○日野宮○ 新入生顔合わせ! 2
「あ、どーも」
ツノ頭は陰気な笑みを浮かべる。
「いやいや、なんだか都内でも伝統ある魔術研究部のはずなのに、今の代はなーんかシュテキな感じですねえ」
握手のつもりか手を差し出してくる。
なんだ、この人。
って思ったけれど、わたしは小心者なので手を振り払ったりなんかせず、へらへら笑いながら手を握る。
「ぎょえ!」
片手が熱いものに触れたみたいに跳ね上がる。
「ふふふ、すみません。わたくし、魔法をうまく制御できませんで、それでちょっと魔術研究部に興味がね」
ツノ頭は猫背で下から見上げる形になる。本当にすまないと思っているのかな。
前髪を切りそろえ、耳にはルーズリーフみたいにピアスがついてる、スーパーマキシのスカートでも履いていそうだけど、普通に膝丈だ。
「角吉さん、それクラスの自己紹介と同じネタでしょ?飽きたよ」
本を閉じて眼鏡男子が言った。
「これからやってくる二年の新入部員全員にそれやるの?」
ツノ頭は肩をすくめる。
「やだな、なんで林田君はばらすんですか」
「つまらないから。もっとバリエーション増やしなよ」
林田君は眼鏡を押し上げる。
「仮にも新式魔術を開発したいと思っているんだろう? なら創意工夫は怠ってはいけない」
「へーい。水風船爆発させて迷宮壊そうとして失敗するくらい創意工夫しますよ」
林田君の顔に血が上る。
「な! あれは角吉さんもジーローもメイちゃんも賛成したじゃないか!」
角吉は耳をほじりながら横を向く。
「あ、そーっすね」
「君っ!」
林田君が角吉の胸ぐらをつかむ。
教室のドアが開く。
「だから、ユムユムをもっとさわりたいから一緒に帰ろうよ」
「いいですね。一緒に帰りましょう」
丸様とキノコだった。
わたしを見つけ丸様がぴょんぴょん飛び上がる。
「一日ぶり! 日野宮ちゃん」
そしてわたしの手の中に飴を押しつけ、小声になる。
「この餅飴はユムユムの大好物らしいよ。これでユムユムを撫で撫でできるんだよ。あげる!」
「ありがとう」
キノコと小さい子がハイタッチしている。
「おう! キノコ」
「はい、くーちゃん。今日はたくさん食べる気できましたよ」
そうか、知り合いか。キノコは転入生ではなく、一年からここにいるのだもの当たり前だ。
「丸様、月野くん見なかった?」
「知らないよ。クラス違うもの」
「わたしも違うけどさ」
辞書をまだ返してもらっていない。
いつのまにか一年生であろう新入部員が二人入ってきた。
一人は制服を絶妙に改造して襟元にフリルを忍ばせエプロンと頭にヒラヒラしたアレをつけている。
「わ! みなよ日野宮ちゃん、メイドさんがいる」
「あー、そうだね」
もう一人は紺の着流しに黒い博多帯を締め、赤い半纏を羽織った目元黒子男だ。
あ、旧魔王坂高校には制服は二種類ある。
一つは今、わたしが着ているような紺のブレザーに赤いネクタイ、格子のボックスプリーツスカート(男子は格子のスラックス)。校章は胸元につける。
素材は自由。ウールでも絹でも魔法素材でも好きなもので仕立てて良い。
もう一つは、目元黒子男が着ているような和服。
半襟は白で紺の無地か格子の着物に黒か赤い帯が指定。校章は一つ以上縫い紋で入れる。男女ともに紺袴はつけてもつけなくても良し。
こちらも素材は自由。ウールでも絹でも魔法素材でも好きなもので仕立てて良い。
正式な制服は実は和服。入学式始業式終了式卒業式はみんな和服だ。
普段から好んで着る子もいるけど、やっぱり少数だ。まあ、最近春だけど汗ばむ陽気だし、そのせいもあるのかも。
涼しくなったらば和服派も増えるかも。
一年生そろい踏みです
月野くんがちらっと着物と袴とか言ってましたがのですが、制服は2種あったのでした。




