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溺れるほどのキスを私はまだ知らない  作者: 志に異議アリ


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気になる


彼女は、変わらない。


俺の調子がいい日は、

本当に何もしない。


声が安定していれば、

水も置かれないし、

飴も出てこない。


ただ、仕事をしている。


それが、妙に気になる。


「今日は、何もないんだな」


そう思った瞬間、

自分が期待していることに気づいてしまう。


――違うだろ。


彼女は、仕事をしているだけだ。

俺のためじゃない。


分かっているのに、

視線が、自然と探してしまう。


話しかければ、ちゃんと返してくれる。

でも、それ以上は来ない。


「お疲れさまです」


それだけ。

声も、表情も、一定。


距離は、常に安全圏。


踏み込めば一歩下がるし、

放っておけば、必要な分だけ現れる。


……ずるい。


いや、

ずるくないからこそ、厄介だ。


他の人は、

好意を持てば、どこかに滲む。


声が弾んだり、

距離が近くなったり。


でも彼女は、

好意があるなら、

全部、内側にしまい込むタイプだ。


それが、

あるはずのない可能性を、

逆に想像させる。


「俺に興味がないなら、

ここまで気づかないだろ」


そんな考えが、

勝手に浮かんでは消える。


彼女は、

俺を特別扱いしない。


だからこそ、

特別に感じてしまう。


ある日、

長い収録が終わって、

皆が雑談している中。


彼女だけが、

一人で片付けをしていた。


声をかけようとして、

やめる。


理由はない。

ただ、

彼女のペースを乱したくなかった。


……気づいて、苦笑する。


もう完全に、

意識している側だ。


そっけなさが、

距離が、

抑えた優しさが、


全部、

俺の中にだけ、

静かに積もっていく。


――参ったな。


名前をつけるには早い。

でも、

無視できるほど浅くもない。


彼女が今日も、

何もしてこなかったことを、

俺は、なぜか覚えている。

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