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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

作者: 星宮心彩

どうも、星宮心彩と申します。

趣味全開の処女作は短編小説「酒」(シュ)です。

不慣れなもので表現が一々ややこしいですが、是非とも

読みながら考察してみて下さい。一部自決の表現があります。

 左様なら、左様なら、さようなら。

貴方の死に乾杯を、一杯の酒で渡しましょう。

桃の花見て花見酒、宙吊りの皆既日食は月見酒。



「この酒が蒸発しない様に、このたった一杯は

”貴方の命”である。この酒が乾ききった時、(すなわ)

死を意味します。くれぐれもお気を付けて。」

男が云う言葉一つ一つはあまりにも奇天烈(きてれつ)で、

理解に少々時間を有した。男は草臥(くたび)れたシャツを着ていて、

この部屋はただの和室だ。灯がなく少々暗い。

……机、そして酒がある。

(しか)し、()れら以外、我等以外この部屋と

いうよりかは空間そのものに何も無い様な感じられた。

廊下と面している襖は開いていた。

何時から、否……はて、そも此処(ここ)は一体何処なのであろうか。私は今迄何をしていたか?

状況を鑑みるに、(これ)は夢にきっと違いないのだろう。

だが、確たる証拠も無い。眼前の妙な男は薄ら笑いで此方を

しとりと静観していた。つくづく不気味な男と思う。

この様な悪夢を見るのは久し振りという感覚では無い、が

然しこの男、どうにも不可解に現実味を帯びている。

通例、この様に使う事は有るのか……

___現実味、不思議と其の言葉は私の心内で、

カチリなどという堅く合致の意を示して音を鳴らす。

嫌な汗が眉間を伝い、鼻先に(まで)到達する。

あっ、と気付くがこの部屋は暑い。夏の蒸し暑さだとかいう

蒸気を帯びたもんじゃ無い。

常軌を逸した、何か……異なる暑さ。音のしない煙の様な

炎が全身に纏わり付いているかの様である。鬱陶しい。

よくよく見れば、薄く白く霧の様な()()がこの

家中に漂っている様で、触れても濡れる感覚というのは

無いが、この重く暑い乾燥した何かがずぅんと徐に動くのを確かに、肌で感じた。この様な湿気も無い暑さでは、

この酒が蒸発して仕舞うのでは無いか?

ふと、そう思い立った。

先程の男はとうに立ち去ったのか居らず、ただ、今すぐ私は

この邸から駆け出して、()()()()

