ハンカチと時計
この作品は、全て妄想であり、創作です。
8.
赤ワイン、薔薇の花束、キャンドル、プレゼント・・・・
非常にありきたり過ぎて今も書くのも恥ずかしい、陳腐な設定には違いないのだが女子はこの手に弱い。いくつになっても。たぶん日本人の女性は特に。なんだかんだ言ってもテレやの男性が多い国民性だと思うから・・・これがさらっと出来ちゃうのはやはり外国人だからじゃないのかしら・・・
タンのアトリエのティールームに移動した私達は私の誕生会という名目で、3人でワインやビールを飲み始めた。私はすっかり気分が良くなっていた。
タンのギターで私が泣いていたら、タンがすぐに女の子を泣かせると言って、ムギョルはなぜかプンプンしていた。
どうやらムギョルは注文しておいた花束とケーキを買いに行ったところ、店が混んでいたらしい。
ム『全く、タンは直ぐにお気に入りの子にはかっこいいとこ見せるんだから・・・』
タ『ヒョンにだけは言われたくないね。いつもいつも女の子のこと泣かせて来たじゃないか!』
2人の話を総合すると、ムギョルは誰にも優しいから年齢を問わずもの凄くもてるが、なぜか肝心なところで踏み込ませないようなところがあって、勘違いした哀れな女の子が掃くほどいたと言う。
タンは基本、好きなタイプの女性としか仲良くならないらしいのだが、これまたのらりくらりで、そのうち女性が業を煮やして離れていくパターンがほとんどだったらしい。
私もきっとそうなんだろうな・・・ムギョルを今以上に好きになって、苦しくなってこれ以上近づくと、さっと突き放されるんだろうな。で、タンはタンでもっと好きになって手を伸ばしたら握ってくれた手を上手に離されてしまうんだろう・・・
そんなことをうすぼんやりと考えていたら、切なくなって来たので私は少しでも現実に戻ろうとして聞いた。
私『そー言えば、ムギョルの幼馴染の彼女さんの写真って、ないの?タンも会ったことあるんでしょ?』
ム『あ!報告あったんだ。彼女がアメリカで恋人出来たから、オッパ、私達、幼馴染に戻りましょうだって!もともと親がうるさいからお互い隠れ蓑にしてたとこあるし、写真はこれこれ・・・』
それは少し若い頃の写真だろうか。ムギョルの誕生日にみんなで撮ったと言う幼馴染の写真は、どちらかと言うと綺麗とかより理知的とかの言葉が似合うかな。それにちょっと幼い。で、タンも一緒に冷ややかに写っていた。ちょっと寂し気に。
なんだろ、私の意識のどこかで、何かひっかかるものを感じていた。何なのか自分で良くわからない・・・
タンと言えば、ムギョルからの報告を何でもないように聞いていたが、下をむいてフッと笑ったように感じた。そして急にハイテンションになり、
タ『千佳も彼氏と別れてしまったというし、ムギョルはとうとう幼馴染にまでフラれたって言うし、僕は今もってフリーだし、今日は3人シングル会だね?クリスマスを過ごす相手を探せるようにお互い励まし合わない?どうせ僕達兵役から帰ってくるまで結婚は無理なんだしさ・・・』
と、なんやらやけっぱちのような名目の飲み会になって来たが、気のせいか悲壮感は2人から全く感じられなかった。内心うじうじしているのは私だけだった。
酔った私はワインをこぼしてしまい、白いスカートが染みになった。タンがさっとハンカチを出して拭いてくれたが、そのハンカチとさっきまで気が付かなかったタンの腕時計を見て、私は心臓が跳ね上がりそうになった。
そう、ハンカチは以前ムギョルが、持っていたものと同じようなデザインで、時計はムギョルが買い物してたと、先輩に見つかったブランドのものだったからだ。
千佳のセンサーが鳴り出しましたね?何に反応しているんでしょうね?