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プロローグ

お久しぶり過ぎますね。

青風です。

新作を書こう書こうと思っていたのですがなかなか手をつけられず

気づけばかなり時が流れてしまいました。

今回は結構本気で更新していく予定なので気長に見守ってやってください。

戦争があった。

全ての国を巻き込んで大きくなったその戦争は、神々の逆鱗に触れた。

そして、怒れる神々は降臨し、元凶である全ての国の上層部を文字通り消した。

それが後に呼ばれる「降臨戦争」


何百と有った国は、今や6つの王制の国に別れ、人はドームと呼ばれる一定環境が保たれた場所で暮らしていた。

ドームの中は環境が整えられ何不自由無く暮らす事が出来る場所であった。

そして人々の生き残りはそのドームを少しずつ広げながら生活をしていた。

それから数百年。そのドームの中でしか生活出来ずに居た人の中にある変化が訪れた。

それは人の獣人化。

様々な動物の特徴を持つ人型の存在。

年齢、性別、人種を問わず発現した獣人は瞬く間に世界へと広がった。

広がると共に、獣人は人々の暮らしに溶け込もうとした。


しかし、強靭な肉体を持ち、驚異的な治癒力で傷を癒し、人より長く生きる。

そんな獣人を人々が恐れる様になるまで、それほどの時は必要としなかった。

「獣人は世界から隔離されるべき」と言う声を受け

獣人化した者は国が保護すると共に人間が住むドームの外側に隔離される事となった。


しかし同時に、その強さや見た目に憧れる者も現れ、獣人は隔離されるも、人々の興味を引く物の1つに

数えられるようになっていった。

獣人同士スポーツは見る者を魅了し、格闘技は人同士より白熱した。

そんな中、獣人化する条件が発見され再び世界を驚愕させた。

だが、その情報は国に管理され一般人には公表されなかった。


ここ、ニライカナイでは、それと時を同じくして設立された国立先進超高等学校が設立された。

これは国に管理された全ての最先端が集う学校である。

医学、科学、帝王学、スポーツなどあらゆる科目が国のトップに位置する高等学校だ。

1つの専攻に付き10人という狭き門を潜り抜け、卒業出来ればその者達には栄光への道が約束されたも同然だった。

それは、卒業する頃には大手と言われる会社からの勧誘が相次ぎエリートコースを歩む事が約束されるからだ。

そんな学校が設立されれば、当然国民はこの学校を受験する為、日々切磋琢磨する事になる。

だが、そんなエリート学校であっても、受かった後に待ち受ける厳しい授業に付いて行けず、失踪する者が少数だが居た。

ただ、その失踪は決まって3年の卒業式間際に失踪するという不可解なものだ。


事実その失踪というのは、表向きに公表されている言い訳であり、実際は表向き存在しないはずの4年生へ進学している者達の事である。

これは公然の秘密と化していた。

何故ならその4年生というのが何処でどんな授業を受けているのかが不明であり調べる事も出来ないからだ。

その理由は至極簡単だ。

王制を取る国で、国が経営している学園を調査するなど、国に属する機関が出来るはずも無かった為である。


更にちまたでは、こんな噂が囁かれていた。

「4年生に進級した者は獣人化する」

その噂は獣人化した者達がメディアで活躍する度に同級生だったとされる者達が噂をしていたからである。

しかし、人は獣人と接触を持てない事から事実の確かめようが無く、獣人化するという事だけが実しやかに囁かれるだけだった。

ゆえに獣人に憧れる者もまた国立を目指すのであった。


そして、今年表向き無いはずの4年に進学する者達が獣人に担がれて1つの部屋に纏められた。

その姿は宇宙服の様に分厚い生地の囚人服である。

手足は一切動かせないよう拘束されており、ヘルメットの様な物を被せられて視力と聴覚を奪われた状態の為だ。

男か女かも判らないその状態のまま部屋の中央に円になるよう置かれた椅子に座らされて行く。

椅子に座らされると同時に椅子と服を固定される。

さながら今から死刑執行を言い渡される囚人の様でもあった。


運んできた獣人達が出て行くと入れ替わるように5人の人(?)が入ってきて座らされた者達のヘルメットを取って行く。

ヘルメットを外す作業の音だけが部屋の中に響く。そこは異様な状況を作り上げていた。

普通なら、手足を拘束された状況で見知らぬ場所に連れて来られた者はそれから逃れる為に暴れたり大声を上げたりするのだがヘルメットを取られた者達は何を喚くでもなく回りを観察し状況を伺っている。

