妄想最終章 ~ト マンナヨ~
この作品は、すべて妄想であり、創作です。
あれから私は2人の母国語を聞きたくてラジオ講座を聞いてハングル語の勉強を始めた。
そー言えばテキストに興味深い内容があった。なんでも韓国人のトークの一つとして、気に入ったら貸して上げますよ、飽きたら差し上げますよというお約束のような文句があるのだそうだ。
なるほど、ムギョルが編ぐるみの事で私に言ったのはただのお決まり文句だったんだなって、これまた笑ってしまう。
ところで、あの頃の熱病に浮かれたような、2人の関係の妄想の日々をふと思い出す時、今でもただの妄想じゃなかったんじゃないか?と思う時がある。
明子さんが韓国に遊びに行かれた時に、成田第3ターミナルのレストランで、ちょうどムギョル達に会ったそうなのだ。で、声をかけようとしたが、ムギョルの隣に知らない美しい青年がいたので遠慮したとの事。明子さんも見ないようにはしていたらしいのだが、その2人の雰囲気がどう見ても、友達や兄弟には見えたかったと言うのだ。ちなみに明子さんはボーイズラブはお嫌いらしい。
『だって、2人でソフトクリームを交換して食べてるのよ?日本人男子では考えられないでしょ?しかもお口のクリームなんて拭いて上げたり・・私、思わず目をそらしちゃいましたよ、ほほ!』
って、明子さんはひそひそと、でも明るく報告してくれた。
『あの2人、実はそうなんでしょ?千佳さん、何か知ってるんでしょ?白状なさいな?』
明子さんに新作の高級美容液をたっぷり付けて差し上げながら、私は2人の名誉のため、答えた。
『はい、私もあの2人のベタベタぶりを見たときは最初驚きましたけど、もう一人の男の方は、ムギョルさんのお姉様の婚約者ですよ』
『あら、そうだったのね~。韓国の方ってスキンシップが濃いのね~』
と、その話はあっさり終了したが・・・
私は回想する。
明子さんが韓国に遊びに行くって言ってたのは、いつだったか?タンの婚約が決まった頃じゃなかったろうか?確かにムギョルはソウルに用事を足しにちょっと帰ると言っていた気がする。
きっときっと。2人は最後の逢瀬を交わしたのだ。
これでお別れ。これからは姉の婚約者として、あるいは、自分の婚約者の弟としてお互いを大切にしていく・・・・
掃くほどもてたのに、肝心な所で女の子を踏み込ませなかったと言うムギョル。仲良しの女の子いつも回りにいたけれど、のらりくらりと相手をかわしていたというタン。
2人は、いつしかお互いを愛するようになっていったのではないか?でも韓国男子としてそれぞれに将来を背負う2人は何度も別れようとした。タンにうざがられながらムギョルは女の子を紹介し続けた。自分の幼馴染の彼女とも深い関係にはならなかったものの、親を安心させようとしていつも側に置いておいた。その度にタンがイラついて、幾度と無く繰り返された痴話喧嘩....
2人それぞれ兵役にも行くしどっちにしてもお別れ。タンは若い頃に憧れていたムギョルの姉のケインと婚約することで、2人は2人の関係に決着をつけようとしたんじゃないのか?
でもでもでも・・・・これでハッピーエンド?
ここからは私の妄想と言うより、想像だ。
私は、結局2人は別れられないんじゃないかと思っている。これは嫉妬でも希望でも興味半分でもない。あまりに2人でいる姿が自然すぎたから。
まさかまさか、ケインさんまで実は2人の関係知ってるなんて事ないんだろうか?さすがにそこまで大人だったらビックリだが・・・アラサーの私はこうも考えてしまう、婚約と結婚、微妙に違いがあるのではないか?タンはまだ完全にケインさんのものだけになった訳では無いのだ。
ふふ!でもここまで来るとやっぱり本物の腐女子か?
しばらくして、もう少し落ち着いたらソウル旅行に行ってみよう。どうせなら2人の兵役に行ってる間に。ムギョルとタンが将来活躍する予定だと言う、タンのお父様の会社でも見物して来ようか?(笑)
私もハングル語、この際勉強するならペラペラになって日本とソウルを自由自在に行き来出来るぐらい、やってみよう。
2人にはもう会えない、きっと。(妄想の中でしか。。。笑)
でも、何時の日か私がバイリンガルになって、大好きだった2人とばったり再会....な~んて夢を持ち続けるのは自分の心の中だけの特権ではないか?
その時、ムギョルは絶世の美女が隣にいるかもしれないし、タンはケインさんとの可愛い息子を抱いているかも。私は子持ちでバリバリと働いてたりして。
それとも全員フリーで、また一緒に飲んでるかも。
そして相変わらず2人が自然に微笑んでるかも....
長い人生何が起きるかわからない。
私の大好きな言葉。 ト マンナヨ(また会いましょう)
千佳の妄想に苦しんだ物語はこれにて終わりです。番外編もいつの日にか挑戦してみたいです。