○日野宮○ 新入生顔合わせ! 6
「月野くん、仲間ってどういうこと?」
わたしは言う。主従関係のある鳳凰に人間の仲間ができるなんて話は聞いたことがない。
「ぼくは仲間が少ないからさ、『仲間になってー』ってお願いしてみたの。そしたらオッケーだった」
「お願いされて聞き入れましたか。あのユムユムが」
キノコが腕を組む。アイロンがきっちりかかった白いシャツに皺が寄る。
月野くんは居心地悪そうに足踏みをする。片手をポケットに入れて視線が落ち着かない。
キノコは月野くんをまっすぐ見る。
「この歓迎会が終わったらば、少し話しましょう」
月野くんはテストを返却される生徒のように怯える。顔はひきつり、拳を胸元で堅く握りしめた。
「ぼく、何にも知らないでやっちゃったんだよ。悪気はないの! わかって」
「別に怒りませんから安心してください」
そういうとキノコは新たなキノコの山を口に放り込んだ。
「ウチも参加するぜ」
「どうぞ、ご自由に」
玄葉ちゃんは嬉しそうに机から飛び降りる。
「ワタシも参加してユムユム祭りしたいよ!」
よく見れば本日は紺袴に菊の地紋が浮かぶ黒の綸子の着物だった丸様はうれしそうに手を挙げる。
青い顔をした月野くんに肩をたたかれた。
「ねえ、日野宮ちゃん。魔法を使える人は魔法肝っていう内臓があるんでしょう?」
何言ってるんだ、こいつ。常識だろ、六臓六腑っていうではないか。
「魔法を使えるっていうか、無印の魔法力ゼロの人だって内臓はあるよ。機能が高いか低いかの違いだけだよ」
月野くんは胴震いをする。
「そうか、そうだよね。この世界の人は魔法肝があるんだよね。内臓の数が多いんだよね」
月野くんは胸元を押さえると窓辺の椅子に座り込んだ。
「ぼくのは魔法じゃない。ただの共感力だよ・・・」
また、妙なことを言っている。
月野くんは魔法が使えない無印であることに何か存在意義を見いだしていたのだろうか?
青い顔をして瞑目している月野くんは透けそうに弱々く見える。
わたしはなにがそんなにショックなのかわからない。わたしも異種共感みたいな穏やかな魔法だったら良かったのに。
まあ、人を羨んでも仕方がないことだけれど。
「はぁーい! ではこれからオリエンテーションを始めようと思いまーすぅ」
白いセーターで手の先まで隠したリンリンは舌足らずに宣言した。
これにて日野宮担当の章は終わり
明日からは月野くんでオリエンテーション回




