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窓からの訪問者


ユーリの口を塞いだままの人影と、目線が合い、固まっていると、



コンコンと、扉をノックする音がした。



「失礼します。何やら悲鳴の様な、お声が、聞こえ参りましたが、大丈夫でしょうか?」


遠慮がちに、扉越しに、侍女の声がした。



『 ここで、助けを求めたら、ユーリを危険に、さらす事になるかもしれない。


あれだけ早く動けるんだから、私達を殺す気なら、既に、殺されているだろう。それなら、何かあって、また、誰かが、殺されるより…』




マリアはとっさに嘘をついた。


「騒がせて、ごめんなさい。

リリスがベッドから落ちそうになったから、慌ててしまったの。

落ちなかったし、そのまま寝ているから、私も、これから寝ようと思います。」


そう扉越しに、声をかければ、侍女は、左様でしたか。おやすみなさいませと、扉の前から、居なくなった。



部屋には、ベッドでスヤスヤ寝ているリリス。

窓からの訪問者に、口をふさがれているユーリ、そして、ユーリを抱きしめている、マリアが居た。


「ユーリは、もう叫びません。その手を離して下さい。」

と、マリアはユーリに、目配せしながら、窓からの訪問者に話しかけた。



ユーリは、私の言葉にうなづいている。


「それと、もう一つ、この部屋には、魔法を感知する物が、あるそうですから、見つかりたく無ければ、魔法の類いは、控えて下さい。」


何か魔法を感知されて、誰か来て、騒ぎになったり、私が、力を使ったと勘違いされ、また誰か殺されたりしたら、たまらない。


とりあえず、得体の知れない訪問者には、騒ぎを起こして欲しくないのだ。


『まずは、距離をとらなければ…』

と、そう声をかけると、ユーリの頷きを確認したあと、すんなりと訪問者は手を離した。


すぐにユーリを自分の後ろに隠し、そのまま距離を取るように後退る。




「何の御用ですか?私達は、監禁されている身、何も差し上げれる物も、ございません。」


「差し上げる物ですか…」


窓からの訪問者が、呟いた。

低いが良く通る、男性の声だ。


「特に、何かを奪いに来たわけでは無いのですが、強いて言うならならば、あなたですかね…。

マリア、あなたを頂きに参りました。」



マリアは、青ざめた。

攫われれば、ユーリや、リリスを殺されてしまう。マリアが、さらに後退る…


そんな様子を知ってか知らずか、訪問者は続けた。


「小さなナイト、カミルの依頼でね。」




「カッカミル⁈…カミルは、無事なのですか⁈」


カミルは、孤児院で一緒に、暮らして居た、5歳の男の子だ。

村人が、皆殺されたから、カミルも一緒に、殺されたとばかり思っていた。



せっかく広げていた、訪問者との間合いを一気に、詰め寄りなかまら、カミルに、ついて尋ねた。


『よかった無事でいたのね…』


「君たちが、攫われた馬車を頑張って、追いかけていたそうだ。

もちろん馬車には、追いつかず。途中、誤って森に入り、迷子になり、仕事で通りかかった、俺たちに会った。

一緒に、村に帰ってきたら、村が焼かれていた。

その現状をみて、自分が、私の奴隷になるから、マリア、ユーリとリリスを助けてくれと、頼まれた。

なかなか賢い、勇敢な子だ。

私の部下にもらうことにした。その為には、君たちを助けるのが、条件だから、助けてもいいだろか⁈」


訪問者は、そう聞いてきた。


『なっ。そんな身売りの様な真似をして…でも…』


「こんな危険を犯してまで、助ける価値が、カミルをはじめ、私達孤児に、あるとは思えませんが…」


もちろん命の価値が、違うなんて、思いたくはないが、ここは、平和な日本ではない。


王から、監禁状態の私達を助けるリスクが、孤児の命と同等とは、考えにくい。

親切な皮を被った、悪い奴なんていくらでもいる。

用心深く問うと、訪問者は、


「まあ、カミルの依頼は、ついでだ。


本当の目的は、君にある人を治して欲しいからだ。


その人が治れば、君たちは自由だ。

カミルは、情報提供者として褒美もでる。私の部下になるかどうかは、そのあと本人が決めたらいい。

まあ、君たちは、今の様な監禁生活からは解放される。」


その言葉にゆみは考える。

『この人は…

私が、治癒力がある事を知っている…なぜ⁈

でも、この人にとって、私達の価値は、奴隷だけでは、無いという事…』


「ですが、自由になり、また王に、狙われて沢山の人が死ぬのは、みたくありません。

それに、逃亡生活となれば、自由ではありません。


身寄りの無い私達には、村が無い今、行く所も、住む所も、頼れる人もいません。それでは、今より危険になってしまいます。」


ゆみは俯向きながら、そう呟いた。


「なるほど、その通りだな。

だが、この国は、近いうちに内部から、崩れるから、王の追っては、心配いらない。

住む所がないなら、君に治してもらいたい人が、きっと褒美をくれるから、頼めばいい。

それに、カミルに、出る褒美で、4人くらい不自由なく暮らせると思うが…」


ゆみ…マリアの目が点になる。


『褒美で4人が、不自由なく、暮らせるって…

いったい、どれほどなのか。


そんな褒美が、出せるほどの、尊い人を救えと、そう言われていると、言うことか…』そう悟った。



話しが、上手く行き過ぎである。


権利や、財力のある人なんだろう、口約束を信じて、また、今と同じ生活をさせられる、可能性の方が、高い。


『なら、まだレイがいる、今の方が、楽しい…

私達が逃げたら、侍女さん達や、レイは、処罰されるかもしれない…』



簡単に、答えが出ずに、無言で俯く




「まあ、今すぐ助け出せる、わけではないから、もう少し待っていてもらわないとならないが…


助け出すなら、安全に、助け出すから安心していい。今日は、間違えない様に、顔を見に、来ただけだしね…」


そう言うと、黒づくめの訪問者は、来た時と同じように、窓から外に、出て行った。



『この国が内部から崩れる?

追っては来ない?本当なら、直ぐにでも、2人を連れて逃げてしまいたい…

だが、残された侍女さんやレイはどうなるのだろう…


そもそも国が崩れるとは、どう言う、意味なんだろう、もっと、ちゃんと、レイの政治の授業覚えていたらわかったのだろうか…』


そう思いながら、ユーリを見つめた。

ユーリも不安気な瞳で、こちらを見ていた…。


『これから、どうなるんだろう…。』


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