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探し求めた希望

窓からの訪問者になるに、至った経緯です。

アレクシオス目線の話です。


どんな病気や、怪我でも治せる力。


聖属性の治癒魔法。



幻と言われている、その魔法なら、呪いの病を治せるかもしれない。


そんな力を持つ者を探して、10年。


名医が、居ると聞き、探しもとめるが、

名医では、あるが、治癒魔法は使えなかった。


そういう事は、もう数え切れないほどある。



よく当たる、占い師が、病気を治せたと聞き、訪れたが、偶然の一致だったり、

よく効く、薬屋があると聞き探した事もあった。


だが、どれも、期待したものでは、なかった。


今回も、旅人から、「ほとんど、医者が、いらない村がある」と噂を聞き、希望は薄いが、従者のオーキッドと、ケンを連れ訪れる途中だ。







「こんな森の中に、子供?」



ケンが、呟いた。


目の前には、薄汚れ、ふらふらな男の子がいた。


木に、しがみ付きなんとか、立って居るといった様子だ。


「だいぶ弱っている色をしている。」


呟いたのは、オーキッドだ。


彼は、盲目だが、彼の持つ、光属性の魔法で、周りの色を輪郭化して、知ることができる。


実際には、どう見えているか、分からないが、優秀な、武人でもあり、賢く、寡黙だ。

頼れる従者だ。



「こんな木の密度が高すぎて、馬も、入れないような、迷う森の中に、何も持たず、子供がいる事が、不自然だ。親にでも捨てられたか…」


ケンが呟く。


『 このまま、捨て置けば死ぬな。』


そんな事を思い、


「村へ行くついでだ。連れて行ってやるか…」と、従者の2人に、聞こえるように言う。


もし、捨て子なら、従者として育てるのも、いいかもしれん。


あんな、ふらふらな、状態にもかかわらず、目は、絶望していない、なかなかの根性をしている。



アレクシオスは、珍しく少年を気に入ったのだ。



「おい。お前、こんな森の中で何をしている?」


少年に、声をかけると、少年は、振り返ると、同時に、気を失った。


唇や皮膚は、乾燥し、顔色は土色、息は、上がっている。


「こんな軽装ですし、脱水でしょうか?飲まず、食わずで、うろついていたのでしょう…」


ケンが、少年に駆け寄り、助け起こした。


「すぐに飲み物と、腹に優しい物を用意してやれ」


アレクシオスは、ケンに指示した。



携帯用の調理器具で、水を沸かし、白湯にして、飲ませる。

しだいに、意識を取り戻した、少年は、自分で、水を飲み粥を食べた。



聞けば、3日前に、連れ去られた、家族を追った後、道に迷い、暗闇の中で、森に入りこんでしまったとのこと。


3日間、薬草やハーブで、飢えを凌いでいたものの、ほぼ、何も口にしていなかった。との事だった。


名は、カミル、5歳だと言っていた。




『たった5歳の子供が、よく3日間もったものだ…』





カミルは、目的としている、村の出身だった。


ちょうど、村に行く途中だから、村まで、送っていくと、申し出れば、笑顔で、お礼をいわれた。




5歳とは、思えない対応だ。

泣いて、わがままを言ったり、困らせられることもない。

それどころか、食事のお礼をしたいと、目を輝かせながら言う。

無下にもできず、無理をさせるわけにもいかない。軽い敷物などが、入っている袋を持たせる事にした。



体力の落ちた体には、辛いだろうに、抱っこやおんぶを強請ることなく、少年は、自力で、歩いて村まで着いた。



村は、見るも無残に、焼き払われていた。




『一体何が、あったのだろう…』





よく見れば、焼き跡から、数日経っているのがわかる…。


カミルの家族の誘拐と、何か、関係があるのかもしれない。


そんな事を思い、村に着いてから、どこかへ、走って向かった、カミルを目線で探した。



