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第61話「急襲」

「いやあ、今日も平和ですねえ。」

「いいことじゃねえか。前に「龍の咆哮が聞こえたー」とかいう報告あったけどよ。結局なーんにも無かったしな、この一ヶ月。」

人族領北方、イグレブ山の麓。アドナロ王国の防衛拠点にて、若い兵士と先輩兵士が駄弁っていた。

「それにしても、こんな見張りだけで給料もらっちゃっていいんですかね。俺訓練兵の時の方がキツかったと思います。」

城壁からイグレブ山の方を眺め、異変がないか監視する。この拠点の兵士たちの仕事はとてつもなく簡単なものだった。

「それがこのイグレブ山防衛拠点の利点だからな。お前は当たりくじを引いたんだよ。」

「まあ、そういうことですよね。」

ハハハと新兵と先輩兵が笑う。実際、過去にイグレブ山から魔王軍が攻めてきたことは無かった。


「おい! テメエら、くっちゃべってんじゃねえぞ!」

「は、はい! すいません、兵長!」

いきなり現れた兵長に叱られ、新兵は慌てて声を上げる。

「「はっはっはっ!!」」

焦る新兵の姿を見て、兵長と先輩兵が笑った。


「え、え、なんですか?」

「いやいや、そう畏まるな新人。」

「ここの伝統だよ。」

新兵に先輩兵が話しかけ、そこを兵長がいきなり怒鳴りつける。アドナロ王国・イグレブ山付近防衛拠点の伝統行事だった。

「ええ〜、やめてくださいよぉ。びっくりしたぁ。」

「まあまあ、これでお前もこの拠点の一員ってことでな。」

兵長が新兵のかたを叩いて笑う。

「あれ、兵長。今日いつもより機嫌いいですね。なんかいいことあったんですか?」

先輩兵が兵長の顔を見て、彼のいつも以上の喜びように気づいた。


「お、わかるか? 見てくれよ、これ。」

兵長が服の中から、小瓶を取り出した。

「なんですか? それ?」

「酒だよ、酒。」

小瓶を揺らして、兵長が小声で言う。

「え、酒って…。」

「「声がでけえって。」」

兵長と先輩兵が新兵の頭を手刀で叩いた。

「娘がよ、送ってきてくれたんだ。お前らも夜一緒に飲むか?」

「「いいんですか!?」」

「あったりめえだろ。酒は一人で飲むより、誰かと一緒に飲んだ方がうめえんだよ。」

「「よっ、兵長!」」

格好をつける兵長を新兵と先輩兵が持て囃す。


『―ドガッン!!!!』

談笑していた三人の鼓膜に爆発音が轟いた。

「て、敵襲!! 敵襲!! 魔族、魔族が攻めてきたぞー!!」

キーンという耳鳴りが収まると他の兵たちの声が遅れて聞こえてきた。

「嘘だろ…!?」

三人のうち誰かが無意識に呟いた。城壁の一角にて、真紅の炎が拠点の全てを焦がさんと轟々と猛っていた。そして敵襲は嘘ではなく、城壁向こうの森から、魔族の軍隊が迫り来ていた。兵たちは予期せぬ突撃に狼狽えて、まともに防御体制が取れない。数十分もたたないうちに、アドナロ王国・イグレブ山付近防御拠点に魔王軍が侵入した。


ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ー


「突撃ィィィ!!!」

魔王軍の戦闘を往くのはバルトルト。斧槍で人族兵を蹴散らして進んでいく。

「バルトルト様に続けー!!」

「ウォォー!!」

「人族を殺せええ!」

魔族の兵たちはバルトルトの背中に続く。急襲により防衛がままならない人族に対して、魔族たちは体制を整え、激流の如く勢いで拠点を制圧していった。


「あの銀髪大男を止めろ! 魔術、撃てい!!」

人族兵もただ殺されるだけではなかった。防衛隊長と数十人の魔術使いが弾岩と火矢をバルトルトに打ち込む。


「破ッ!!!」

バルトルトが迫り来る弾岩と火矢に斧槍を振るう。硬化魔法により弾岩と火矢が固まり速度を失い、斧槍に砕かれた。


「な!? 全員、銀髪大男は狙うな! その他の兵を狙え!」

防衛隊長が命令を変える。バルトルトではなく、その他の魔族兵を弾岩と火矢が襲う。


「お返ししまーす!」

声と共に、両軍間の空中に紫色の魔法陣が8つ現れる。その魔法陣に触れた弾岩と火矢は向きを変えて、それらを放ったはずの人族兵たちに向かって飛来していった。


「た、隊長!! 魔術が跳ね返ってきます!!」

「何ィ!?」

本来、魔術はそう連発できるものではない。魔詞を唱えたり、魔用石を砕いたりする事前準備が必要。人族兵たちは向かってくる自身らが放ったはずの魔術を受けるほか無かった。

『―あああっ!!』

人族兵の悲鳴が戦場に響き渡る。


「いいぞ、レオン!」

「はいはい、ありがと。おじさんは眼の前の敵に集中してね〜。」

跳ね返った魔術はレオンの転移魔術によるもの。それをイザークが敵と交戦しながら褒めていた。ヴェンデルが極級魔術で城壁を砕き、バルトルトが先陣を切って拠点内に一般兵らと共に侵入する。そのバルトルトと兵らをレオンとイザークが援護するというのが魔王軍の戦略だった。


 アドナロ王国のイグレブ山付近防衛拠点は陥落した。魔王軍の勢いは、戦い慣れていない人族兵たちの手に負えるものではなかった。バルトルトに勝てる人族兵などおらず、魔術もレオンの手によって無効化される。イザークを含めた一般兵も、人族よりも魔族の方が格段に強かった。さらに魔王軍は序列上位者をまだ控えていた。人族兵らが防衛拠点を守り切れるはずなかった。


「拠点隊長は、小生、魔王軍のバルトルト・ベルガーが殺った。人族兵共よ、武器を捨て降伏しろ!! もし抵抗するならば殺す!!」

バルトルトが勝鬨を上げた。

『ウオオオ!!』

『勝ったぞおお!』

『魔王軍バンザイ!』

魔族兵たち勝利を喜んだ。

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