喫茶アルプス
読書なんていつ振りだろう
学生の頃以外読んでないし、読もうともしてなかった
自分から率先して読もうなど、ありえない話だ
動機は不純だが、そんな俺がある本を読み進めている
「あれからアプリから通知が来ないな」
昼休みいつもどおりハジメは休憩室で昼食を食べていた
図書館の時以来アプリからの通知がなく数日がたっていた
ハジメも風のピリオドを半分以上読み進めていた
「なんか予想以上にこの本が面白いのが憎いな。なんで今まで本読まなかったんだろう」
ヴヴヴ
するとアプリから通知がきた
明日の12:00 ○区 喫茶アルプス
「やっときたか。明日の12時、喫茶アルプスか。昼休みに行ってみるか」
後日
喫茶アルプス
ハジメは○区の喫茶アルプスの前まで来ていた
外観は白や青など明るい色を使っており、喫茶店というよりカフェと言った方がいいほど女子が入りやすい雰囲気を醸しだしていた
カランカラン
ハジメは喫茶アルプスのドアを開いた
心地よい鈴の音が鳴ると感じのいい女性の店員がハジメに向かってきた
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「はい。」
「おタバコお吸いになりますか?」
「いえ。吸いません」
「ではこちらへ」
店員はハジメを禁煙席に案内した
ハジメはその間に店内を見渡した
「あれもしかして」
見覚えのある女性の後姿。彼女は通りの見える窓際で読書をしていた
「あ!あの!」
彼女がいることに驚いたハジメは思わず彼女に声をかけてしまった
彼女は声に反応し顔を上げるとハジメを見た
「俺!おぼえてる??図書館であった!」
動揺しているハジメは片言で必死に彼女に話しかけた
彼女 アリサはハジメを見ながら首をかしげた
「そうだ!」
するとハジメはカバンから一冊の本を取り出した
「これ!風のピリオド!あなたが図書館に返しにきた時にあった」
「風のピリオド..あぁ!あの時の!お久しぶりです」
ハジメのことを思い出したアリサの表情は前にも増して素敵に見えた
「お知り合いですか?」
店員は二人に問いかけた
「えぇっと。知り合いというほどでも」
「よかったらここ席あいてるのでどうぞ」
たじろぐハジメにアリサは気を利かせて自分の空いている席に座るように勧めた
「え!いいんですか?」
「これもなにかの縁ですから」
ハジメは遠慮がちにアリサの勧めた席に座った