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女神さまの羽根〜貧乏令嬢は俺様神官に振り回される〜  作者: おくちょう ひま子
5 目指すは王城

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2 友人とジニア



           ●

   



 不機嫌な王子に声を掛けてから離宮を出ると、ジニアは神殿の厨房へと足を向けた。食事を離宮へ運ぶのはジニアの仕事なので勝手知ったる道だ。途中、何人かの神官にすれ違うが皆ジニアを見るとすぐ目を逸らす。王子の傍付きであると認知されているので、嫌厭されているのだ。


「ジーニアっ!」


 もうすぐ厨房というところで、明るい声と共に背中を軽くパシンと叩かれる。


「いててっ」


「あらやだ、ごめん!そんなに力いっぱい叩いたつもりなかったけど、痛かった?ごめんね」


「ううん、違うのホリィ。最近なんだか背中がピリピリして。乾燥かな?」


「あらぁ、だいぶ寒くなったもんね」


 ホリィと呼ばれた少女は眉をハの字にして頬に手を当てる。高い位置で結ばれた赤い髪が左右に揺れた。

 ホリィは神殿の厨房で下働きをしている少女だ。ジニアが食事を運ぶ過程で何度か顔を合わせ、少し話す内に同い年ということがわかり仲良くなったのだ。ホリィは明るく屈託のない性格で、同い年の少女と仲良くなれたことが嬉しいジニアはホリィのことがすぐ好きになった。

 ホリィは明るい笑顔をジニアに向けた。


「でも、寒いのに今日も街に行くの?」


「うん。今はそれくらいしかできることが無くて」


「ふぅん?なんだか知らないけど王子様のお付きは大変だね」


 王子の事情を詳しく話すわけにはいかないので、ジニアは王子命令で色々動いてる、ということにしている。実際は王子と喧嘩中?になっているので命令どころか五日もろくに口をきいてないが。

 王子もジニアも意地っ張りであった。

 立ち話をしても邪魔にならない庭の片隅に出て、ジニアはホリィに話し掛ける。


「昨日、侍女に人気の喫茶店は混みすぎてて入れなかったわ。人気店って伊達じゃないのね、舐めていたわ。」


「ああ、そうだね確かに。予約とかもあったりするからね。」


「今日は王城の騎士の方たちに人気のお店ってわかるかしら?」


「騎士の?まぁわかるけど」


 ホリィは不思議そうな顔をしながら教えてくれる。変なことを知りたがるなと思っているのだろうが、そもそも労働階級にいる人は貴族の気紛れをいちいち理解せず従うのみなので(理解しようとするだけ無駄とも言う)王子の命令ならばと思って素直に教えてくれるのだろう。

 でもこれはジニアの独断である。アデルバードの評判を知るために、王城で働いてる人の話を聞こうと思ったのだ。残念ながらそれらしき人を見かけて声を掛けても、街での評判以上の話はまだ聞けていなかったが。

 ホリィは王都出身なので市街のことに大変詳しく、ジニアはとても助かっていた。何軒か人気の食堂を言うと、ホリィは怪訝そうな顔をした。

 

「まさか、今からそこに一人で行くつもり?ジニア」


「?ええ、そうだけど」


「えぇ…それはやめたほうがいいんじゃない?」


「え?なんで?」


 ジニアはきょとんとする。昨日の喫茶店に関してはそんなことを言われなかったからだ。


「だって騎士の人たちがいっぱいいるところよ?そんな所にジニアが行ったら危ないわよ。」


「?どうして危ないの?」


 ジニアは騎士といったら、実兄のエルムしか知らなかった。ついでに実家では家事育児に領主代行に明け暮れていたので、同年代の男子との交流もない。したがって、騎士団とは穏やかな兄のような人たちがいる所だと思っている。何故危険なのかまるでわからなかった。


「どうしてって…」


 ホリィは言い淀んだ。ホリィは奉公に出て長いし、街の娘として男性に対する危機感は自然と持ち合わせている。周りの友達も似たような感じだ。だから王都において場違いとも言えるジニアの純粋さに戸惑って、咄嗟に言葉が出てこなかった。


「あっごめんなさいホリィ。今日は混む前に早く行きたいの。わざわざ教えてくれたのにごめんね。今度お礼をするわ、それじゃあ!」


「あっ」


 言うが早いかジニアは小走りで行ってしまった。あっという間に庭から出ていってしまう。


「これは…どうしたものかしら」


 ホリィは教えてしまったことを早くも後悔する。騎士たちは位が上になれば名誉を重んじて軽率な振る舞いをする人は少ないらしいが、末端の若者はそうでもない。騎士はモテるから、女漁りに余念が無い人だっている。そんな飢えた獣の巣窟に、いかにも純朴そうなジニアが飛び込んだら…。


「やっぱりマズすぎるわ」


 ホリィは王子の傍らにいつもいる黒髪の従者を探して走り出した。自分が止めに行ければ良かったが、これから忙しい時間帯だから街にまで行けない。それに、王子の命令をどうにかできるのも多分あの従者だけだろう。



           ●





 ジニアは王都の市街にだいぶ慣れもう迷わないで歩けるようになった。人混みだけは苦手のままだけど、ホリィから聞いた店には真っ直ぐに行くことが出来た。


「ここね」


 そこは庶民向けの大衆食堂に見えた。昼の鐘が鳴ってからだいぶたっているが、人の気配は多そうだった。

 観察してる間にもジニアの横を体格のいい男の人が二人通り過ぎ店の中に入って行く。追い越し様片方の男の人と目が合ったが、身なりと体格からして騎士ではないだろうか。


「うん。ここ良さそうね」


 ジニアは足を踏み出して店のドアを開けた。




           ●




「は?騎士がたくさん通う食堂に一人で?」


「そうなんです、多分一人で行っちゃたんじゃないかと思うんですけど…」


 ホリィは運良く王子の離宮の庭で黒髪の従者を捕まえられた。王子は身分も高いし、時々妙な布袋を被ったりしていて恐いけど、この従者はどこか飄々として話し掛けやすそうな雰囲気をしていた。実際初めて話し掛けてみて、偉ぶったりしない態度にホリィは内心ホッとしていた。


「なんでそんなところにジニアさんが?」


「さぁ…王子殿下の命令みたいなことを言ってましたけど…」


「えぇ?レオン様の?おかしいな…」


「あの、あの子一人で大丈夫でしょうか。なんていうか…男の人がたくさんいるところに飛び込むのに、危機感が丸でなかったんですけど」


「ああ」


 従者の人はわかるわー、と小さく呟いた。


「ジニアさん、擦れてないですからね。それでいてなんかポヤポヤしてますから。アレはいい鴨になっちゃいますよねぇ」


 わかってくれるのかと思ってホリィは頷きながら勢い込む。


「ですよね!あの子自分が可愛いのにも無自覚みたいで。神殿内でも結構噂になってたんですよ、王子殿下の離宮に可愛い子が来たって!ああー、なんで騎士がたくさんいる店なんて教えちゃったんだろ。」


「なんだと?」


 低く恐ろしい声が響いた。ホリィは驚いて心臓が飛び上がったが、目の前の従者は何故かニヤニヤしている。


「おい、今なんて言った。ジニアがなんだって?」


 声のした方に恐る恐るホリィが振り向くと、そこには灰色の髪の魔王がいた。



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