視線を遮るものは、ほとんど、焼き払われて無い。


すぐに、カミルをみつけた。


何かの、建物の跡で、下を向き拳を握りしめている。


近付いて、肩に手を置くと、涙を流しながら、自分が、育っていた、孤児院なのだと言いった。



「3日前何があった?」




静かに問うと、カミルは、ポツポツと話し出した。








まさかのビンゴだ。


『探していた者が、確かにここに居た…。』



カミルは、兵士が、治癒力を持つ娘を探して、マリアを連れ去ったと言った。


だが、カミルは、マリアには、そんな力は、無いと言う。

普通の女性だと。

力が、あるのは、この教会の神なのだと言う。


カミルが、嘘を言ったとは思い難い。

たぶん、カミルは、知らされていないのだ。


起こった事を事細かく聞き、状況を聞把握する限り、


マリアは、100%治癒力を持つ娘だ。



「やっと、やっと見つけた。」



カミルに、出会えた事を神に感謝した。




村は、全滅だ。


もし、カミルが、居なければ、治癒力を持つ者の手がかり一つ、つかめなかった。


話しを聞きながら、考えていると、カミルが、言う。


「オレ、何にもないけど…

アレクシオス様の奴隷に、奴隷にして下さい。


でも、そのかわり、マリアたちを助けて…。


あと。マッマリアは、めちゃくちゃ美人だよ⁈」




『 頼まれなくても、治癒力を持つ娘に、会いに行くつもりではあったが…。

なぜ美人を強調してるのか…。

しかも疑問形にして…。


美人だからと、その語尾の後を自由に、想像させるあたり、大人が、どんな言い回しをしたら、自分の有利に、動くか計算している…。

カミル…思った以上に、頭がいいな…。

だが、所詮子供だ。浅はかだな。


まあ、状況から、連れ去った、奴らは、彼女の存在を隠したいのだろう。

兵士が、王からの命令だと、話していた事をカミルが覚えていた。

それにより、犯人の特定は、できている。

隠している者に、素直に会わせて、もらえそうにはない…。


ここは、カミルの依頼を受けた事にした方が、治癒力を持つ娘に、警戒されずに、すむかもしれないな…』



「オーキッド、モジギアへ行き、マリアとの接触を試みよ。

ケンは、一度屋敷に戻り、この国の情報を…。

私は、カミルと、囚われの姫君の元へ向かうよ。」


従者2人に、軽く指示し、カミルに向き直る。




「わかったよ。カミル。では、作戦会議といこうか…」





マリアの囚われている、モジギア国の城まで、1日半ほど、離れた場所にある村に、宿を取り、作戦会議の場所とした。


ここに来るのに、マリアが、連れ去られてから、二週間が、過ぎていた。


「オーキッドは、そろそろ上手く、潜入できたかなぁ〜。」


カミルは、アレクシオスの机の前で、本を片付けていた。

アレクシオスの呟きに、カミルは、思う…


『オーキッドって、無愛想て、ニコリともしなくて、無口で、目に、布を巻いてた人だよな…。


あんなに無口で、潜入とかできるのかな…。』




思っていた事が、顔に出ていたのか、アレクシオスが、クスクス笑いながら、


「心配はいらないよ。あれで、実は、仕事になるとまるで、別人のようになるんだ。

今頃は、その場に、必要とされているで、あろう人を演出しているよ。」


楽しそうに、そうカミルに、言い聞かせた。




カミルは、約束通り、奴隷になるといい。

アレクシオスの身の回りの世話を担当していた。


アレクシオスは、奴隷とする気は、なかったが、本人の気が、済めばと、いいようにさせていた。


カミルへの対応は、マリアを助けてから、本人達の意思を尊重する形にしたいと、思っているのだが…


まあ、今、それを言う必要もない。


カミルは、焼き払われた村から、

マリアが、よく使っていた髪飾りと、ユーリには、院長が、していたらしい、クロスの首飾り、リリスのお気に入りの、おもちゃらしき物を焼けあとから、見つけ持って来ていた。

