真実
間が開いてスイマセン(==;
もっとペースを速める予定だったのですがリアルが思うように行かず間が開いてしまいました。
※今回ちょっとグロ表現が入ってるので耐性のない方はご注意ください。
でも飛ばしてしまうとこれからの話判り難くなるかもなぁ・・・
服装を整えたオレ達は改めて辺りを見回す。
SF映画の世界に出てくるような外観を、これまた椅子なのか判らない物に腰掛け溜息をついた。
「流石にこれは技術力が違いすぎるな。」
「そうね、授業で技術力が高いという事を聞いてはいたけれどこれは・・・」
「うん、これは数世代先というより成り立ちからして違うような気がするよ。」
オレのため息と共に出た呟きを肯定するように2人が続いた。
辺り一面、鉄のような質感の部屋。
奥には試験管が並びバイオグラフを表示していたであろうモニター。
ロッカーにしてもコインロッカーの様な物では無く重厚感たっぷりのしっかりした物だ。
「まぁ、ここであれこれ考えていても仕方ない。そろそろ次へ移動するか。」
「そうね、ここに居るだけじゃ何も進まないでしょうしね。」
「他の皆も待ってるだろうし早く行こうよ!」
軽い状況把握を済ませたオレ達はロッカールームにある扉の前に立つ。
その扉も他と同じくSF映画に出てきそうな物だ。
普段なら取っ手があるであろう場所に取っ手は無くセンサーの様な物が付いており、手を翳すと同時に音も無く静かに扉が開いた。
扉の先は大き目の鉄で出来た机が1つ置かれており、そこには別々の部屋から出て来たであろう9名が既に着席していた。
そして、進学時と同じように机の前にはダニエル広報大臣が腕を組みにこやかに立ち。
そのダニエルは、オレ達の顔を見ると笑みを深め手で席へを誘導する。
オレ達3人は空いている席に着席するとダニエルは静かに口を開いた。
「さて、これで全員そろったな。
おめでとう諸君!これで晴れて君達は獣人となった訳だが・・・どうかね?1度死んだ感想は。」
ダニエルが一番前に座っていた姿勢の良いランスへと視線を向け質問した。
ランスは正義感の強く曲がった事が嫌いな奴だが、自分の正義を押し付けるのでは無くとことん話し合って分かり合おうと努力するタイプの奴だった。
「死んだ、という実感はありませんね。実際こうやって考えて話をしていますし。」
ダニエルは笑顔でウンウンと頷いている。そしてランスが話し終えるとそのままその隣にいる女性へ視線を向けた。
女性は笑顔を向けられると呆れたように手を挙げ発言する。
その女性というのはクラスの姉御的存在のフォルだ。
女生徒から色々相談されたりしていたようだし、クラス内で意見が対立した時にも中立を保ち、双方の矛盾を的確に指摘して不和を無くすよう尽力してくれていた。
何故か腕が4本になっているのが物凄く気になるが個人的な事なので後にしよう。
「私も死んだってのは実感がないね。ただ、今までTVなどで見ていた獣人と比べると思ったよりも人間的だねえ。」
それには他の皆も同じ事を思っていたのか、数名が頷いていた。
だがオレは、ナツキから受けた人間離れした暴力の数々を思い浮かべ首をかしげた。
だがそれと同時にTVで見ていた獣人同士の格闘技と比べると確かにそこまでのキレが無かったのも事実であった。
そんなオレ達の思いを見抜いたのかダニエルは声を上げて笑い始めた。
「ははは・・!確かに!そうだな。
授業ではそこまで深く触れていなかったが獣人化した君達には伝えた方がいいだろう。」
確かに授業では基礎訓練が主で、座学は在ると言っても獣人世界のしきたり的な事で、獣人自体の事はあまり深く触れていなかった。
獣人になる事を”死”と言う理由もそこに有るのだろうと皆がダニエルに注目する。
「さて、何から言ったものか・・・君達はミッシングリンクを知っているかな?」
(ミッシングリンク進化の過程で空白となっている部分、つまり人間がサルからの進化だとした場合、その間の化石が見つかっておらず、その境目の謎の事を指すのだったか・・・)
「実は宇宙人の仕業でね。」
なんだこれ?一気にきな臭くなってきたぞ?周りの皆も気を引き締めて聞いていたにも拘らず宇宙人という言葉に微妙な表情へ早変わりしている。
それを知ってか知らずかダニエルは表情を変えず淡々と説明を続ける。
「まあ、宇宙人というか高度生命体が、人間が発生する遥か以前からこの惑星で生命体の実験をしていたのだよ。
そして早い話、その失敗作が人間と言うわけだ。そして、その実験施設を放棄し隠蔽した後この惑星から去って行ったというわけだ。」
・・・ここからが本題だが、皆も知っている降臨戦争。この時にその眠っていた技術が掘り起こされた。
それを掘り起こしたのが現在最強の獣人であり、我等の頂に君臨する6人の王だ。
その技術こそが遺伝子を組み換える事によって失敗作である人間を真なる意味で補完する為のものなのだ。
それを扱ってよいとされるのは6人の王だけ。君達は王に選ばれた者達という事。
遺伝子レベルで変貌を遂げた君達は人間とは違う生物になっている。
つまり、君達はもう”人間”では無い。新たな種というわけだ。
ただ、”王”であっても”神”では無い。故に新たな遺伝子を作り出す事は出来ない。
