●月野● 鳳凰は語り出す。2
月野くんの章がまだ続いてしまいました。
「ぼくに期待しないでよ。ヒーローやれる資質なんてないんだから」
ぼくは首をすくめて笑ってみせる。
「証明? まあ、気が向いたらやるかもしれないけど、こんな訳わかんない世界でさ、このぼくがなにをできるっていうのさ」
「できるぞ。現に昨日の迷宮を破って見せたではないか」
鳳凰のユムユムは言う。
ぼくは作り笑いをやめた。
「破った? あんなのたまたまだよ」
「違う。約束を破り、迷宮を破ったのはおまえだ」
鳳凰が大きな声を出す度にたき火の前に立っているみたいに熱くなる。
ぼくは首を傾げる。
うーん。どうなんだ?
確かに日野宮ちゃんも先輩方もみんな不思議がっていた。通常の破られ方ではない。因果関係がない。あまりにも不規則。
確かにそれってぼくっぽいかも。
通常ではない。因果関係がない。あまりにも不規則。
ただの高校生が異世界にやってきて、なーんの助けもなく生きていかなきゃいけないっていう不条理なサバイバル。
勇者のように異能の力を持つことも、偉い人が召還してくれたわけでも、かわいい女の子が勝手に好きになって助けてくれる訳じゃない。
ぼくにはなーんもご褒美は用意されていなかった。
そのまんまの普通のぼくでこの異様な世界を生き抜く。
タフすぎ。
死ぬかと思ったんだからマジで。
「なにもできぬ者にこうして頼みはしない」
鳳凰は辛抱強く繰り返す。
つやつや光る羽根は炎をそのまま固めたようで本当に綺麗だ。
こんな綺麗な生き物を見ることができただけでも、この世界にきた意味があったということかな。
「ま、期待しないでいてくれるんなら、やってみるよ」
ぼくは後ろ頭で手を組んだ。
「その約束を破って理を破るってやつ。どーせ、この世界じゃ暇だしね」
「おお」
「そのかわりお願いっていったらなんだけど」
にやりとぼくは笑みを浮かべる。
「ぼくの仲間になってよ」