「作品」という名の子供の出産
私たちは子供を生む。
苦しみながら、あれこれ考えて、
ああでもない、こうでもないと言いながら。
言葉を削り、文を重ね、
自分の中に眠る何かを、少しずつ形にしていく。
頭をひねり出して、子供を生む。
産みの苦しみとは、きっとこのことだ。
痛みと歓びがひとつになったとき、
ようやく、ひとつの「命」が息をする。
そして、生まれた子を前にして、私たちは戸惑う。
この子は本当に、私の中から生まれたのだろうか。
どこかで見たような顔をして、
それでいて、ほかの誰の作品でもない。
不器用で、弱々しくて、
それでも確かに、この手のひらで脈打っている。
愛しさと、恥ずかしさと、少しの後悔が胸に混ざる。
生まれてきた子供を見て、
「そうだ、これを書きたかったのだ」と思う。
いや、違う。
「これじゃまだ全然足りない」とも思う。
けれどその矛盾こそが、
生きることと創ることの、どちらにも通じている。
未完成なままでしか、私たちは子供を愛せない。
泣き声のように言葉を放ち、
笑い声のようにページをめくる。
誰かの手に渡り、誰かの心に棲みつき、
もう、私の手の届かない場所へ歩き出す。
それでも私は祈る。
この子が、誰かの夜を少しでも照らせますように。
この子が、私を知らない誰かの心を、
ほんの少しでも、やさしく撫でられますように。
たとえ忘れられても構わない。
けれど、どこかの誰かの胸の奥で、
ほんの一瞬でも灯のように輝いてくれたなら、
それだけで、生まれてきた意味がある。
暗い世にあって、星のように輝きますように。
そしてまた、いつか私の中に、
新しい命の鼓動が芽吹きますように。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
作品の感想を、★〜★★★★★で評価していただけると嬉しいです。
今後の創作の励みにさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。




