2人に揺れた日々
この作品は、全て妄想であり、創作です。
10.
ムギョルが眼鏡をはずす。タンの長い髪に手を入れる。ぐしゃっぐしゃっと。タンがその手を掴んで強く引くとバランスを崩した2人はソファに倒れ込む....
大きなお屋敷。誰もいない。階段を上って行くと突き当たりに開かずの間がある。でもなぜか少し開いている。かすれ声が聞こえた気がして、そっと覗いて見る。と、美しい2人が長い手足を絡ませて野獣のように身悶えしている....
ムギョルが、タンの美しいうなじを噛む。タンは逃げながら喜びの声をあげる....
私の妄想は次々に止まる事は無く、不思議だが最初の衝撃が過ぎると、次第に2人の絡みを考えただけで萌えるようになった。妄想の中で2人はどんなシチュエーションも恥ずかしく激しいポーズも自由自在だった。
考え出すと身体が熱くなり、ゾクゾクとした喜びに震えた。いわゆる完全な腐女子に成り果てたのだ。今思うと、2人への行き場のない苦しい気持ちをそんなふうに転換しないと私はあの頃自分を支えられなかったのだ。
そしてふっと現実に戻ると、2人はそもそも恋人なのに、ムギョルは何故、タンに私を紹介したんだろう?ヤキモチを焼かせる為に私を当て馬にしたんたろうか?私をタンに夢中にさせてから美しいタンはお前みたいなバカな女じゃなくて、自分のものだって見せつけたかったんだろか?などの、数々のドス黒い感情に苦しんだ。
日々のオーバーワークも重なり、当時私の精神状態は限界だったが、それは思わぬ形で終止符を打った。
タンが、正式に婚約する事になったのだ。
ムギョルとではない。ムギョルの実のお姉さんと。
ムギョルの三つ上のお姉さんは編みぐるみのデザイナーで、以前、ムギョルが持っていた例の有名ブランドのハンカチデザイナーとして働いていた事もあった。
あっ、なるほど〜。だから2人とも同じようなハンカチ、たくさん持ってるんだな、きっと。
私は自分の極端に度を越した妄想を心から笑ってやった。
笑いすぎて....泣いた。
一つの季節が終わったのだ。
あれあれ、千佳の勘違いも終章ですね?
あと何回か続きがあります。