もう1人のイケメン
この作品は、全て妄想であり、創作です。
3.
長い指が私の顔に触れる。
大きな手が僕のためにだけ美しくなれと優しく包み、そっと頬にキスをする。
『チーフ、チーフったら。
見とれてないでご挨拶ご挨拶‼︎』
後輩にヒジをつつかれて、はっと我に帰る。
『そーですよ、千佳さん。お隣のイケメンさんにぼぅっとしてないで、貴女の作品の私の事も皆様にご披露して下さらない事?』
いつしかムギョルさんのするメークの姿を見て完全に妄想に浸っていた私は真っ赤になって、『すいません、明子様。只今』と、素早く平静モードに切り替わる。
秋のキャンペーンの、メークのデモンストレーションはムギョルさんのイケメン効果は勿論だが、モデルさんをお客様から応募したのが好評で、メークを行った私達のまわりに見物客が円陣を作るほどの盛況だった。
ムギョルさんのモデルさんに若いOLさん、私のモデルさんになって下さったのは、私の1番のお得意様、75歳の明子さんだ。余談だが、明子さんはプラチナ会員様で、一年間に200万以上使って下さるお客様だ。
赤ら顔を気にしていると言うOLさんは花のように、明子さんは少なくとも60代には見えるだろうか、お二人とも見物人が見てる興奮も手伝っていつもより生き生きと、柔らかく仕上がった。
拍手喝さいを受ける私達にムギョルさんが、長い首を傾けてこそっと聞いて来た。『千佳さん、明日お休みですよね?時間あったらちょっと紹介したい人がいるんですけど』
それがタンさんとの出会いだった。
あれ?別なイケメン、なかなか出ないですねぇ。