今まで地球上に存在していたあらゆる生物の遺伝子を組み合わせ、君達と掛け合わす事によって1つ上のステージへ引っ張り上げているのだ。
・・・先程フォル君がTVなどで見た獣人と違うと感じたというのはそのせいなのだよ。
獣人に成る事によって筋力、生命力の上限は無くなった。
だが、そういった訓練をまだしていない君達は、今現在確かに人間的なのも事実だと思うよ。」
人間も怠惰に過ごせば鈍るだろ?とダニエルは締めくくった。
部屋が静寂に包まれる。皆今聞いた事を吟味しているのだろう。
確かに筋力面で言えばナツキから攻撃を食らった際にイヤと言うほど実感したし、
生命力の面でもあれだけの攻撃を食らって傷1つ負わなかった事から事実なのだろう。
だが、王様しか扱えない技術?そう思った時、隣で動く気配を感じ振り向くとナツキが手を挙げていた。
「ん?ナツキ君だったな。どうぞ?」
ダニエルは口角を上げると興味深そうにナツキを指名した。
ナツキは無表情のままスッと立ち上がる。しかし隣のオレには見えていた。
尻尾がピクッピクッと動いているのが。顔は無表情だが尻尾は正直なようだ。
「先程、王様しかこの技術は扱えないと仰られましたが、それはニライカナイの住人に伝えられている獣人の発生期限や、その後の顛末も全て”王様の計画の一環”と理解してよろしいのでしょうか?」
そう、オレ達が聞いていたのは「何時発生したかもどうやって発生したかも判らないが発生のさせ方が後から判った。」というものだ。
それが今の話では王自らが獣人であり、人を獣人にする事が可能なのは王だけだという事。
ならば最初の1人も王が獣人化させていなければ辻褄が合わない。
この部屋の皆もこの事実に思い当たっているのか理解の色を示している。
ダニエルはクツクツと笑いを堪えつつ肩を揺らしていた。そして更なる事実が突きつけられた。
「理解が早くて助かるよ。そう、皆が思っている通りこれは王のご意思なのだ。」
「では、何故こんな回りくどい事を?人間全員を獣人にすればよいのではないですか?そうすれば全員がニライカナイのドーム内で住む事が可能であり、このように住み分けを行わずとも良かったのではないでしょうか?」
「ふむ、その答えは君達も知っている伝承の中に答えがある。獣人と人間は共存を模索した時期があった。だがこれは失敗に終わった最悪な形でね。
君達に伝えられているのは「獣人が人間社会に溶け込もうとしたが失敗した」というものだろうが、事実は少し違ってね。
その当時獣人化していた者は王から「絶対人に危害を加えるな」と言われており忠実にその言を守っていた。
だが人と言うのは自分と違う姿の者を少なからず差別する。そして、相手が強い力を持っていようとも自分が危害を加えられないと判ると更に差別がエスカレートしていくのだよ。
事実、その者は不当な暴力を集団で受け、それでも王の言を守っていた。獣人は生命力、肉体強度が強いからね、多少の暴力ではびくともしない。
そういう事が数ヶ月続いてもその獣人は耐えた。耐える事が出来た。それは多少なりとも獣人を庇い共存しようとする者も居たからだった。」
なるほど、だから人間とは・・・いや違う種とは共存できないと考えたのか。
今でこそ全てを監視、管理されそういう差別があった場合速やかに処理されるシステムになっているが、その当時はまだそこまでシステムが組みあがっていなかったのか。
いや、そういう事が有ったからこそ今のシステムが有るのか。
チラリと隣で立っているナツキを見ると拳を握り締めている。
更にダニエルの話は続く。
「そうやって不当な差別や暴力を受け続けた獣人の住処に、ある日投げ込まれた物がある。
その獣人を庇っていた者達の1人の少女の亡骸だ。
犯され続け暴行を受けたその顔は殆ど原型を留めていなかったそうだ。
そこまで王の言を守っていた獣人もそれには激怒し、暴行をした集団全員を文字通り血祭りに上げた。
犯人達は全ての爪を剥がされ手足全ての骨を折られた後殺されたらしく、絶望の表情を浮かべていたそうだ。
この事件により人との共存というプランが潰れたのだ。
そして先程言っていた人間全員を獣人化させるという事だが、これは不可能なのだよ。
現在、獣人を作るには人を遺伝子組み換える事でしか生み出せない。
性交をする事は出来るが、子を成したと言う例をここ数百年聞いた事が無い。
故に人を0にする事はできないのだよ。
人間達を完全管理し旧時代の環境の中で育て、獣人を理解し獣人を目指す物だけを選抜する。
そんな人間のみを獣人化する為だけにニライカナイのドームが存在するのだよ。」
余りにショッキングな結末に一同の表情が凍る。
ニライカナイという箱の中でぬくぬくと育った人間でもそこまで非常になれるものなのかと悔しさがこみ上げてきた。
立っていた筈のナツキも、いつの間にか着席し拳を握り締め机の上に置いている。
表情は下を向いている為見えないが尻尾は毛を逆立て3倍ほどに膨らんでいる。言うまでも無く激怒だ。
そして、そんなナツキが搾り出すように震えた声で呟いた。
「それは、人間を家畜として扱っている。という認識でよろしいでしょうか。」
「言い方は悪いがあながち間違いではないな。」
ダニエルは冷静に答えた。
次はもうちょっと早めにUPしたいですね。(希望)