。



「お前商人なんだろう? なら対価を欲しがるんじゃないかって」

「ふふ、確かに。私は向こうの世界でも商人でしたからね。対価を欲しいところではありますが。

 これは好奇心でもあるのです」

「好奇心?」

「はい、どうしてあなたが彼女を救おうとするのか……です。

 あなたこの世界の人間じゃないんでしょう? 少し前って事はあの少女とも縁が薄いはず。

 それなのにどうしてだろうと思いましてね。ましてや彼女はマグナスの使徒なんでしょう?

 メリットはどこにあるのかと」



 何か裏でもあるのかと勘ぐってるようだ。

 利に聡い商人だからこそ気になるのだろう。

 しかし、もっともらしい事を言おうとしてやめた。

 さっきもドラゴンの時も変な理想を目指して失敗した。

 気づいた、俺には勇者とかそういうのはきっと似合わない。

 才能がない。



「そりゃお前、可愛いからだよ」

「…………?」

「何呆けた顔してんだよ。エリュシカが可愛いからだよ。

 お前この世界に来て彼女は俺を何度も救ってくれたんだ。

 可愛い女の子だぞ? そんな女の子が攫われたら救いに行くのは男のロマンだろ」

「すいません、あなたさっき死にかけましたよね?

 そんなくだらない理由で命をかけたとでも? 大事な命を?」

「当たり前だろ、せっかく最近ちょっといい雰囲気になったんだぞ。

 あっちの世界で俺がどれだけモテなかったと思ってんだ。

 チャンスだぞ、良い恰好したくなるだろ」



 西条を見ると笑っていた。

 何が面白かったのか楽しそうだ。



「利益があるなら一口噛ませてもらおうと思いましたけど、

 そんなものは犬でも食べないですね」

「どういう意味だよ」

「良いでしょう、協力しますよ」



‐‐‐

「さて、問題はどうやって取り返すかだ。

 ていうか教会騎士ってどのくらいいるんだ?」

「約200人位です。ほとんどがミツキさんより強いと思います」

「強さは言うなよ。じゃあ何か? 俺が正面突破しようとしても無理って事か?」

「まあ無理でしょう」

「はっきり言うね」

「現状把握は大事です。ではここからの流れですが。

 恐らく教会に付き次第異端審問が行われます、そして処刑日が告知されて

 そして処刑です」



 やっぱり処刑が決まっているのか。

 結果が決まってる異端審問って意味あるのかね。



「それにしてもすぐに処刑じゃないなんて随分まどろっこしいやり方なんだな。

 こっちとしたら助かるけど」

「教会の権威の為ですよ。この世界はあまり効率的に動いてないですからね」

「なるほどね、それで処刑まではどのくらいだ?」

「異端審問が5日、告知に処刑……概算ですが十日って所でしょうか

 それにしてもどうするおつもりですか?」

「それだよなあ……ちなみにお前の能力値ってどんなもんよ」

「これはこれは、いきなり人任せとは、それがあなたの言う良い恰好なんですか?」

「うるせえ、出来ることはなんでもするんだよ。それでどうなんだ?」



 西条は静かに首を振る。



「残念ですが私は決して能力は高くありません。

 私が持っているのは少々の珍品と情報、あとは大量の金位ですかね」

「大量の金を持ってるって向こうの世界で言ってみたいな」

「あなたは……そういえば金すら持ってなかったんでした」

「ほっとけ、とにかくお前が役に立ちそうにないって事は分かった」



 ばっさり言ったのだが西条は嬉しそうに笑っている。



「随分な言い草ですねえ、でもそんな事言っていいんですか?」

「というと?」

「直接的な解決法ではないですが、一人口説き落としたい人がいます。

 今からテントを畳みますからユーグォに行きましょう」

「口説き落としたいって誰を?」

「有能な方ですよ、ご安心を」

「ふーん……ま、その言葉信じるよ」

「あまり人を信じては騙されますよ」

「……お前は俺に疑われたいのか」



 西条はクスクス笑いながらテントを片付け始めた。

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