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女神さまの羽根〜貧乏令嬢は俺様神官に振り回される〜  作者: おくちょう ひま子
5 目指すは王城

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3 レオンから見たジニア

 

           ◎


 

 ジニアという娘は、レオンが知っているどの女の分類にも当てはまらなかった。

 女とは、神殿にいる下働き、奉仕活動で会う一般市民、そしてたまに顔を見せる押しの強い貴族。それしか知らなかった。ジニアは、そのどれにも当てはまらない。

 一応は貴族籍らしいが豪華なドレスは着ていないし飾り気もない。素朴といえばいいのだろうか。レオンが知る貴族の女とはとにかく違った。

 そしてレオンから見てジニアの第一印象といえば、これだった。

 

 ーー自分の目を真っ直ぐに見てくる娘。

 

 レオンは自分が恐れられていることを自覚している。人の目を見て知りたいことを望むと、その人が隠したいことまでレオンには見えた。幼い頃は興味本位で見ようとして、良くないことまで見てきたせいで人に避けられてしまうようになった。流石にやり過ぎたと反省して、軽率に人の隠し事を覗くことは今はしていないが。


 それを抜きにしても、自分は王族である。自分の目を正面から見つめてくる人間は珍しかった。こちらがジニアを見やると、やわらかな新緑色の瞳が見つめ返してくる。

 それが新鮮だった。

 

 ジニアはレオンの傍付きになってからもどこかマイペースで、のんびりとした娘だった。レオンは自分の立場と容姿が魅力的なことを理解しているので、ジニアが自分にのぼせ上がるようなら面倒だとも思っていたがそれも無く従順に仕えてくれる。

 素直で、自分に懸想しない、レオンの『眼』を恐れない娘。

 ーーいつの間にかジニアとの時間を楽しんでいる自分がいた。傍にいると居心地が良いのだ。

 焼き芋を熱そうに頬張るジニアが子どものようで微笑ましいと思った。街に行くと聞けば心配だったし、ナンパされるなんて言語道断。何故レオン以外の男といるのか。自分の傍にいるのがジニアの仕事であるべきだと強く思った。

 初めは確かに保護する目的とアデルバードに対抗する手段だと考えて傍に置いたのに。レオンの心の隙間に、ジニアという存在がするすると入り込んでいく。


 だから、自分を庇って矢を受けたと思った時の絶望といったらなかった。

 失うのが恐いと思ったのは初めてだった。ローニーとは違う。ローニーは己の腹心で、目的を同じくする同志だ。自分にもローニーにも覚悟がある。

 でも、ジニアにもしものことがあったら耐えられないと思ってしまった。あの緑の瞳が永遠に失われたら。

 自分がどうなってしまうのかわからない。

 だから、手放そうとした。

 今ならまだ引き返せる。

 まだ間に合うと思ったのに。




           ●





「へぇ。ジニアちゃんって言うんだ、可愛いね」


「ありがとうございます」


 親につけてもらった名前を褒められるのは嬉しいので素直に礼を言ったら、相手の男は何故か笑った。


「あはは、ジニアちゃん面白いね」


 それはよくわからなかったのでジニアは首を傾げた。

 ホリィに聞いた食堂に入ってとりあえずおすすめの定食を注文したら、入り口で見かけた騎士らしき男たちに話し掛けられた。相席していいかと聞かれたので、これ幸いと頷いて一緒にご飯を食べていた。


「ジニアちゃんはこの辺りの人?どこから来たの?」


 ジニアは今日、街に馴染むために神官服ではなく私服を着ていた。男たちにはジニアは平民の街娘に見えているだろう。王子に繋がるような情報がどこから漏れるかわからないので、神殿との関わりは伏せておきたかった。


「まぁそうですね。はい、この辺りです」


「ふぅん?オレたちよくこの辺に食べに来るんだけど、見かけないなぁと思って。君みたいな子がいたら忘れないんだけどなぁ」


「え?」


 私みたいな子?どういう意味?なにか自分に不審な点があるのだろうか。

 ジニアが内心ドギマギしていると、二人のうち茶髪の男が前に身を乗り出して尋ねる。


「ねぇジニアちゃんって騎士とか興味ある?オレら王城の騎士なんだけど。外門の中なら案内できるよ。もしこの後時間あったらどうかな?練習場とか、宿舎なら見学できるよ」


 国王が暮らす城は二重の門に囲まれている。外から城に向かう時にまず最初に外門があって、次に内門がありその中に王城がそびえ立つ。その内門と外門の間に常駐する騎士たちの生活の場があった。

 一般市民は気軽に立ち入りできないが、騎士の身内であったり商人であったり、許可があれば外門の中まで入ることは可能である。そして外門の中から全て含めて、王のいる「セバド城」と呼ばれていた。


「城の中に?」


 それはアデルバードにほんの少しでも近づくチャンスではないだろうか。ジニアは興味を引かれた。


「そうそう、城の中さ。良かったらオレらと行ってみる?」

 

 もう片方の黒髪の男もグイグイときた。

 少し考えたが、これは渡りに船というやつだ。ジニアは快諾しようとしてーーー



「行かない」



 低い声が断った。

 ジニアの前に座る男たちがポカンとしてジニアの背後を見上げている。急いで振り返ると、そこには頭から外套にすっぽりと身を包んだ王子がいた。


 えっ!?なんでここに!?


「おまえはどこにも行かない」


 うわ言のように繰り返して、王子はジニアの腕を掴む。驚いたジニアは何も言えず、王子に引きずられるようにして店の外に出される。


「あっ、おっお勘定っ…」


 お金払ってない、と思ったがどこからともなくローニーが現れて「ここは任せてください」と親指をたててから「んで、そっちは任せます」と言って店の中に消えた。


 あっ、多分だけど、任せないで欲しい!!私、お金払えます!


 王子は何も言わずジニアを連れて進む。静かなのが却って恐ろしかった。


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