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旧魔王坂高校 魔術研究部!  作者: 四月一日ワタヌキ
4章 三つの性質をしってるかい? 
29/36

●月野● 風の巻き起こる夕方 2

「はいはいはいはーい。そんないやな顔しなーい」

 光沢先輩が手をたたく。

 周りをみれば丸様ちゃんは梅干し顔になっているし、キノコちゃんは舌打ちするし、ぼくを引きずっている日野宮ちゃんは口をひん曲げている。一年たちにいたっては目をあわせないようにしている。


「きみたちね。そんなに毛嫌いするものではないよ。」

 わーちゃん先輩が言う。

「魔術を研究しようというのならば、じぶんの体をうまく扱うと言うことがどれほど大事であるか知ってもらいたい。」

「そうだ! わーちゃん良いこと言ったッ」

「ひっくん静かに。」

「すまん」

 光沢先輩は90度の角度でお辞儀をした。なんかドラマの熱血社員の小芝居を見ているようだった。 


 日野宮ちゃんが教室中央にぼくをぽいっと投げる。

 中央でへたりこんでいた林田君と額を押さえていたキノコちゃんにぶつかった。

「ちょっとー、日野宮ちゃんもっと丁寧に・・・」


 その刹那、風の壁が目の前に立ちはだかった。

 吸い上げられるように体が持ち上がり、乾燥機の中に放り込まれたみたいに体がもみくちゃにされつつ空中を回転する。

「あsdfghjkl;:」

 声にならない叫びを発しながら小さい竜巻の中もがく。

 あちらではキノコちゃんが頭をかばいながら風の中を猫の子みたいにくるくる回り、こちらでは林田君が高速盆踊りみたいになっている。

 三人で竜巻洗濯機で洗われている感じ。

 いき、くるしい。


「おーまわってる、まわってる」

 玄葉ちゃんが手を目の上にかざしながら言う。 

「この三人が空風性質ヴァータ強いみたいだねえ」

 お買い得ハンサムが水槽にいる魚を観察する目でミニ竜巻の中にいるぼくらを眺める。


「林田君、今、助けるですよ」

 メイちゃんが手を伸ばして、竜巻にふれようとした瞬間吹き飛ばされる。


「だーめだめだめ、手出しはできないぜ」

 玄葉ちゃんがメイちゃんの前に立ちはだかる。

「どうしてですか?」

 メイちゃんはヘッドドレスを直しながら睨みつける。

「3性質別対応試験プラクリティチェックだぜ? 空風性質ヴァータを持ってない奴は触れもしない」

 

「じゃあ、わたしは空風性質ヴァータ火水性質ピッタがあるから手出しはできるってこと?」

 日野宮ちゃんがすっと手を挙げる。

 玄葉ちゃんは口の端をあげる。

「そゆこと。たいがいの奴は二つの性質にまたがっているしな」


 ヘッドドレスをおさえたままメイちゃんは、口をとがらせる。

「メイは確かに空風性質ヴァータは弱いですが、ここまで役に立たないなんて」

「大丈夫だよ! アタシなんて完全なる水土性質カパだから、これから二つの試験は完全に役立たずだよ!」

 袂から取り出した煎餅をばりばりかじりながら丸様ちゃんが言う。

「だから落ち込まない方がいいよ、メイドさん」

 丸様ちゃんから煎餅を差し出され、メイちゃんは口を半開きにしてうなずいた。


 ミニ竜巻の中、ぐるぐる回りながら、なーんで外の会話がこんなによく聞こえるんだろ? これも魔術? なんてうすら痛い頭で考えていたら首根っこをつかまれた。

「なに?」

 首を90度ひねってみればキノコちゃんが震える手でぼくの襟元をつかんでいた。

「さっさと抜け出しましょう。お肌が乾燥してひび割れてしまうではないですか」

 キノコちゃんの乾燥した唇は皮がむけそうになっている。

「月野くん。オイル、もっていますか?」


「はあ? オイル?」


 この状況でキノコちゃんはなにをいっているのだろう。

 盆踊りポーズのまま林田君がうなずいた。

「そうか、そうだね。オイルですよ、この乾燥して動きの早い大気の乱れはオイルで相殺するのが一番です」

 そして再び内股をすりあわせて盆踊りと阿波踊りの中間の動きをし始める。

 

 なんだ? トイレにでも行きたいのか?

「林田君はトイレへ行きたいの?」

 林田君の顔が赤くなる。

「仕方ないでしょう? この台風のせいですよ。空風性質ヴァータは腰が重要な箇所だから、そうなるんです。漏れそうですよ、漏らしたら一生角吉に笑われますよ。あー、オイルだオイル。オイル撒いてさっさとこんなばかげた竜巻からでましょうよ」

「っていうことは林田君も普段おなか弱くてぴーってなるタイプ?」

「そうですよ! 腹弱は空風性質ヴァータ人間の特徴です!」 

 キノコちゃんもうなずく。「私も腹弱だし、ただいま尿意があります」

 なんか変な告白大会になってきたぞ。

「ぼくはむしろウンコ?」


 林田君が3回手を叩く。

「そんな話はどうでもいいからオイル。オイルですよ」

 自分から話しだしたくせに、小うるさい小学校教師みたいに仕切出すんだな。


 ぼくは首を振る。

「そんなもの持って歩かないよ」

 キノコちゃんはピアスを外してみせる。ピアスを掲げる指が震えている。

「持ってますが、ぎり一人前かな? っていう量です」

 林田君は天を仰ぐ。

「あー、無理だ。そんなんじゃ足りない。どうすればいいんだよ」


「只野先輩、助け船出しますか?」 

 玄葉ちゃんが言う。お買い得ハンサムは首を振った。

「さっきヒントはだしたからね。これ以上はあげない」

 むごいことを言いながら気弱な笑顔を浮かべてみせる。

「それでこそ3性質別対応試験プラクリティチェックだと思うんだよね」


「思い切った提案なんですが、漏らしてみるのはどうでしょうか?」

 キノコちゃんが恐ろしいことを真顔で言う。

「やだよ! 絶対にやだ。なんで男子高校生が部活とはいえ漏らさなきゃならないんだよ」

 林田君がつばを飛ばしながら言い返す。

空風性質ヴァータの座は腰や大腸にありますので、道具に頼らないなかなか良い案だと思ったんですがね」

「へーそうなんだ」

 ぼくは言う。



次は解決編(っていうか謎なのか?)です!

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