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第95話「尋問 -2-」

「し、失礼する。」

緊張した面持ちでドアを開く男の人族。入った部屋で待っていたのは椅子に座る魔族の美丈夫。ローテーブルに乗せられた珈琲の香りが漂う。ここは連合国ドゥナロープの首都ドゥナロープ。その都の大堂の一室。

「やあ、こんにちは。“元”連合国総代表『ダヴィド・ドンジェ』。」

自身の名を呼ばれた人族の男。彼は連合国を束ねていたが、その連合国は既に魔族の手に落ち、彼自身も肩書きを失っていた。

『バタンッ』

ドアの閉まる音。夜の寒い空気が閉じられる。部屋にいたのは美丈夫の魔族一人ではなかった。もう一人、魔族の騎士がいた。彼がドアを閉めたのだった。

「僕は魔王軍四天王の『鏖術』プラグマ・キシュルネライト。まあ、そんなに怯えないでくれたまえよ。」

プラグマが物腰柔らかに名乗った。

「俺はゼベルト。四天王の『樂剣』だ。」

ゼベルトは淡々と名乗る。ダヴィドには、自身を囲む二人の魔族が千を超える兵を殺した魔族だという実感が湧かなかった。逆にそれが彼の恐怖心を煽る。


「座ったらどうだい?」

「あ、ああそうさせてもらう。」

プラグマに言われ、ダヴィドはプラグマの前に置いてある椅子に座った。二人の間にはローテーブルが一つ。

「珈琲、飲むか?」

ゼベルトがカップに珈琲を注ぎ、ダヴィドの前に置いた。

「ああ、ありがとう。」

震える手で、ダヴィドは珈琲を飲む。味は感じられなかった。自分は今から何をされるのか、それだけがダヴィドの頭を支配していた。


「い、一体なんの用事で私を呼んだのだ? 君たちには連合国に関する権限を全て与えたはず…。『友好的外交』も淀みなく進んでいるはず。」

震える声で、ダヴィドは聞いた。恐怖が彼を包んでいた。

「そうだね。もう単刀直入に聞いてしまおうか。」

プラグマも珈琲を一口飲んで、真っ直ぐにダヴィドを見つめる。

「君は賢者と繋がっている。そして今回の戦争の勝敗も事前に知っていた。違うかい?」

「え?」

予想もしていなかった言葉に、ダヴィドは間抜けな声を漏らす。

「け、賢者とは、あの賢者で合っているか。勇者と聖女を導く…。」

「ああ、合ってる。」

ゼベルトが返答する。

「繋がるっていうのは、その、連絡をとっているとか?」

「その通りだよ。」

プラグマがダヴィドの言葉を肯定した。

「いや、それでもよくわからない…。私は連合国のいち代表者であり、いや元代表者か。それはどうでもよくて、賢者様と繋がるなど到底あり得ない身分なんだが…。あー、質問の答えだが、『賢者とは繋がっていない』となる。」

ダヴィドの恐怖は混乱に変わっていた。実際、賢者と繋がるとはそれほどあり得ないことだった。

「大体、戦争の勝敗が分かっているなら、あんな大勢集めるわけないだろう? い、今となっては烏滸がましいことだが、私たちは一応、魔王軍に勝つつもりだったんだぞ?」

しどろもどろになりながらも、ダヴィドは真っ当な意見を口にした。


「そうか…。ゼベルト?」

「嘘は言ってない。」

二人の魔族は眼を合わせ、首を傾げる。

「な、何か癇に障ることを言ったか?」

「いや、言ってない。もう帰っていいぞ、ダヴィドさん。」

「え、帰っていいのか?」

「ああ、むしろ帰ってくれ。」

プラグマとゼベルト二人に帰ってくれと言われ、ダヴィドは混乱したまま、部屋から出ることになった。そして部屋に残ったのは魔族二人。


「やはり、考察は考察に過ぎなかったのか?」

ゼベルトが椅子に座り、プラグマと顔を合わせ言った。

「いや、ダヴィドが知らなかっただけかもしれない。連合国は一国のうちに入らないことになっているのかもしれないし。」

頭を指で叩きながら、プラグマは考える。

「実際、アドナロ国王の時は、質問をした時点で様子がおかしかったし、質問に答えようとした時点で命を落としていた。アレは高度で強度な契約魔法を違反した時の罰則で間違いない。だから僕らの考察は全くの偽ではないはずなんだ…。」

「国王ほどの身分じゃないと確かめようがないっていうのがな…。あまりにも確かめる手段が薄すぎる。」

プラグマもゼベルトも頭を悩ます。フィリアルと勇者が解析するときがいつなのか、知りようがない。一刻もはやく自身らの考察の真偽を確かめ、フィリアルに迫るはずの死に対処しなければならなかった。


「焦っても仕方がない。とりあえず、僕らは確かめるべく進んでいくしかない。」

「そうだな。次の国はどこになるんだ?」

ゼベルトが珈琲を注ぎ足す。

「おそらく次に攻める国は『魔導国ザリグルク』、魔術に力を注いでいる国で、魔導学園都市が首都となり、その学長が国王とほぼ同じ地位を持っている。」

「なるほど。今回の戦争を鑑みて、戦争じゃなくて降伏をしてくれると嬉しいんだが…。」

珈琲を飲む二人。

「変わらずやっていくしかないね、僕らは。」

「ああ…。」

二人は珈琲を飲みきった。

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