そして、部屋の中央に立つ1人の熊の獣人で視線を固定していた。

そんな状況の中、部屋の中央で仁王立ちしている獣人の男性は全員がヘルメットを取り終えるまで待っている。

ヘルメットを取り終えるとその者達は部屋の端へ行き後ろ手に事の成り行きを見守っている。

5人全員が部屋の端へ行くのを確認して中央に立つ熊の獣人は1つ頷いてから口を開いた。


「ふむ、今年の適合者はずいぶんと大人しい。状況把握を最優先とは・・・なかなか見所がありそうじゃないか?」


誰に問いかけるでもない疑問、その言葉を聞いた拘束されている者達の中には、驚きの表情を浮かべる物が数名居た。

何故ならその声はTVで流れるとある人物に酷似していたのだから。

そして、1人の拘束された女性がその人物に声を上げた。


「状況は大体把握できました。ここに拉致されている私達は失踪した。という事でよろしいのですね?ダニエル広報大臣」


ダニエル・フリオーニ男爵という爵位を持つ1人なのだが彼は国の広報大臣も兼任している人物だ。

広報大臣、つまりこの国の広報を行っている者達の最高責任者と言う事である。

その女性の言葉に小波のような動揺の声を発するが、そのどよめきを気にする事無く問われた本人はくつくつと笑いを噛み締めた後、その女性に声をかけた。


「なるほどなるほど・・・声でバレたか。本当に状況把握が優秀だな君は。

他にも何人か気づいている者が居たようだが、この状況で私に声を掛けられるとは、大した胆力だ。

・・・そして、質問には答えねばな。君達は世間では失踪した。という事になっている。」

「「「おっしゃーーーー!!」」」「「「やった~~~~~!!!」」」


大臣が答えを口にした瞬間、部屋中から大歓声が上がった。

拘束され動けない状態で最大限の喜びを表す者達のその姿は正に異様だ。

初対面が殆どのこの部屋の中で、お互い拘束されたまま喜び合う者までいる。

中央に立つ大臣はそんな異様な光景を目にしながらも笑顔で頷いている。

そして声を出せるだけ出し、落ち着きを取り戻し始めた者達が出始めると、ダニエルはその熊手を前に突き出した。

すると声はピタリと止み一気に最初の沈黙の状態へと戻った。

静まった部屋を見回す事無くダニエルは続けた。


「但し、これから1年間で君達を獣人にするわけだがそれに「耐えられれば」の話だよ。

さて、時間も無い事だし今から自己紹介でもして貰おうか。」


そう言ってダニエルは目の前に座らされる男子の前へゆっくりと移動する。

男子の前に立つと同時にダニエルが笑う。

熊が歯をむき出しにして笑う姿はある意味凶悪だ。

目の前の男子は愛想笑いを浮かべつつ冷や汗を流す。

そんな男子に向かってダニエルは呟いた。


「もう立てるだろ?自己紹介がてら名前を言ってくれるかい?」


絶やさぬ笑みでそう言われた男子は不思議そうな顔をしながら体を動かすとハラハラと纏っていた囚人服が床に落ちた。

部屋に居る皆が息を飲む。それは大臣の囚人服を切る動作が見えなかったからだ。

何時切ったのかまるで判らず、その力量の違いをまざまざと見せ付けられる事になった。


◆◆


ダニエル男爵が笑顔でオレの前に立つと同時に「もう立てるよ?自己紹介がてら名前を言ってくれるかい?」と声を掛けてくる。

この身動きの一切取れない囚人服から開放してくれるのかと思ったが何もせずそんな言葉を投げかけられ

(この拘束されてる状態でどうやって立つのか)

と内心思ったが、さっきより僅かに体を縛る圧が無くなっている事に気づき、立とうとしてみると着せられていた囚人服だけが床に落ちた。

内心かなり驚いたが愛想笑いを浮かべながら立つ。(これが獣人か、面白い!)

