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旧魔王坂高校 魔術研究部!  作者: 四月一日ワタヌキ
4章 三つの性質をしってるかい? 
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●月野● オリエンとか言う前にぼくの話を聞いてくれ。

新章です。心象です。駄洒落です。すみません。

ちょっぴり文章量アップです。

 リンリンちゃんがふにっと笑ってオリエンテーションの開始を宣言した。

 リンリンちゃんが嬉しそうに飛び跳ねるたびに茶色いロングヘアが揺れ、いい匂いがした。


「いいですかあ? 今日はただお菓子を食べてジュースを飲むだけの会ではないのですぅ。魔法事故で部員を失わないためにも、あなたがたに3性質別対応試験プラクリティチェックを受けていただきますぅ」


 はあ? 3性質別対応試験プラクリティチェックってなんだよ???


 だけど、角吉さんが「ほーら、言ったとおりでしょ」と両手をひらひらさせながら一年連中に言う。


「ねえ、日野宮ちゃん、試験するとか言ってるけど!」

 ぷるぷる震えながらぼくは椅子にもたれかかったまま言う。

 腰に手を当てて行方を見守っていた日野宮ちゃんは当たり前のようにうなずく。


「伝統校だもの、これぐらいやるよね」

「え? そういうもの?」

「3性質別対応力がなかったら、簡単な魔術も構築できないしね」

 日野宮ちゃんは武者震いをして目を輝かせる。

 唇を引き締めたポニーテールの横顔は凛々しくてこんな試験は簡単だ、と語っている。


 キノコちゃんは表情も変えず話を聞いているし、丸様ちゃんは何個目かわからない鯛焼きに手を伸ばし「夕飯までには帰れるよね?」なんて言っている。 


 ぼくは生唾を飲み込んだ。

 試験だって? 対応力だって?

 豊田のおっさんのうそつき!!


     

「坊主は元の世界に戻りたいのか?」

 紺絣の着流しに着替えた豊田のおっさんは、お茶を手に尋ねてきた。

 ぼくはやっとありつけた大盛り牛丼の威力に負けて、畳にひっくり返っていた。


 「元の世界」というフレーズにぼくは上半身を慌てて起こす。

「戻れるの?」


 豊田のおっさんは懐から右手を出してあごを掻く。

「うーん。っていう話が伝わっている」

「なにそれ、超不安定」

 座卓に突っ伏す。


 豊田のおっさんは苦笑した。

「そういうな。可能性はあるんだぞ。魔術を研究する者には異世界を渡り歩く者がいるという」

 ぼくはタイムトラベラーを思い浮かべたけど、それはちょっと違うよね。

 異世界を渡り歩く人がいるんなら、ぼくを送り返してくれるかもしれないじゃないか! というかさっさと目の前に現れて送り返してくれないかな?

 擦り傷だらけの両手両足を眺める。


「魔術研究はアンダーグラウンドなものだが、坊主が本当に元の世界に戻りたいならばやってみる価値はあるぞ」

 豊田のおっさんはふうっと煙を吐いた。

「ど、どうすれば魔術研究している異世界を渡り歩く人に会えるの?」

 

 豊田のおっさんはパンフレットを差し出した。

「ここに転入してみないか?」

 白いパンフレットにはゴシック体で『旧魔法坂高校 学校案内』と書いてあった。

「なにこれ、高校? ぼくがここで高校生になるの?」

 豊田のおっさんがうなずき、新しい葉巻に緑の炎で火をつける。

「そうだ。神社でただ掃除したり料理作ったり禊ぎしてるだけじゃつまらんだろ」


 ぼくは首を振った。そんなことはない。

 何もすることがなくて新聞紙にくるまり公園のベンチの下で震えているよりは、ひっろい神社の落ち葉を掃いたり、氏子さんの直会のために味の薄い豚汁つくって美人奥さんに叱られたり、毎朝、胸毛の濃い豊田のおっさんの横で井戸水かぶっている方が数十倍いい。


「いや、すっごいやりがいある。豊田のおっさんの役にも立っているつもりだし」


 豊田のおっさんはため息をつく。

「坊主、おまえ真面目だな」

「そうでもないよ、ほんと」

 できることがこれしかないってだけだ。

 頬杖をついたおっさんがぼくの顔をじっと見つめる。

「坊主はあんまり人と話さないな」


 ぼくは黙り込む。

 膝の上に置いた両手を強く握り締めた。


「参拝者に会わないような早朝に掃除をしたり、昼間はわざと人気のないところで作業をする。行事のときは氏子さんに会わなくてすむように裏方仕事ばかりする。話しかけられても苦痛そうにしているな」

 おっさんの吐き出した煙がぼくの視界を曇らせる。

「そういうわけじゃないけど、やっぱりぼく・・・」

 

 怖い。

 またとんでもないところにとばされてしまうのではないか?

 ここの世界の人間でないとばれたらどうなるのか?

 怖すぎる。

 知ってる? この世界の人は「魔法肝」とかっていう内臓が余計に入ってるんだよ。豊田のおっさんが教えてくれた。それってどんな生き物だよ!

 

 それに、ぼくの家は、この世界では空き地だった。


「体の構造から違う人たちは・・・怖いかな」

 言ってしまってから豊田のおっさんの眉が寄せられるのをみて慌ててフォローする。

「いや、これは単なる偏見かも。あははは」


「じゃあ、偏見をぶちこわすために高校に編入しろ。ここの魔術研究部出身者に異世界を渡り歩ける魔術研究家がいるらしい。きっと力を貸してくれる」


 ぼくはパンフレットを手に取る。

「編入試験ってふつうの学科試験?」

「そりゃそうだ」

「魔術研究部って誰でも入れるの?」

 豊田のおっさんはぱちんと緑の炎を指先に灯し、笑ってみせる。

「部活だぞ、当然じゃないか」



 で、3性質別対応試験プラクリティチェック

 豊田のおっさんは嘘つきだ!!



はよう、試験やれ

って感じですね。すみません、すみません。


月野くんは結構おしゃべりなんで

脱線しまくりです。

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