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女神さまの羽根〜貧乏令嬢は俺様神官に振り回される〜  作者: おくちょう ひま子
9 宴の終わり

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2 後始末その2

第9章(4話)とエピローグの全5話分を一気に投稿してます。

読む順番にお気をつけください。

「処遇ですか?」


 ジニアは果物の乗った皿をテーブルに置いてきちんと殿下に向き直る。対するアデルバード殿下はいつも通りのリラックスした雰囲気だ。


「そう。まず、リリィ・フロックスなんだけど。彼女の現状と女神さまの啓示とやらを聞いて思い当たったのは、母上だったね」


「王妃様ですか?」


 殿下曰く、王妃陛下にはとても強い『癒し』の『羽根』の力があるらしい。しかし力の強さ故に反動もあり、力を使った後は数日、下手をしたら何週間も眠り続けるため滅多に力を使うことはなく、その力自体も周囲には伏せられていた。だが今回の騒動を受けて王妃自身がその力を使うことを決めたらしい。


「もっとも、リリィ・フロックスは今肉体的に弱っているわけではないらしいから、母上との面会を通して精神的な治療を施していく予定だよ」


 強い力を直接使わなくても、相対して会話していくだけで少しずつ癒される効果があるらしい。その力はなんと精神面にも及ぶという。なので王妃は能力を活かすため若い頃に心理的な学問を習得していて、今回の件に関して適役となったのだった。


「そうなんですか…、少しでも良くなるといいですね」


「そうだね。母上はすでに一度面会に行ってきたんだけど、その時に興味深いことがあったらしいよ。彼女、小さな男の子の人形を大事そうにずっと抱いてたって」


 ジニアはハッとしてアデルバード殿下の目を見た。殿下の青い瞳は、悲しげに微笑んでいる。


「母上が『その人形は?』って聞いたら、『むかし、なくしたの』とだけ答えたらしい。…彼女なりに過去に向き合ってるのかもしれないな」


 ジニアは複雑な気持ちになり黙ってしまった。候爵の屋敷で見たリリィの肖像を思い出し、美しい少女が人形を抱いてる様を想像する。

 少女も、人形も、きっと髪の色は灰色だ。


「…で、肝心のバーチ・フロックスなんだけど。これは意見が割れたよ。神殿を荒らし、王族を害そうとしたんだから極刑か。それとも情状酌量で減刑すべきか」

 

 候爵はあの騒動の後、大人しく捕まって貴族牢に囚われていたそうだ。

 ジニアはあの日、自分を追い詰めていた候爵を思い返す。


「結局、一番の被害者のレオンが減刑を願い出たからこれが決定打になったよ。一部の領地没収と爵位は二つ降格して子爵に、ウィリアムにそれを譲渡してバーチ自身は自分の領地で労役に服する」


「…そうですか」


「まぁ神殿の襲撃で怪我人が一人もいなかったこともきいたかな。バーチはかなり力の扱いが上手くて、あの日の襲撃の記憶だけを消して素早く去って行ったんだ。神殿で皆眠っていたのはそのせいだったみたい。ジニアちゃんだけが運がなかったよね」


「ああ」


 そういうことだったんだ。確かにそれでは連れ去られた自分が一番間が悪かったかもしれない。


「…もしジニアちゃんが許せないなら、もう少し重い刑にしてもいいよ?」


 殿下が首を傾げて可愛く聞いてきたが、内容はとんでもない。


「えっ!?レオン様が決めたことならいいですよ!私は口出しする気ありません!」


「そうなの?つまんないねぇ」


 つまるとか、つまらないとかそういう問題ではない気がするが…。ジニアの気持ちを察したのか殿下はくすりと笑う。


「僕的にはね、弟との時間を奪われたんだから結構怒ってるんだよね。あーあ、被害者の一人のジニアちゃんが納得いかない!って反論してくれたらなぁ。色々もっと重くするんだけど…」


「しません、しませんよ!」


 笑いながら恐いことを言うのが恐い。王太子の名は伊達じゃなくてジニアはちょっと震える。


「婦女子をからかって楽しむのは殿下の悪いクセだのぉ。ほれ、貰ったチョコもお食べ」


 ずっと黙って聞いていた教皇さまが箱からチョコを出して助け舟を出してくれる。ジニアは有り難くそれを頬張る。チョコ、美味しい!


「まー、バーチはフロックスの領地で労役だから。リリィが元気になって外に出られれば、また会うチャンスもあるかもね」


 そっか。ジニアはチョコをモグモグしながら頷いてみせた。


「ところで、レオンはどこにいるの?ここじゃないんだ?」


 殿下は部屋の中をキョロキョロと見回す。

 ジニアは少し気まずくなりながら返事をする。


「あの…私まだレオン様にちゃんと会ってないんです。うつらうつらしてた時には何度か来てくれてたようなんですけど…。なんだかとってもお忙しいみたいで」


 虚勢を張って笑って見せたけど、ジニアは寂しさでいっぱいだった。




           ◎



「意気地なしですね」


 ローニーが言った言葉にレオンは片眉を上げる。

 それに気づいてるのかいないのか、ホリィは声を高くして話を続ける。


「ですよね。お互い惚れてるのは間違いない!…なのに肝心の言葉がなくて、いつまでもウジウジしてるんですよ、見てて歯痒いです」


「わかります」


 離宮の居間にて、ホリィはローニーに友達の恋話とやらを語って聞かせていた。すれ違う二人のもどかしい話、らしいがそれが完全な当てこすりであることをレオンは気づいている。

 知らんふりして紅茶を啜るが。


「もう、彼女のほうがすっかり落ち込んじゃって、可哀想ですよ」


 やっぱり聞いていられなくなって無言で席を立つ。


「レオン様、どこへ?」


 すっとぼけた声でローニーが聞くが、鼻でフンと返事しただけで部屋を出ていく。


「…やり過ぎじゃないですか?大丈夫ですかね?」


 ホリィが扉を見つめながら心配そうに言うがローニーは気にした風もない。


「これに関してはねぇ、やり過ぎくらいがちょうどいいですよ。だいだい、あの人が言ってくれないと話が進まねぇんだよ。…進まないですから」


 ローニーもちょっと苛立っているのか語尾が乱れた。確かに今出ている()が止まっているのは完全にレオンのせいなので、ホリィは何も言えなかった。

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