獣人に対するワクワクとドキドキを背中の冷や汗が物語っている。

ダニエル大臣はオレをエスコートするように皆の中央へ誘った。

周りを見回し、見知った顔もいくつかある。こちらが一方的に知っているだけだと思うが。

皆の視線を受けつつ、皆を見回すように俺自分の名を口にした。


「オレの名はガイだ。よろしく頼む。」


こうしてオレ達の4年生は拉致と共に始まった。

それから8ヶ月、現在オレ達は12人はドームの外側で生活している。

最初の半年はドームの外の気候や環境に順応させられる為のトレーニングが基本だった。

獣人はドームの外側に住んでいる事から、まずはこの環境に慣れないと生きて行けないらしい。

そして環境に慣れてくると、オレ達12人は毎日訓練という名の地獄を見ていた。

獣人とはスポーツや格闘技などのエンターテイメントを担う者だとばかり思っていたが、それはごく一部だたようだ。

座学の時間に教えられる事実はそれまでドーム内で教えられた常識を悉く覆されてばりだった。


そして、それを知った時点でその秘密を抱えて死ぬか秘密の一部になるかしかなかった。

それを聞いた皆は最初こそ微妙な顔をしたが、流石にそういう者達だけが集められたというべきか秘密の一部になる事を選んだ。

オレは元々獣人になる事を目標としていたので喜んで秘密の一部でも何でもなるつもりだった。

今は、体力を付ける為、照りつける太陽の元ランニングに勤しんでいる。

それは、ドーム内の空調された環境とは違い容赦が無く、気温が50℃を超える事もある。


「今日も暑いね、ガイ。と言っても最初よりだいぶ慣れたけどね。」

「そだな、もう残り4ヶ月だからな。お前はもう何の獣人になりたいか希望だしたのか?」


オレの横を同じペースで走るのは外見が中性的な中学生位顔立ちをしたショタであるケイだ。

そんなショタなケイが爽やかな汗を流しながらが話しかけてくる。

ケイは3年までの間に、ほぼ全ての男子から嫌われていた。

その訳は見ての通り、保護欲を誘うルックスから年上の女性から絶大な人気を誇り、女生徒の大多数から支持を受け、彼氏持ちや挙句学校外の人妻でも寝取ってしまうという男子からすれば最上位な警戒人物だったからだ。

オレの知り合いでも彼女を寝取られた奴が何人か居たが、オレには彼女なんて居なかったし女を取られる方が悪いと割り切っていたのでなんとも思わなかったが、何かと噂になっており顔は知っていた。

それがあの自己紹介した部屋に集められた際、居たのだから大いに驚いた。

俺が知っている事を知ってか知らずか、ケイは自己紹介後に何故かオレに話しかけてきた。

話してみるとそんなに悪い奴でもなく、自ら女目的でガツガツ動いているわけでも無い為、そこまで邪険にする事も出来ず、気づけば結構一緒にいる事が多かった。

そのショタな見かけによらずケイは結構体力が有ったらしく訓練開始時から獣人になる事を目的として鍛錬を怠らなかったオレに付いて来ていた。

そして、そんなショタなケイとのここ最近の話題といえば、先日提出させられた獣人希望シートである。


「ん~、一応希望はカッコいい鳥系がいいな~と思って。ほら、僕っぽいでしょ?」

「お前がカッコいい鳥はありえねぇわ。」

「なんで!ガイは酷いなあ」


そんな軽口を言い合いながら灼熱の太陽の下をランニングする。

そして、顔を知っていたというならもう1人、前を走るショートカットに釣り目の女性。

冷血の風紀委員長と呼ばれ、一部のファンから’様’付けで呼ばれていたナツキだ。

そして、あの場で唯一大臣に質問をした奴だ。

自己紹介が終わった後、先生に連れられ特別学生寮へ連れて行かれ、ラウンジにて皆で集まった。

その際に、オレが口を滑らせてしまい


「あの場でよく大臣に質問できたよなぁ~!流石冷血って言われるだけあるぜ。」


素直な感想を口走ってしまった。

言った瞬間、ラウンジ全ての時間が止まり、シーンと静まり返り凍りついた。

数秒だと思うが、オレの中では1時間以上にも感じられた静寂の後、ゆっくりとオレの方を見たナツキの笑顔が忘れられない。


「貴方、ガイ君だったかしら?これからはガイで良いわよね?同級生ですものね。

私は陰で冷血の風紀委員長と呼ばれていた事は知っていたけれど、直接言われたのは初めてなのよね。

今まで、陰で言わずに直接言ってくれればいいのに、と今まで思っていたんだけど、言われて見ればあれよね、不快だぞ?表出ろや!」


あの笑顔は忘れられない。すんごいキュンキュンした。これって初恋?のキュンキュンではなく、もういろんな所が縮み上がるキュンキュンだ。

ちなみにケイはオレの横で座っていたが笑顔を向けられた瞬間に逃げようとした。

まあ、手首を捕まえて逃げれないようにしていたが。


「ヤメテ!ボクヲマキコマナイデ!」


と、オレにだけ聞こえるように連呼しながら腕を振り解こうと暴れてたが逃がさなかった。

すぐさま謝って受け入れて貰ったが、その時からナツキは何かとオレに突っかかってくるようになった。

これも今では良い思い出になっている。

そして、更に4ヶ月。

とうとう世間では存在しないはずの4年を卒業する時が来た。

いつもより広い大きな空間に集められたオレ達を待っていたのは、最初にオレ達を迎えてくれた人物であるダニエル男爵だった。

そんな男爵が1年前より少し筋肉質になったオレ達を見て微笑んでいる。

そして、オレ達の前にある少し高くなった場所から見下ろしていた男爵が全員がそろったのを確認すると共にマイクを手に取った。


「卒業おめでとう、諸君!

 ここまで獣人化を諦めなかった君達は今現在誰よりも獣人化を望む者達だ。

 さて、そんな君達に私からプレゼントを用意した。

 一度"死んで"くれたまえ。」


その意味を理解する間も無くオレ達の意識は無くなった。

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