許婚
また1ヶ月ほど空いてしまいました。すみません・・・
今回遅れたのは色々理由が有るのですが、台風21号により親戚一同被害をこうむった為でして
自分も5日間ほど停電と断水が続き一杯一杯で、事後処理にも追われてました。
5日間の停電と断水がこんなにきついとは思いもよりませんでした。
その間に北海道で大規模な地震が有った事すら数日間知りませんでした。
今現在も北海道では停電や断水が続いているようです。
被災者の皆さんが一日も早い復興を心より願っております。
部屋の中は沈黙の帳が下りたかのように静寂が包んでいた。
その静寂を破るかのようにパンと拍手を1つ叩いたのはダニエルだった。
「さて、暗い話はこの辺にしようか。
これからの事を伝えていくので、気を引き締めて聞いておいて欲しい。」
ダニエルがそこから語ったのは獣人世界でのルールだった。
まず、ロッカーで手に入れたカードについて。
これには写真と名前、それから何の獣人かが書いてあるが、政府の装置を使えば更に詳しい様々な内容が表示される仕組みになっている。
その情報の中で重要なのが現在の職業、獣人ランク、通貨、国への貢献度、そして”遺伝子取得情報”だ。
職業や通貨は判る。獣人ランクもランクと言うからには位なのだろう。
だが、国への貢献度と遺伝子取得情報というのがいまいち判らなかった。
その説明がこうだ。
「この国への貢献度と言うものだが、これは国から出された指令をこなすとその貢献度に応じてポイントになる。
この指令とは大きく分けて3つ、個・組・国とある個とは個人で受ける指令で、組とは組織に下る指令、そして国はそのまま国全体に下る指令だ。
これはそのままポイントの大きさにもなっている。ただ、国レベルの指令と言うのは10年に1度位しか下される事は無いと思うがね。
それだけに配布されるポイントも膨大だがね。」
要は政府の依頼事務局で出されている個人用の依頼を受けて達成すればポイントが支給され獣人ランクが上がるというものだ。
個人での達成ポイントが一定以上に達すれば組織の依頼を指名されるようになる。
その際、必ずチーム全員で受けなければならず1人2人だけがランクを上げた状態だとかなり苦労するそうだ。
しかも、このチームというのは卒業した際に同じ学年だった者全員と強制的に組まされる仕組みであり、今回であればオレ達第1373期生の12名がチームになるという事。
国レベルの依頼というのは事務局に出されるわけではないが獣人全員が強制参加という物だ。
ランクに関係なく全員が参加しなければならず、先の説明であったチームが1つの部隊として動かなければいけない。
更に、国レベルの依頼では死人や脱落者が出る事もあるという事らしい。
そして、遺伝子取得情報とはその名の通り、遺伝子を取得するのだが・・・
色々な手段で相手から多量の遺伝子情報を取得するとそれを寝ている間に自分の遺伝子へフィードバックする仕組みらしい。
髪の毛1本でどうにかなる物でもなく、腕1本分位無いと自分にフィードバックする事が出来ないらしい。
そして、遺伝子情報をフィードバックする事により力のキャパシティーが増え、新たな能力を得る事が出来るらしい。
その取得方法だが、相手を倒すだけでなく罠に嵌めたり性交する事によっても取得する事が可能なのだそうだ。
腕一本捥ぎ取られたとしても獣人は数日で癒す事が可能らしいから心配は要らないとの事。
てか、獣人の治癒力ハンパないね。
腕1本千切られて生えてくるとか・・・確かにそれはもう人間じゃない。
そして、最後にとダニエルは続けた。
「最後に、君達は夢を叶えたのではなく、夢の入り口だと言う認識を持って欲しい。
君達が”人”であった時に夢見た未来。
それは、獣人になったからと言ってそれが叶ったわけではない。
先程も言ったが上のステージへ上がる為の基礎が出来ただけであり、まだまだ”人”なのだよ。
これからそれぞれ厳しい訓練や研究が待っている。
それをここに居る12人で乗り越えていって欲しい。
同じ1373期生として協力し合える所は頼るのだ。
全てを1人で賄う事は出来はしないのだから。
獣人と言えど1人の力は弱い物なのだよ。」
何処か遠く、懐かしむような表情をしたダニエルはそう締めくくった。
ダニエルが言い終わると同時にテーブルのオレ達の前の部分が開き小さな箱が出てきた。
更にその箱が開くと中には少し大きめのバングルのような物が入っていた。
皆を見回していたダニエルが言った。
「そのバングルには色々な機能がある。
そして、そのバングルを嵌めた時から獣人生活の始まりでもある。
さあ、バングルを嵌めたまえ。」
そう言われて、皆が躊躇無くバングルを腕へと嵌めていく。
俺もバングルを腕へ嵌めるとバングルは腕時計のようにフィットし絞まった。
すると文字盤らしき部分に'card set'と文字が流れ横の部分にスリットが現れた。
「そこに自分のカードを入れると認証される。
そのバングルは自分の遺伝子とカード情報が合わさって始めて機能する物だ。
他人のカードを入れても動かないから気をつけるんだぞ。」
言われてカードを挿入すると文字が浮かび上がった。
周りを見ると皆も文字が浮かび上がっているようだが、周りからは見えないようになっているのか光が見えるだけで読めなかった。
すぐ隣にいるナツキやケイの物ですら見えなかった。
そして自分の文字盤を見る。
ガイ、ようこそ獣人世界へ
貴方の現在のステータスです。
名前 :ガイ
