入学式の1ページ
晴れて高校に入学した私、松井 悠美。
今は体育館でオリエンテーションを受けている最中…。
でもさっきから眠くて仕方がない。
「部活紹介はーーー」
かすかに声が聞こえるな…。
「!!」
「それでは各自行動して10:30には各々の教室にいるように。」
いつの間にか寝ていたらしく気づいたらもう大体の人が席を離れ始めていた。
とりあえず隣の人について行けばいいかな。
そう思いついて行くけど…速い、速いよ!!
華麗に人混みを交わしながらとんでもないスピードで歩いて行く。競歩の選手かなんかですか?!
今までついて行くのに精一杯だったのに入口付近に人が多すぎてついに見失ってしまった。
ようやく人混みから抜けれたと一息ついた時人混みに押され体勢を崩す。
次にくるであろう衝撃に構えるため目を瞑る。
すると誰かが私の腕を掴んでくれたようで間一髪助かった。
「大丈夫〜?」
となんだかほわほわとした声が聞こえる。
「はい。助けて下さってありがとうございま…した…。」
私の目の前には声だけでなく容姿もほわほわとしたようなイケメンが立っていた。
「どういたしまして〜!君一年生だよね?良かったらここの部活紹介見ていかない?」
体育館での部活紹介?
ろくに部活欄見てなかったからなぁ、何があるか知らないしとりあえず見てみるのもいいかもな…
「はい…!」
これが、先輩との初めての出会い。
それからダンス部に入ってることを知って、教室に戻る途中で迷った私を助けてくれて、名前も教えてもらった。
部活はもちろんダンス部希望。
ダンス部所属の人はカッコいい人とかわいい人達の集まりで、希望者は男女共にとんでもないほど多かった。
そんな中オーディションが行われて、元々ダンスの得意だった私は見事合格。
晴れてダンス部に入ることが出来た。
先輩と話す機会が少しでも増えるとワクワクしていたのに…現実はそう甘くなくて。
増えるどころか私と同じく合格した女の子達は先輩達が群がるおかげで話しかける機会すらない。
それでも時々ある幸せな時間を大切にしながら過ごして約1ヶ月が経った。
これだけの時間が経って最近ようやく気付いたこと。
どうやら私は先輩に『恋』をしているらしい。
「…み、ゆうみ、悠美!」
「えっ…?」
さっきまでそこにいた部員の皆は跡形も無く消えていて、代わりに見えたのはお母さんの顔と天井。
周りを見渡してここが私の部屋であることを理解するのに少しばかりの時間がかかる。
えっと…あれは夢?
どこから…?
「またこんなに散らかして寝ちゃったのね…。」
そう言われて床を見ると学校のパンフレットや教科書が散らばっている。
「お母さん、今日何日?」
「12日よ? 昨日あんなに楽しみにしてたのにもう忘れたの?」
12日…。
壁に掛けてあるカレンダーに目を向ける。
12日には大きな字で『入学式!!』と書いてあった。
入学式?今日が?
ってことは…全部夢…?!
信じられない…。
私の青春は!? 先輩は!?ダンス部は!?
私ってば想像で全部作ってたのかな…恐ろしい…。
「悠美、早く支度しなね〜。もうそろそろで学校行かなきゃ間に合わないわよ?」
「え?」
時計はもう少しで8:00を示そうとしている。
入学式だから8:30までに行かなきゃいけないのに…これは完全に遅刻だ…!
急いで支度をして一口サイズのドーナツを二つほど食べて家を出る。
「行ってきまーす!!!」
自分にできる最大限の力を使って走る。
学校が見えてきたところで時計を見ると8:28、ギリギリ間に合う!
「あっ…!」
校門を通ったところで何かに躓き体勢を崩す。
次にくるであろう衝撃に構えるため目を瞑る。
すると誰かが私の腕を掴んでくれたようで間一髪のところで助かった。
「大丈夫〜?」
「えっーー!?」
ー 家 ー
「悠美のことだからきっと片付けないのよね…。」
風でパンフレットがめくれる。
「あら? この部活…イケメン多いわね、かわいい子も。…ダンス部?あら、この子1番カッコいいじゃない。」
「えーっと… 峰 春也?」
終わり