麻美
いつの間に眠ってしまったのか、僕は誰かにたたき起こされた。
まどろんだ瞳を開けると、僕の目の前になぜか麻美が立っていた。
「麻美どうして?」
驚いて僕はまどろみが一気に冷めた。
「どうしたもこうしたもないよ」
すると僕のポケットにしまってある水晶玉が輝きだした。
そこで眠っていたミコトさんが目覚め、そしてMSの病気を患っているリリィが目を覚ました。
「どうしたのじゃお主よ」
麻美が胡乱な瞳を僕に突きつけ「誰?」と質問してきた。
麻美に何て話したら良いのか分からない。
僕たちの目的を麻美に話しても、信じてもらえないだろうし、話がややこしくなる。
そこでリリィが、
「レイジ誰と話している」
もちろんの事、麻美はリリィに気づかないし、リリィも麻美に気づいていない。
「ちょっとした知り合いでね」
リリィに言うと麻美が、
「誰と話しているの?」
「誰だって良いだろ。どうしてお前がこんな所にいるんだよ」
「探したんだよ」
「探した?」
「そうだよ。探したんだよ」
と瞳に涙をいっぱいため込んで麻美は僕に殴りかかっていた。
「痛い何するんだよ」
「探したんだから。すごく心配していたんだから」
こんな広い世の中に偶然にもほどがある。
「よせよ」
そういって麻美の手をつかんで牽制した。
「お主レイジと友に過ごしていた施設の子じゃな」
ミコトさんがそういうと麻美はミコトさんを怖い視線で見つめた。
「そんな怖い目をしなくてもレイジと我はお主が思っているような関係ではない」
すると今度は僕にその視線を向けた。
「そんな目で見るなよ。心配させたのは悪かったよ」
事情を話そうか話さまいか迷っていると、麻美が僕の手を取った。
「さあ、帰るわよ。みんなすごく心配しているんだから」
「悪いけどそれは出来ない」
そこでリリィが、
「レイジ。さっきから誰と話している」
「いや別にリリィには関係ないよ」
「レイちゃん誰と話しているの?とうとうおかしくなっちゃったの?」
僕をかわいそうな目で見る麻美。
「麻美には関係ないだろ」
怒鳴り散らしてしまった。
すると麻美は黙り込んでうつむいてしまった。
探しに来てくれた麻美には悪いが、僕はか弱い麻美を巻き込むわけにはいかないと思って強く言っておいた。
だが、麻美は瞳を真っ赤に染めて僕に殴りかかってきた。
「ふざけんなこのやろう。どれだけ心配させれば気が済むんだよ。真奈美さんの事レイちゃんのせいじゃないよ。だから帰るの」
そこでミコトさんが、
「まあまあ麻美とやら、少しは落ち着いたらどうじゃ」
「落ち着くも何もないよ」
僕に殴りかかりながらそういう。
「レイジには事情があるのじゃ」
「事情?」
そう言って手を止める麻美。
「とりあえずこれは話すより見た方が早い」
ミコトさんはそんな麻美にサングラスを差し出した。
麻美がそれをかけると、もちろん麻美はリリィに気づきリリィは麻美に気づく。
「どう言うこと?」
麻美は驚く。
「話は我がしてやろう。だからちょっと席を外すぞ」
ミコトさんは麻美を連れて隣の車両に行った。
そこでリリィが、
「誰?」
と、なぜか僕にナイフのような鋭い視線を向けて僕に言いかけた。
そんなリリィに僕はうろたえ、
「ぼ、僕のお、幼なじみだよ」
するとリリィは僕の手を強く握った。
「どうしたんだよリリィ」
すると先ほどと同じような目をして、
「何でもない」
「・・・」
僕は怖くて返す言葉も見つからなかった。
それにリリィはどうして怒っているのか僕には分からなかった。
リリィと二人きりになって僕はすごく気まずくて何を話して良いのか分からなかった。
時間は過ぎていって、隣の車両にいたミコトさんと麻美が僕とリリィがいる車両に戻ってきた。
その間十分ぐらいが経過したみたいだが、リリィといて気まずい空気の中にいたせいか?一時間ぐらいが経過したのかと思った。
「レイちゃん。話はミコトさんから聞いたよ。何だか大変な事になっているみたいだね」
「そうだよ。だから麻美、僕はお前を巻き込みたくないから大人しく施設に戻ってくれないか?」
すると麻美はミコトさんから借りたのか?アラタトの民であるリリィが見えるサングラスを着用した。
「あたしもレイちゃんと一緒に行く」
そう言って僕の隣に座ってリリィにナイフのような鋭い視線を向けた。
リリィの方を見るとリリィも負けずとその鋭い視線を麻美に向けた。
