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第六話

 ドッペルゲンガー。

 多重人格。

 ナルコレプシー。

 記憶喪失。

 若年性アルツハイマー。


 一日三十分だけ使用が許されているタブレットで思いつく限り片っ端から調べてみた。

 同時に二人の俺が姿を現しているわけではないから、まずドッペルゲンガーではない。

 記憶がすっぽり抜け落ちるという点では他のどれもありそうではあるが、あのテスト結果を見るにまったくの別人が俺の体を動かしている時間があるとみるべきだ。


 ということは、俺は多重人格だったのだろうか。

 最初に記憶が抜け落ちていると感じたのは、杏奈とのいざこざがあった時のことだ。

 謝っていないのに謝ったことになっていた。

 だがもしかしたら俺が気にしていなかっただけで、それ以前にもそういうことがあったのかもしれない。

 記憶が抜け落ちることがなかった時期もあるのは、何か法則性があるのだろうか。


 待てよ――。

 もう一つの人格があるとしたら、そこに意思はあるわけで。

 紙にメッセージを書いておけば、読むかもしれない。

 そうだ。ノートでやり取りができるんじゃないか?

 そういうのを前世で漫画か小説で見たような気がする。


 早々に寝たふりをして芙美がいなくなった寝室でそう思いついた俺は、こっそりとベッドを抜け出した。

 忍び足で自分の部屋に入り、机に座る。

 まっさらな自由帳を取り出すと、少し悩んで「だれ?」とだけ書いた。

 もし芙美や健治が目にすることがあっても、不審に思われないように。


 だが相手には十分通じるはずだ。

 これまで俺の記憶がない間の行動が破綻していないことからすると、きっと俺の行動は見ているはず。

 そうだ。記憶が飛ばなくなったのは、なんで俺は覚えていないのかと教室で呟いた後だ。

 俺が見ているものや聞いているものを共有しているが、記憶や思考は共有しておらず、その時初めて俺がその存在に気づいたことがわかって、身を潜めるようになったのかもしれない。

 だとして、何故また出てきたのかはわからないが。


 もっといろいろ書きたいような気もしたが、いざノートに向かい合うと言葉が出てこない。

 まあ、一気にあれこれ聞かれても困るだろう。これくらいにしといてやる。

 俺もあまりあれこれ受け止められる余裕もない。


 俺は自由帳を閉じて机のど真ん中に置くと、机に突っ伏して目を閉じた。


 さあ。

 出てくるといい。

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