2人の未来
この作品は、全て妄想であり、創作です。
11.
タンとムギョルの姉のケインの、婚約披露パーティ。
タンのアトリエを貸し切って、私とムギョルはケータリング、花束、バルーンサービスを頼んだりして準備した。
ムギョルの腕にはシャなりっとティファニーの時計が付けられていた。タンが付けてたものとは違うデザイン。
私は思い切って聞いてみた。
『ね、タンもティファニーの時計してなかった?』
『うわ目が高い〜。さすがに気が付くの早いね?あいつ昔から何でも僕の持ってるもの欲しがるんだよ、本当に子供なんだから』
と、言葉と裏腹に嬉しそうに笑った。
そっか、だからムギョルのお姉さんの事も好きになったのね?
『タンが昔、結婚しようとした人ってケインさんなの?』
『そうそう。しかも18歳の時だよ?22歳のケインに向かって結婚してくれって大騒ぎさ。当然ケインはその頃はタンを子供扱いで気にも止めてなかったから。タン、その後しばらく荒れちゃってさ。僕も姉への失恋が原因な訳だから少し責任感じていろいろ美人紹介して来たんだよ。』
『でも結局のところ、タンとケインさんはいつから付き合ってたの?』
『付き合ってないよ。この前ケインが日本に来てこのアトリエに寄った時、タンが千佳の話引き合いに出して強引に結婚迫ったんだってさ。笑えるだろ?』
『え?どういう事?』
『僕は日本人の女の子の為に絵を描いた。もし今日結婚承諾してくれなかったら、キッパリ諦めてその子に交際を申し込む....って言ったんだってさ。千佳ぁ。惜しかったね。』
『何それ、私の意志は全然無視ね?』
ムギョルと私は顔を見合せて大笑いした。
全く、タンったら。嘘も方便だね!そんな気、全然ないくせに!でも悪い気はしない。
『ムギョルは結婚しないの?』
『うん、来年兵役あるし、まぁ、タンもだけど。
それにまだ、勉強したい事もあるんだ。』
ムギョルはタンのお父さんから、いずれはアトリエだけでは無く会社を全部継ぐタンの右腕として経営に携わって欲しいと言われてる事。ますますグローバル化するにあたって、タンにはどちらかと言うと内部戦略を、ムギョルには外交的戦略を担って欲しいと言われていて、それに全く異存はない事。でももう少し世界を回って今回みたいな接客はもちろん、人を束ねていくマネージャーとしての修行を積みたい、将来的にはネットを強化してWebビジネスでも戦っていきたいなどの夢を熱く語ってくれた。
ムギョルとタンが本気になったら、なかなか手強い会社になるだろう。
『千佳も、その時はソウルで一緒に仕事しないか?』
全く、タンもムギョルもうまいんだからぁ。
この気をもたせた優しいしゃべり方....
韓国男子が全員そうという訳では決してあるまいが、この少しだけ下たらずの甘い喋り方と誠実さを感じさせるような、謙虚に見える態度・・・だから世の中のおば様たちが韓流スターにみんなイチコロにされちゃうんだよ。わかるわかる。
私はちょっとだけ涙ぐみながら、ウンウンと頷いた。
それぞれの旅立ちですね。