そう言えば、麻美は僕の事が好きだと言っていた。
もしかして麻美の奴リリィと僕が彼女彼氏関係何じゃないかと誤解しているみたいなので、
「麻美、そんな目をしなくても僕とリリィはそんな関係じゃないよ」
するとリリィは僕にその鋭い視線を向けた。
僕はゾッとして、
「リリィどうした?」
と聞いてみたところ、リリィは「ふん」とふんぞりかえってしまった。
何だろうこの気持ち。何か分からないけど、蟠る気持ちと似ていた。それよりも僕は、 「とにかく麻美、僕たちはお前を連れて行くわけにはいかないんだ。この旅は本当に危険なんだ」
「そんなの覚悟の上だもん」
強情をはる麻美。
「ミコトさんも何とか言って下さいよ」
僕はミコトさんに説得してもらおうと思って呼んだ。
「ふむ。じゃが水晶玉が輝いている所を見ると、どうやら運命は麻美を必要としているのかもしれない」
確かにそうだ。麻美を見たとき水晶玉が輝きだした。
でもどうして何の取り柄もない麻美を運命を司る水晶玉が必要としているのか?分からない。
でも僕は仮に水晶玉が麻美を必要だと認めても僕は認めるわけにはいかない。
もし麻美に何かあったことを思うと恐ろしくて考えたくもないほどゾッとした。だから僕は、
「麻美、お前は帰れ」
「エーどうして」
「どうしてもだ」
「ミコトさんはどう思うんですか?」
「まあレイジはお主が何かあったらと思っているのだろう。その気持ちも分かってあげたらどうじゃ?」
「麻美だったら大丈夫だよ」
何を根拠にそんな事を言っているのかはわからないが僕は、
「ダメったらダメだ。お前にもしもの事があったら僕にはどうすることも出来ない。多分施設のみんなもお前がいなくなってみんな心配しているぞ」
すると麻美は僕の胸元をつかみあげ、
「それはレイちゃんだって同じだよ。みんなどれだけ心配しているか分かっているの」
麻美の目は真っ赤に染まっている。それは僕に対する怒りだろう。でも僕は冷静に、
「僕は帰れない。ミコトさんから聞いたかもしれないけど僕はカタストロフィーインパクトを止めなくてはいけないし、それにリリィの事守らなくちゃいけない。それと僕が帰れば、みんなを危険な目にあわせてしまうかもしれない。だから分かってくれ」
説得が通じたのか?麻美は僕の胸元をつかむ手を離してくれた。
麻美はうつむいて自分のやるせなさに泣いているみたいだった。
僕は座席に座りなおして、リリィの隣に座った。
すると麻美は僕の隣に座り込んで離れようとはしなかった。だから僕は、
「麻美、お前は帰れ。本当に危険な旅なんだ」
僕は大声で強く言った。
でも麻美は離れようとせず、僕の腕を強く掴んだ。
「麻美は帰らない。レイちゃんと一緒にいる」
その後麻美はどんな言葉も聞きもせず、ずっと僕の隣で強く腕を掴んでいる。
ため息がこぼれ落ち、車窓を見ると、列車は北へ向かっている。
右にはリリィ左には麻美。
まったく麻美には困ったものだ。
麻美の方を見るとミコトさんからアラタトの民の見えるサングラスを着用して、リリィに言いかけた。
「リリィさんだっけ。麻美だよ。よろしくね」
と笑顔でリリィに言いかけた。
するとリリィはなぜか僕に威圧的な鋭い視線を向けた。
どう考えたってそれは怒る仕草にしか見えない。
どうしてそんなに怒っているのかは分からない。
そんなこんなで列車は終電駅に到着して降りた。
そこは畑も山も町もすべて白く染まった所だった。
時計を見ると、午前十一時を回った所だった。
「どうしますミコトさん」
「ふむどうしたものかのう?とりあえず駅を降りて昼の馳走を堪能しようじゃないか」
さっきはどうなるものかと思ったがこの人は相当食べる事が好きみたいだ。
「麻美おなかペコペコ」
麻美は相変わらずサングラスをかけている。
「まだつれて行くとは言ってないぞ」
「まあ良いではないか。ここは海に近い町だから魚が盛んだから寿司なんかはどうじゃ」
「寿司は昨日の町であれだけ食べていたじゃないですか」
「麻美お寿司食べた事ないから食べて見たい」
麻美は瞳をキラキラと輝かせて僕に訴えかけた。
「麻美、僕たちは遊びでここにいる訳じゃないぞ」
そんな時、お腹がなく音が聞こえてきて、それはリリィの腹の虫だった。
僕と麻美がそんなリリィに気がつくと罰の悪そうな顔をしていた。




