2人との別れ
この作品は、全て妄想であり、創作です。
12.
タンは婚約パーティーの大騒ぎの最中、ひそっと端っこでワインを飲んでいた私に、
『千佳、この前みたいに男の前で無防備に泣いちゃダメだよ。あの時ムギョルが来なかったら僕、きっと千佳を抱きしめてた』とタンのギターで泣いた私をからかった。
例え社交辞令でも、タンの優しさが嬉しかった。あの時タンの前で泣いてしまったのは今思い出しても恥ずかしい。私は真っ赤になって言い返した。
『良く言うわよ。10年越しの恋を実らせた人がぁ。』
『いや、本当に久しぶりに会って、ケインがまだ1人だって言うから思いきって勇気出したんだ。でも、これからヒョンも、僕も兵役に行くから普通に暮らせるのはまだまだ先なんだけどね。
千佳、いつかソウルのアトリエにも遊びにおいでよ。僕とヒョンで、あちこち案内するよ』
そして、12月末。
ムギョルがソウル支社に戻る事になった。
かつて前例を見ない華やかな送別会の後、またまた飲み過ぎた私とムギョルは酔い覚ましにスタバでコーヒーを飲んだ。
『千佳、本当にいろいろお世話になってありがとう。不安だった日本での仕事もいつも千佳がサポートしてくれたから心強かったよ。なかなか厳しい指導だったけど千佳の完璧な接客姿には脱帽だった。ていうか日本人の接客業、凄いや。さすがに世界に誇るだけはあるね。』
『いやいや、ムギョルの礼儀正しさだって、素晴らしかったよ。ムギョルが担当したお客様達、みーんな喜んでたじゃない!』
『千佳、僕もタンも行ってしまって大丈夫か。いつも疲れてるみたいだったし。辛くなったら何時でもメールして。飛んでは来れないけど話ぐらいは聞けるから』
さすがに貴方達2人の関係を妄想し過ぎて一時期具合が悪かったとはとても白状できなかったが。
『千佳、いつの日かまたタンと3人で必ず会おう。
ト マンナヨ』
たった4カ月の事だった。しかしムギョルとタンは私の心の中に強烈な旋風を巻き起こして行ってしまった。
多分、もう二度と手の届かないところに。
タンは婚約、ムギョルは研修終わって、それぞれソウルに帰ってしまいましたね。
次回最終回です。