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旧魔王坂高校 魔術研究部!  作者: 四月一日ワタヌキ
2 だから、一体ここはどこなんだ?
14/36

●月野● ぼくはヒーローかもしれない。3

お越しくださりありがとうございます。

平日は2回更新を目指します。

よろしくお願いいたします。

 旧魔王坂高校の正門を抜けると右手にスロープがあって、地下へ行ける。

 地下は大小様々、種類も様々な魔法生物を休ませることのできる大規模な魔法生物停留場パーキングになっている。


 旧魔王坂高校の校舎自体は、ごくふつうの白い鉄筋コンクリート三階建。細い道路を挟んで向かいには第二グラウンドと運動部室棟がある。

 第一グラウンドは校舎の西側、トウキョウ芸術大学とカシコミドコロ神社に面したところにあってグラウンドをぐるりと取り囲むように銀杏の木が生えている。

 秋になると、銀杏が黄色く色づいて、きっと風情がある感じになるんじゃない?

 

 ちなみに第一グラウンドと接している、トウキョウ芸術大学美術学部校舎からは、よく不可思議な臭いが流れてきたり、緑の煙が吹き出したり、ミニ爆発が起こってキャンディが降ってきたりする。

 そのたびに魔王高生はグラウンドに出て、物珍しそうに眺めたり、キャンディを舐めつつ原因を推測したりする。


 地下にある魔法生物停留場パーキングなんだけど、普通のコンクリートの駐車場かと思いきや、砂金水晶アベンチュリンがつららのようにぶら下がる洞窟になっていた。

 大自然と直結でこれは何か魔術をつかっているんだろうか?


「すっごい! すっごいよ玄葉ちゃん」ぼくは興奮して走り回る。

「まーな。アタシはこれが気に入って魔王高に決めたんだよ」

 玄葉ちゃんは伸び上がって、でかひよこの頭をぐりぐり撫でた。玄葉ちゃんのミニスカートが持ち上がって赤いひよこパンツが覗く。


「おお?」

 ぼくはパンツ見学のために思わず屈み込む。

 うん、なかなかいいね! 玄葉ちゃんの幼児っぽいお尻と赤いひよこパンツはいい相性だ。


「なにしてんだよ月野」


 玄葉ちゃんのコンバースがぼくの顔面にめり込む。

「え? なんにも?」ぼくは言う。

「覗かなかったか?」

 眉毛を釣り上げた玄葉ちゃんの顔が紅い。

 ぼくは純真な瞳で首を振る。

「ううん。なんにも、まったく、とんでもない」


「覗いてましたよ、パンツ」


 この声はもしかして。

「キノコちゃん!」

 ブレザーを脱いでパリッとした白いシャツだけになっているキノコちゃんが、大迫力の鳳凰の横に立っていた。モデル体型だから紺のハイソックスとローファーがよく似合う。

「くーちゃんの赤パンを月野くんが覗いていました」キノコちゃんがきっぱりと証言する。


 玄葉ちゃんの目つきが鋭くなり、助走をつけてぼくに跳び蹴りをかましてきた。

「ひよこトルネードキック!」

「うげぉっ」ぼくは呻く。


 ばっちり、蹴りは決まった。ちょっと胃液出たね。小さいけれど、玄葉ちゃんは強い。

 でも蹴りが決まる瞬間、玄葉ちゃんのパンツと柔らかそうな太股がばっちりみえたからぼく的には一勝一敗だ。


 魔法動物停留所パーキングの床は岩がごつごつして湿っているんだなあ。きっとどこかで地下水がわいているんだろうなあ

 倒れ伏したぼくは小さな石を頬にめり込ませながらつまらないことを考える。それというのもダメージが深すぎて動けなかったのだ。

「玄葉ちゃん、つよーい」転がったままぼくは賞賛する。

 こういう素直なところ、ぼくの長所だと思うんだよ。


「悪は滅びたな」

 仁王立ちで腕を組み玄葉ちゃんがうなずく。


 うん。でもさ、そのポーズだとまたパンツ見えちゃうよ?

「くーちゃん、おはようございます。昨日の新歓おもしろかったですよ」

「キノコも新入部員なんだよな。歓迎するぜ」


 玄葉ちゃんは鳳凰に手を伸ばす。鳳凰はまばたきをした後、冠毛をゆらゆらさせながら、玄葉ちゃんの手の甲にくちばしをこすりつける。玄葉ちゃんは声を立てて笑った。


「でもさ、キノコがまじゅけん部に入るなんて意外だったぜ?」玄葉ちゃんは言う。

「そうですか。私はこう見えて好奇心旺盛ですよ」

 キノコちゃんは爪先立つと、鳳凰の首に巻きつけていたトートバッグを取り外す。伸びあがったから白い太ももが奥まで見える。


 鳳凰がすかさずぼくの頭を足蹴する。

 黄金色の爪がこめかみにめり込む。イタイ。


「いけませんよ。ユムユム。月野くんは弱い生き物です」キノコちゃんがたしなめる。

「ええ?」ぼくは驚いて声を上げる。

「弱えーじゃねえか。なにびっくりしてんだよ」呆れた顔で玄葉ちゃんが言う。

「ぼくは男の子だから、弱いって言われておめおめと引きさがれないんだよ」

 と、寝転がりながらこめかみから血を流し主張するぼく。うん、みじめだって一応わかっている。


 キノコちゃんが氷の視線でぼくを見下す。キノコちゃんの絶対量域はユムユムの赤い羽毛で隠れている。

「ユムユムはこの学校でも一、二位を争う強い子ですから、ユムユムより弱いからといっても、月野くんは気にしない方がいいですよ」

「あ、はい。ありがとうございます」ぼくは言う。

「自分の力量も計れないものは幾ら都会とはいえ死にますよ?」

 キノコちゃんは恐ろしいことを真顔で言った。


 ぼくは笑おうとした。

「ははは、冗談きっついなあ」

「いや。冗談じゃねえぞ、月野」

 でかひよこをパーキングエリアにつなぎながら玄葉ちゃんが言う。

「去年、うちの学校で魔法事故で入院した奴は一五人だ」

「好奇心と学究心と無謀な人が多いんですよね」キノコちゃんがうなずく。

「死んだ生徒とかいるの?」

 恐る恐るぼくは尋ねる。


 玄葉ちゃんもキノコちゃんもうなずいた。


 ぼくはみるみる顔が青ざめていくのがわかった。そういう注意事項は早めに教えてほしんだけど!


高校生活が

ちょっとみえてきたかな?

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