正邪の行進
皇紀1158年6月
大陸統一を国家目標に定めて、周辺諸国と戦争をしていたアレス帝国が突如として帝都で起こった内乱により皇帝及び大貴族等の帝国の実権を握っている要人が殺されてしまう。
これを好機と見て各地の爵位を持った貴族たちが皇帝の後継者を名乗り帝国を我が物にしようと動き始める。
帝国の脅威から自国を守る為に周辺諸国が組んでいた反帝国連合も好機と見て帝国領内へ侵攻を開始する。
反帝国連合の侵攻は好調に進んでいき、帝国領を半分まで攻略した。
だが、ここで連合の足並みを狂わす事態が起きる。連合盟主であるリベライト帝国がアレス帝国の全領土を陥した後の領土配分を決める為の会談を開こうと連合に呼び掛ける。
同年12月18日
連合を組んでいる全国家の代表団が集まりリベライト帝国帝都シャトワールにて会談が始まった。
後に地獄の始まりと呼ばれるシャトワール会談が始まった。
1日目は無難な報告などが行われ、会談は和かなムードだった。
だが、2日目の会談は大いに荒れた。後に出回ったリベライト帝国が作った領土の配分表によるとアレス帝国の領土の7割をリベライト帝国の領土とすると書いてあった。
当時これを見たリベライト帝国の属国以外の諸国の代表団は異論を唱えた。2日目はそこから議論が進展せず終わった。
3日目になるとそれぞれの国が領土の配分表を作成し提出した。ある程度まともな物もあったはあったがどの国も自分が有利になるようなものだった。
その議論をずっと続けて年を跨ぎ皇紀1159年1月1日
全ての国で新年の祭りをしていた時に遂に事件が起こる。連合国が会談をしている時に会談場に火がまわった。そこでリベライト帝国とその属国以外の代表団が焼死する事件が起こった。だが、これだけでは終わらなかった。なんとリベライト帝国が自分達が作った領土の配分表が採決により可決した後に火がまわったのでアレス帝国の領土配分を始める、と言い始めた。証拠として属国達を使った。勿論、どの国もその可決に反対した。
そして、まだアレス帝国を倒していないのにあろうことか連合国が一国ユスティーツ王国がリベライト帝国に対して可決が不法であるとして宣戦布告をした。
その後いくつかの国もリベライト帝国に対して宣戦布告をした。
ユスティーツ王国はリベライト帝国帝都一歩手前まで追い詰める。すると、それまで中立を保っていた連合諸国がユスティーツ王国に対して宣戦布告をする。そして、ユスティーツ王国の王都一歩手前まできてまた追い詰めた国に対して、他の国が宣戦布告をする、その国に宣戦布告をする………という連鎖が始まってしまった。それが数回、数十回と続いた。
遂にそれに見兼ねたリバタリアン王国の貴族達が次々と独立を宣言する。リバタリアン王国は即刻鎮圧軍を差し向けるが戦争で疲弊していたのと国の軍の殆どを貴族達の軍に頼っていて予想以上に兵が集まらなかったのがあい合わさって独立軍に負けてしまった。そして、貴族達の独立を認める声明を発表した。それを見た国に嫌気がさしている貴族達もそれに習い独立を宣言する。
一部の国家は独立の阻止に成功するが殆どの国が独立を許してしまう。
そうするともう誰もその流れを止められない。
血で血を洗う独立が各地で始まった。
そして遂には倒れる国さえ出てきた。だが、それでは終わらない。どんどん貴族達が独立をする。
最後には国という存在がなくなり貴族達が自分達の領土を広げて新たな国を打ちたてようと隣の貴族を攻めて攻められてを繰り返す戦乱時代に突入する。
勝者は誰になるのだろうか。信じられるのは自分のみ。
全ての者よ立ち上がれ。抗え。怒れ。狂え。そして死ね。
アレス帝国記大最終章より抜粋
著者 不明
成立年 不明
不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明不明
さあ、狂おう
旧アレス帝国領現フェアラート伯爵領ファン村
黒き塊が村に迫ってくる。
否、黒き甲胄に身を包んだ騎士達が村へと帰ってきたのだ。
その騎士の集団を人呼んで
『死神』
という。
だれが言い始めたかは分からない。ただ、その騎士達は命が惜しくないのか戦争になると真っ先に敵の陣地に突っ込んでいく。ただそれだけなら良い。だが、彼等はその程度では終わらない。
敵の将を次々と討ち取っていき、時には大将さえ討ち取ってしまう。そして、悠々と自陣へ退いていく様は正に死神。
魂さえ刈り取ってしまう様な異常なオーラを身に纏っている。
その集団の1番前を走っているのはモルテ・バーレ。この騎士団の長である。
彼は先日起こったシュロート草原争奪戦に約50名を率いて参戦した。
結果はフェアラート伯爵軍が勝ったものの辛勝だった。それは彼らを見ても分かるだろう。約50名で行ったはずなのに帰ってきているのは18名のみ。3分の1も死んだ。しかも残ったモルテ以外は満身創痍である。だが、彼らの顔は笑っていた。彼らは死神。死を恐れない。いやむしろ死を好んでいる。目の前で沢山の死が観れた。だから彼らは喜んでいる。
ここの世界の馬は私達が住んでる地球とは違う。ここの世界の馬は哺乳類ではなく爬虫類である。ここの世界での馬は恐竜のような見た目である。ただ、私達の世界の馬よりも凶暴で圧倒的に力が強く忠誠心が高い。一度自分の主人と決めた者以外背に乗せることを嫌う。
彼らはファン村に入っていった。
村の者はある者は喜びある者は泣き崩れていた。その中を彼らは凱旋していく。胸を張って。
翌日
死者の発表が広場で告げられる。
多くの人が来ていた。その中に1人の少年がいた。その齢4つ。父が先の戦いで死んだ。1歳の頃、母を流行病で亡くした。その後は父が男手一つで3年間育てた。確かに年数でいえば少ないが少年は父の事を尊敬していた。きっと一生父の背中を見ていくのだろうと、思っていた。それが目の前で紙屑のように捨てられた。
少年は怒り狂った。だが、怒り狂う相手がいない。相手になるとしたらもうこの世界しか無い。その時、目の前にモルテが来た。
「気の毒だったな。少年よ。強く生きよ」
ただそれだけ。謝罪の言葉もない。次の遺族の所へ向かおうとする。それが気に障った。たとえこの村の領主だとしても関係ない。もう、自分を養う者はいない。後は餓死を待つのみだった。なら少しでもあいつに一矢報いようとする。
「お前のせいで、父が死んだ。きっとお前がいなければ母も死なずに済んだ。そうだ、全部貴様のせいだ!!」
丁度ポケットに入っていた護身用の短剣を取り出してモルテを刺そうとする。
モルテもそれを見て剣を抜き、素早い突きを繰り出す。だが、少年はそれを見事に左に躱す。モルテは少し楽しそうな顔をして右に突きを入れる。それを短剣で受け流す。が、大人の力に勝てるわけなく体ごと弾き飛ばされる。だが、すぐに立つ。モルテは殺気を出しながら剣を上から下に振り下ろす。だが、少年は次は守ろうとしない。
「ふっ、面白い。貴様名前は?」
「スケラ。スケラ・ロワレ」
「貴様の父は弱かった。だから死んだ。それだけだ。そして、貴様も死ぬ。だがもしそれに抗いたければ俺の後について来い」
モルテはそう言って歩き出す。スケラもそれについて行く。
後世に死騎士と呼ばれる者が始めて歴史の表舞台に出て来た瞬間だ。
完全に不定期になります。趣味に走ると思いますので…
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