素体獣人 :カメレオン
職業 :---
獣人ランク:10級
ポイント :0p
貢献度 :0p
遺伝子取得:---
確認後文字をタップして下さい。
と表示されていた。
その空中に表示された文字を触ると文字が消えた。
そして、様々な項目があり電話の機能も付いてるらしく、タップしてみると同期メンバーの名前が表示された。
試しにケイの名前をタップするとケイが「うわっ!?」と言ってその後こっちを見た。
「もう!いきなり過ぎだよ!先に言ってよね、ブルッとして焦ったじゃないか。」
怒られた。
まぁ、いきなりだし怒るのは当たり前だよね。
なるほど、これでチームと連絡を取るわけね。
他にもいろいろ弄ってみた結果、色んな説明が載ってる事が判った。
更に色々と試そうと弄っていると後ろに圧を感じて即座に振り向いた。
そこにはダニエルが腕を組みオレとナツキの間に立っていた。
「他の者には関係の無い話だが、君達に聞きたい。
君達は奇しくも許婚同士だが婚約はどうするつもりかね?」
などと発言した。
一斉に静まり返るブリーフィングルーム内。
皆の視線がオレとナツキに集まる。
そして、
「「「エェエエェーーーーーーー!!!!!」」」
まぁ、当然そうなるわな。
皆とはこの1年一緒に訓練した仲だが別に言わなくて良い事だと思って言わなかった。
人はドーム内で生まれた際その適正によって許婚が政府によって決められる。
人口を増やす事を命題とされ20歳になるまでにいくつかの理由での婚約を破棄しなければ強制的に結婚させられるのだ。
そのいくつかというのが、
1、20歳までに別の相手を見つけお互い同意の上で婚約をしなおす。
その場合婚約を破棄された相手同士で婚約する事になる。
2、他者と性交をし、子供が出来てしまった場合。
この場合も破棄した婚約者同士が婚約しなおす。
3、不慮の事故などで相手が居なくなった場合。
再度政府が相手を選び直し婚約する事になる。
そして、獣人になった今なら判る。
3の居なくなった場合というのが獣人化して居なくなった場合を指すという事が。
ただ、今回のようにオレとナツキが許婚でそのどちらかが獣人になった事により普通なら残された方が違う相手と婚約しなおすのだが両方が獣人化してしまっている。
そうなった場合、許婚という制度自体無意味になりそうなものだが・・・
「ナツキ姉!そのボンクラと許婚だったって本当でしゅか!?」
少し離れた所から大声で怒っているのはナツキを姉と慕いいつもべったりな上、俺を目の敵にしていたランだ。
まぁ、びっくりしすぎて盛大に噛んでるのはご愛嬌という奴だな。
「ククッ、一緒の扉から出てきたから、なんかあるんだとは思ったがそんな理由があったとはな。」
笑いを噛殺すように顔を歪めるのは、ちょいとガラの悪いウザンだ。
根は良い奴なのだが、いつもワルぶって虚勢を張っている。
ただ、根が良い奴だけにワルぶる所をちゃんと選んでるのが憎めない奴である。
そんな二人の声を無視してオレはダニエルに問いかけた。
「普通、こういう場合はどうなるんですかね?」
「ふむ、前例が無いとは言えないが、今までのパターンだと婚約を破棄する者、そのまま結婚する者、両方のパターンがある。
ただ、獣人化した事により20歳までという期限が無くなるので自由に考えるといい。」
ダニエル曰く人間の1番のピーク時に獣人化する事によってピーク時の体が維持される為20歳という枷がなくなるそうだ。
「あ~・・・ナツキ・・・さん?どうします?破棄しとく?」
なぜか敬語になりつつ恐る恐るナツキに問いかけてみた。
「へえ・・・貴方に決定権が有ると思っているの?」
「あ、ハイ、お任せします。いつでも言って下さい。」
瞬殺された。
てか、こんなの万が一このまま結婚しちゃったら一生下僕扱いだよな?
むしろ強制的に破棄させてほしい。
そんな事を思っていたら更にナツキは爆弾を投下した。
「さっきは裸の私を舐める様に見た上で押し倒して来たものね。
そんな私に他に嫁げる所ってあるのかしら?」
「「「「え!?」」」」
はい終わった。
短い獣人生終了のお知らせですよ。と思っていたらランが突っかける様に俺へと跳躍してくる。
その目は完全に猫科のそれで爪を15cmほどまで伸ばして振りかぶっている。
流石に切られるのはヤバイ。本当に色々終了してしまう。
椅子の背もたれを基点とする様にバク転して回避するとギャンッ!と硬質な音が立った。
今まで俺が座って居た所にランが立ちこちらを睨みつける。
仕方なくオレも構えると、ランの頭にポンッとナツキが手を置いた。
「大丈夫よラン、別にどうこうされたって訳じゃないから。
少し冗談が効き過ぎたみたいね。ごめんなさい。さあ、席に戻って。」
「ナツキ姉・・・」
頭の上に手を置かれそう宥められたランは椅子を降りて渋々自分の席へ戻った。
ランが椅子へ戻ったのを見計らってダニエルがパンパンと手を叩いた。
「さて、余計な事を聞いて時間を潰してしまったな。
最後に、これから獣人社会へ出るのだが、忠告をしよう。
このセンターを出た瞬間から君達には弱肉強食の世界が待っている。
そんな君達には拠点となる宿舎を用意させて貰っている。
場所は慣れる意味も込めてバングル内にあるとだけ伝えて置こうか。
これからは気を抜かず精一杯生きてくれたまえ。それでは解散!」
次こそは早く書きたいですね。
1話4000~5000字でという自分縛りがあるのでなかなか思うようには進みませんが
気長に応援よろしくお願いします。