雪のような存在②
今回は行間を細かく分けてみました。
眠くなりながら書いたので話になっているか分からないですが頑張って読んでくださいww
眠たかった目は限界点にまで見開き、心臓の鼓動は加速した。
思い続けた人が目の前に現れたんだ。嬉しさで体が勝手に反応してしまう。
ただ感情とは裏腹に視線を反対方向へとやってしまう。
ようやく好きな人に会えたのに何故視線を外してしまったのか。
それは俺がヘタレだったからだ。
みんなが彼女に注目している中、特に騒ぐこともなく近づいていき彼女と平然と話すことが出来ればどんなにカッコいいことだろうか。
だが俺には注目されている中話しかける勇気もないし、第一、彼女に話しかけれたとしても忘れられていたらと考えるとへこむ。まあ、一度しか会ってないのだから忘れていたって仕方がないのだが。
こんな感じで色々と考え込んでいるとチャイムが鳴る。
廊下にいた者たちは各々のクラスへと戻っていき、同じクラスのものは自分の席へと着く。
しばらくすると扉が開き、このクラスの担任になるであろう先生が入ってきた。
先生は教卓に立ち挨拶をして今日一日の流れを説明した。
説明後、俺達は廊下へ並んで体育館に向かったのであった。
体育館で入学式を終え、現在教室でクラスメイト達が自己紹介をしているところだ。
名前と好きなことや趣味などを話しているのだが耳に入ってこない。
というよりかは入れたくない。
だって彼女の自己紹介が来た時にいらない情報が混じってしまうかもしれないから。
俺の脳みその容量を全て使って彼女の一言一句を逃さないようにしたい。
自己紹介が進んでいき自分の番が回ってきた。
「と、時乃 正でふ!趣味は読書で、でふ!よ、よろしくお願いします」
自分の自己紹介を考えておらずテンパってしまい噛み噛みで喋ってしまった。
恥ずかしさのあまり座ったあと腕で穴を作って机に顔を伏せた。
周りからは少し笑い声が聞こえる。
その後も順番に進んでいき遂に彼女の番が回ってきた。
彼女は立つときに顔を軽く左右に振るときめ細やかな髪が靡き、一瞬だけあの日の光景を思い出させた。
「私の名前は雪氷 流水といいます。好きなことは綺麗な景色を見て回ることです。皆さん、これからよろしくお願いします」
軽く一礼をして座る。
自己紹介が終わったが誰も何の反応もしなかった。
いや、反応出来なかったんだ。
彼女が話す一つ一つの言葉が幻想的であり、同じ人間とは思えないほど美しかった。
そんな周りの反応など気にも留めず彼女は前を向いた。
先生も少しの間固まっていたが気を取り直して残りの生徒に自己紹介をするように促した。
今日のスケジュールが終わり放課後になった。
まあ放課後といっても今日は入学式だった為、昼の時間帯なのだが。
帰り支度を済ませ俺は席を立つ。
右の方に目をやると人が沢山集まってる。言わずもがな彼女の席周辺だ。
クラスメイト達は質問していたり、この後遊びに行かないかなど聞いているようだ。
もちろん自己紹介で醜態を晒した俺には声をかける人間などおらず、そそくさと教室を後にした。
校門を出て空を見上げながら帰路を歩く。
(あー、せっかく再会できたのに話しかけれなかったな~)
悔しさが心の中に広がっていたが安堵の気持ちも混じっていた。
もし彼女と話が出来たとしても今までの練習の成果が発揮できる気がしなかったからだ。
挨拶や軽い会話は出来ても内容を広げることは出来ない。
会話が続かなくなるとあの時のように逃げ出してしまうことが自分でも明白に分かってしまう。
色々と考えているうちに河川敷の川の傍までに来ていた。
この場所に来れば彼女が来てくれるかもしれないという淡い期待が体を自然とここに連れてきたのだろうか。
自分の直球過ぎる感情に少し呆れながらも雑草の上に座り込む。
あの日とは違い周囲には緑が広がり、暖かいながらも風が吹くと少し冷たい。
川を覗き込むと小魚たちが優雅に泳いでいる。
今日は疲れていたのか何だか眠くなってきた。
頭を鞄の上に乗せるようにセットして後ろに倒れこむ。
睡眠には丁度いい気温で尚且つ川から聞こえてくる子気味いい音が眠気を更に加速させた。
自然と瞳は閉じ意識が暗転した。
誰かに優しく包み込まれている。姿は見えないが誰かがそこにいて俺のことを抱きしめてくれている。
あまりにもその感覚が気持ちよくこちらからも抱きしめ返す。
そんな心地のいい感覚を身にまといつつ瞼がゆっくり開く。
寝ぼけた眼には日に焼けた人肌のような色をしたものが目の前を覆いつくしていた。
一瞬裸の人が目の前にいるのかと思ったがそれは違うとすぐさま思う。
鼻から入ってくる臭いが完全に獣のそれだったからだ。
意識がはっきりとしてきてもう一度それを見てみると、完全に犬だった。
それも完全に俺の上で腰運動をしている最中の犬だ。
その犬に俺は抱き着いているのだから傍から見ればとんでもない変態だ。
「うわぁ!!」
瞬時に飛び退き犬との距離を取った。
俺が離れてからも犬の腰運動は止まらない。
空を見てみると茜色に染まっており長い時間眠っていたことが分かった。
帰らなければと思い鞄を手に取り立ち上がる。
「こんばんわ」
突如透き通る声が後ろから聞こえた。
俺は声だけでその人物が分かる。今一番会いたかったが現状況では会いたくない人物だ。
恐る恐る後ろを向くと、そこには雪氷がいた。
読んでくださりありがとうございます
次回も読んでくれると嬉しいです