自分は、荷物になるから、何もいらないが、せめて彼女達が、喜ぶ物を持って行きたい…と、アレクシオスに、お願いしたのだ。


それぞれ、焼け焦げてしまっているが、拭けば、まだ見れる物に、なるかもしれない。

幼心に、アレクシオスの世話の後、せっせと磨いているのだ。

マリア達を助ける、手助けが、できたらいいが、カミルでは、どうしたらいいのか、囚われている場所すら、さっぱりわからないのだった。



ケンと、別れてから、一ヶ月半程で、ケンが、カミル達のいる村に、やってきた。


その間は、カミルとアレクシオスは村で、色々な人と会い、話しを聞いていた。


ケンが、持ち帰った、資料らしき物を鞄から大量に机に出し、アレクシオスは、一つ一つ目を通していた。


カミルに、手伝える事は、なさそうである。


ここ一ヶ月半の間に、村の人達とも顔見知りになり、賢く可愛いカミルは、ちょとした人気者だった。


何もする事がないカミルは、邪魔しないように、宿の外へ行き、村のすぐ近くにある、草原に行った。


ハーブや、薬草、山菜を探す。


カゴに積み、村まで、持ち帰り、優しい野菜屋の店主のおばさんに頼み、店の端で摘んできた、ハーブなどを売らせてもらう。


驚いた事に、薬草が、思いのほか売れた。


店が、閉まると同時に、飲み物に出来るハーブと残った薬草を店の店主に、渡して、場所代がわりにした。

優しい店主には、いらないと、断られたが、また、明日も場所を貸して欲しいと、お願いし、ハーブと薬草を受け取ってもらえた。


夕食前に、帰ると、アレクシオスが、ぐったり疲れた表情をしていた。

カミルは、摘んできたハーブで、疲れが、取れる効果の高いものを煎じて、渡す事にした。



煎じる時に、マリアが、毎朝、歌っていた歌を口ずさむ。


特に何も考えず、歌う。


記憶力のいいカミルは、毎日聴いていた歌を音程も歌詞もリズムも間違えず、歌いあげられた。


カミルにとっては、別に、特に、何かあるわけでも、何もなく、ただ、産まれ育った環境で、聞き慣れた、歌を歌ったに、過ぎなかった。


出来上がったハーブを


「あの、お疲れの様なんで、

よければこれ…

蜂蜜とか無いので、あまり、美味しくは、無いかもしれませんが、疲れが、少し取れるのでは、ないかと…。

マリアが良く、作っていた物なんです。」


そういいなが、アレクシオスと、ケンに、カップを差し出した。


アレクシオスとケンは、顔を見合わせた。


『幼い子に気を使わせてしまった…。』


そんな思いで、苦笑いを浮かべながら、カップを口に、運んだ。


飲むと、なんだか、体が、軽くなる様な感覚がした。

アレクシオスは、ケンをみる。


ケンも、目を丸くしながら、カップを見つめている。


「カミルこれは、お前が作ったのか?」


アレクシオスは、カミルに、確認する。


「え。あっうん。そんなに、不味かったかな。

ごめんなさい。」


2人の顔をみて、勘違いをしたカミルは、項垂れて謝った。



「いや、不味くはないよ。

独特の味だが…。

それ以前に、これを飲んだら、体が軽くなった。

これはハーブのせいなのか?」


アレクシオスの質問に、不味かった訳ではない事に、安堵した、カミルが答えた。



「そうだと思うよ⁈

だってそう言う飲み物だから…」


カミルは、胸を張って答えた。


「では、明日もまた作ってくれるか⁈」


アレクシオスは、カミルに、そう頼んだ。

カミルは、任せてとばかりに、胸を叩いた。




翌朝、昨日と同じ様に、草原に、出かけ、ハーブや薬草を摘み、野菜屋さんで、1日売った。

残りを店主に、渡す。だが今日は、ハーブを少し多めに、手元に残した。


そして、帰ると、ハーブを煎じた。

今日は、少し疲れたため、無言で、黙々と作った。


昨日と同じ様に、アレクシオスとケンに、持って行った。


それを飲んだ2人は、首を傾げた。

昨日の様な、爽快感な感じを何も、感じなかったからだ。


「今日は、ハーブを変えたの?」


ケンが、カミルに聞くが、カミルは、首を振り否定した。


「昨日と、何か、作り方を変えたか?」


アレクシオスも聞くが、カミルは、首を傾げる。

カミルは、同じに作った、つもりだからだ。



「まあ、いい。今日も、ありがとう。明日も頼むよ。」


アレクシオスは、困惑しないように、カミルに、笑いかけた。


カミルは、何が、違うのかわからず、首を傾げたまま、自分に、与えられた部屋のベッドへと向かった。



カミルが歌っていた歌は、聖水を造るために毎日マリアが歌っていた歌だった。


あの歌には、さほど、マリアほどの、聖属性の魔力は、必要なく、正確な音程、歌詞、リズム、癒しの魔力さえあれば、いいものであったのだ。


マリアが、作った聖水を100とするなら、カミルが作ったものは、80位の効果の物となるくらいの、効果が、出ていたのだ。


癒しの力は、さほど、珍しい魔法では無く、たまに使える人は、いる程度の生活魔法だ。

癒せるのも、ちょっとした、傷など位だ。


使い方を習っておらず、使い方を知らない人の方が、多い力で、カミルには、使い方のわからない、その力が、あったのだった。



マリアが、毎日、水で作っていた聖水が、カミルは、知らないうちに、歌という魔法の発動方法を習得していた。

そして、ハーブ水を歌って作った。だから、ハーブの効果と、相まって、何となくの効果が、体感できたのだ。


そんな事を知らない三人が、この後、カミルの癒しの力を発動したのが、優れた記憶力からくる、歌の効果だと、気が付くのは、もう少し先だ。







クーデターを起こせそうな人物をピックアップし、作戦を立て、お膳立てをし、舞台を整えてやった。


その代わり、我々が、救い出す女性を追わないとの、約束付きだ。


オーキッドからの報告を受けて、下見に、マリアが、囚われている部屋に、窓から訪れた。


闇に紛れるのと、正体を隠す為に、全身を黒い布で、覆う。


窓から、目が合ったマリアは、それは、それは、美しい娘だった。

柄にもなく、目が合い固まってしまった…。



正気に戻ったのは、マリアが、抱きしめていた少女が、悲鳴をあげた時だった…


慌てて、少女の口を塞ぐ…が、声がしたと、侍女が、ドアをノックした…




少女の口を塞いだ手と、反対の手で、マリアの口も塞ごうと思った時、

マリアが、得体の知れない、自分を庇った事にびっくりした。


『マリアは、賢く冷静だな。この状況で、事を荒だて無いようにと努めている。少女達と自分をできるだけ、危険にさらさないように、している。』


マリアと会話しながら、彼女を分析する。


『頭から、信じてもらえないのは、解っていたが、カミルを保護していて、正確だったな…』


彼女の警戒を解く為、彼女を見つめながら、彼の名前をだした。

「小さなナイト、カミルからの、依頼でね。」


読んで下さりありがとうございます。

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