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第75話「 対 炎天」

 アドナロ王国軍側の上空、女騎士が燃えるような赤髪を揺らしていた。七星二番『炎天のクロエ・クローズ』。彼女が魔族たちを焼き尽くすべく、魔法を制御し、その火力を保ち続けていた。

「…。」

兜に隠されるクロエの顔。それに現れるは無言、無心、無感情、無表情。燃え盛る炎とは対極的にクロエは冷徹に冷酷に魔法を操っていた。このまま魔王フィリアルが七星一番『ラファエル・ラファン』によって拘束され続けるのならば、戦争の勝者は人族となるだろう。それを確信しながら、クロエは炎天に自身の魔素を焚べる。


「昏天黒地。」

クロエの鼓膜に美しい男声が響く。一瞬、世界が暗転した。上空が暗黒に包まれる。光を飲み込むほどの黒がクロエを襲った。


「僕の究極魔術を耐えるか…。」

世界を黒に変えたのはプラグマ。龍に傷をつけた究極魔術をクロエに放ったのだった。不意打ちのため詠唱を省いたとはいえ、手加減をしたわけではなかった。しかしクロエはその究極魔術を食らっても生き残っていた。彼女は全身を炎で包み、黒で塗りつぶされることなく、その身体を保っていた。

「…。」

無機質な兜の中に無表情を隠して空に浮かぶクロエ。ただ、プラグマの魔術が無意味だったわけではない。クロエは自分自身を守ることを優先し、炎天の維持を中断した。プラグマは空の炎がさらに強く速くなることの阻止に成功した。しかし本人を殺さなければ、魔法は崩壊しない。このままでは魔族軍が焼き尽くされてしまう。


「炎刃。」

プラグマという敵を認識すると、無表情のままクロエは剣を抜いて斬りかかる。炎による推進力と炎を纏った剣がプラグマを焼かんとする。

「水刃。」

プラグマも魔杖に流水を宿して、炎の剣を迎撃する。お互いが発現させているのは初級魔術。しかしその級位に似合わない勢いの炎と水がぶつかりあった。炎と水が衝突し、水蒸気が2人の間に立ち込める。眼前の敵の力量をお互いが認識する。


「なるほど…、魔剣か。」

プラグマはクロエの持つ剣が魔剣だと把握した。魔剣。魔術の宿った剣。クロエのそれは使用者の魔素に反応して炎の刃を持つという、魔剣としては珍しくないものだった。

「灼炎。」

無言でクロエはその魔剣を振るう。単純な魔剣だが、クロエの赤色魔法によってその魔剣の攻撃力は計り知れないものとなる。

「濁流。」

プラグマは迫る炎を黒水の反流で迎え撃つ。2度目の炎と水の衝突。また大量の水蒸気が立ち込める。水蒸気が晴れると、そこには赤髪を濡らしたクロエと無傷のプラグマが現れる。水魔術と炎魔法の攻防はプラグマが優勢。


「焔纏。」

焔を全身に纏うクロエ。空に一筋の炎線を描きながら、クロエはプラグマに剣を突き刺さんと突進する。不利な遠距離戦ではなく、近接戦へと強引に持ち込む。

「禍流。」

当然、遠距離戦で有利をとっていたプラグマは近接戦を拒否する。禍々しく渦巻く流水で、向かってくるクロエを閉じ込めた。

「雨弾。」

プラグマの追撃。閉じ込められたクロエに水弾が雨のように降り注ぐ。中途半端な魔法使いならば、この連撃で身体中に穴が開く。


「劫炎。」

女声が響くと、一瞬で渦と雨が弾けて蒸発した。水蒸気の中から轟々と炎を全身に揺らめかせるクロエが剣を天に掲げながら現れた。

「私は勇聖教会・七星二番『炎天のクロエ・クローズ』。現在から貴様にキリア神様の炎罰を下す。」

名乗りを上げると、クロエの纏った炎がさらに温度をあげる。離れたプラグマにもその熱気は届くほどだった。


(敵の魔法の練度はハンネローレさんと同等かそれ以上。だが、負ける気はしない。)

プラグマは怯むことなく、魔杖をクロエに向け、迎撃体制をとる。爆発音と共に、クロエが大気を焦がしながらプラグマに突進する。

「断絶刃流。」

急接近するクロエの前に、プラグマは線状の高圧水流を発現させる。それは触れたものを水圧で切り刻み一刀両断する魔術。

「…!!」

無言のままクロエは炎剣を振るい、眼前に現れた水流を逆に斬り飛ばし燃やした。速度を落とすことなく、クロエはプラグマに突進する。


(線状の攻撃は無意味。ならば直対する点撃で!!)

「貫穿撃流。」

プラグマを魔術の手を休めることは無い。クロエの真正面に高圧の直水流が放たれる。

「…っ。」

クロエは剣の腹でその水流を受けようやっと減速する。しかしクロエは前進をやめない。水流を受けながら蒸発させ、小爆破を繰り返す火炎の推進力でゆっくりとプラグマに向かって進んでいく。

「チッ。」

舌打ちをして不満を表しながら、プラグマは魔術を維持し続ける。しかしその2人の距離は徐々に近づいていった。空に熱された水蒸気が立ち込める。


「灼炎・劫炎、混じりて極炎―。」

クロエが初めて魔詞を紡ぐ。彼女の纏う炎が煌々と赤く光り輝く。

「くっ…。」

プラグマは水流の勢いを最大限強める。しかしクロエという炎は鎮火しなかった。

「燎爛一閃。」

詠唱と共に振り抜かれた炎剣は水流ごとプラグマを焼き斬り飛ばした。

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