逃げ出さなければならないのであろう、とだけ

只管(ひたすら)……ああ、感じていた。

 そうと解れば、グズグズともしていられまい。

心做(こころな)しか先刻より幾らか水かさが減っているような

こうもしていられるか、急がねば。

今、今はただただ、急ぐのみである。走れ、(はし)れ。

と言っても皆目見当もつかない、一体全体

脱出の手立てとは何なのだろうか、思案すれば

する程迷走していくばかり、取り敢えず私はこの家の事を

知るべきだろうと思う。出口も知らずに出れるものか。

 廊下を出れば何か分かる筈、そうは思っていたのだが……。

あれは? 暗がりの最奥に、彼岸花の描かれた襖がある。

気になってみて、ふと其所(そこ)へと手を伸ばす。

そうか、よりにもよって「彼岸花」とは。

男は彼岸花に嫌悪感を抱いていた。とはいえ頗る機嫌が悪い

という訳では無かった。其れは男に、抱く嫌悪感に勝る程

罪悪感。複雑に入り交じったネガティヴの中のなか。

哀情に近しい思いが複雑ながらも確かに感じられたから。

そうして中に入って見れば、これまた机。と本……。

「ふむ、少し劣化しているものの、読めそうだ。」

手に取りはらりと(ページ)を捲ると、どうやら小説だ。

ふと、あぁ、これは私が書いたのでは無いか? と感じた。

そう、筆跡やインクの掠れ、古紙の匂い。

思い出したぞ。そうか私は小説家だ、恐らく之は私が書いた

作品の内の一つだろう。所々違う様な気もするが、とやや

興奮気味に、次へ次へと頁を捲り続けていると一通の葉書が

足元へと落ちてしまった。拾い上げて読んでみると、

ある男が吊って自決をした等々の内容を言伝に聞いた為

確認したいと云う内容であった。葉書の受取人の友人で

あったのだろうか。確か私にも友がいた。多く交流のあった

人間でなかったが、だからこそ一つの縁を大事にしていた。

唯一人の誰よりも嫌いな男だ。最近は会わないな、確か

遠方に越してしまってからか。何通か手紙は交わしたが。

つくづく不気味な男だった、やる事(すべ)ては丁寧で

定評のある男であったが、どうも笑顔作りが苦手で薄ら笑い

が気味悪がられていた。皺の多いシャツと少し長めの襟足

癖の付いた毛髪やそれ等特徴に似合わぬ、おそろしく美貌の

(おもて)は人間味が薄く、昔っから嘲笑する大人達は、心の内では

彼奴を酷く警戒し、血も通わない様な色白で怪談じみた彼を

何処か忌避する様な印象であった。

其奴(そいつ)が私の親友だ。

この御友人も心配しているのだな。

……私にも家族はいた筈だ。一刻も早く帰らねば。

 足取り引返すと、先刻見えていなかった突き当たりが

仄暗くも月明かりで少し見えやすくなっており、姿見が

置いてあるのが微かに見えた。

「何なんだ、この鏡どうなっているんだ。」

自身の姿が逆様に見える。夢であるからというにしても、

奇妙だ。確か夢とは記憶の整理と云う話を聞いた。

「私はこんな物見たことないが。実際に見たとは限らないのだろうか……首元の火傷痕、花みたいだ。」

男は爛れた箇所を指先で縁取る様になぞってみる。

 そうだ、家が放火で燃やされて、燃え落ちた梁が寝ている

私の首元に……、忌々しくも御陰で私は何とか起きれた。

然し、私の家族は皆別室。真夜中で、夜に溺れる様な思い

であったこと……忘れて仕舞いたかった記憶だが。

彼岸花が踊っている様な業火、それに心こそ焼き尽くされた

ものの魂の器となる、私のこの身体は刻印を呪いが如く

しかと刻み付けられたのみであった。之を出鱈目(でたらめ)にも皆は

奇跡と呼び、この私を仕合わせなどと決め付けた……。

徒花の様な小説家で、私自身、穀潰しの様なものだろうと

感じていた。そして、何時しか愛情は冷酷に。

冷ややかな目が互いの愛情が薄れる様を____

(しばら)くは寂寞(せきばく)の日々を過ごしていた。

小説のシナリオを思案せど、良案浮かばずに。指先で

たたんと机上を叩いては、僅かに堕落していくばかりの私。

しかと睨んでいたことだろう。燃え尽きた家の残灰を掬って

安堵した私を、私は、本当に。本当に嫌に思って、

震える脚で立ち上がり、覚束無い足取りに

時雨か自身の汗か涙かさえ解らない程、ぐしゃぐしゃに

顔面を濡らしながら、私、庭の桑の木に。

 もう何も迷う事は無い。下駄箱の上には少し小ぶりな

実のついた桑の木の枝が一本、低めの花瓶に活けられ、

眼前には玄関。木製の引き戸で、昔ながらの日本家屋だ。

履いていた、炭が擦れて黒ずんだ革靴を脱いで。

引き戸の凹みに手を掛けた。

 終に邸を出た。男を手招くは、良く知る人物。

記憶の彼奴は、顔もロクに思い出せず、黒ずんだ穴が顔に

ぽっかり空いていたが。そうか、私の信友よ。

逆様の桃の木と、風に煽られて宙へ舞う花弁や花明かりが

とても雅で只管に美しい。桃源郷には桃の花が溢れている。

何時しかお前にそんな陳腐な設定(シナリオ)を語ったね。

死後、酒を呑み交わす様な仲である我等だけが……。

誰よりも嫌いで、何よりも信頼していたお前と私だけが

逝ける永遠の物語(桃源郷)

「嗚呼、左様なら。我が信友_____」

 酒は最初から乾ききっていた。

先ずは閲覧有難う御座いました!

処女作である上、小説のルールもロクに知らない趣味で物語を

書いている様な人間ですので、読みにくい箇所や理解に苦しむ

様な箇所が多々あった事と思われます。

ですので一部解説を致したいと思います。

まず、大前提として主人公の男は開始時点で亡くなってます。

「酒は貴方の命である」そして「酒は最初から乾ききって」

この二つの要素から、分かりずらくも初めから男が死んでいた

と言う事は分かるかと思います。当初より考えていた設定では

この物語全体は、桑の木にて首・り自決をした男の歪んだ

走馬灯の様な世界です。ですので全焼した男の家(邸)などが

存在しているのです。そして桃源郷には、桃の花が咲いている

のでは無いだろうか。という想像から、彼等の桃源郷として

男が生前、信友にのみ聞かせた走馬灯の物語に死後逝ける

様にしていた。とはいえ、生前の時点では本当に桃源郷に

逝けるとは考えていなかったですね。少なくとも主人公は。

そしてある小説家の物語(桃源郷)に永遠に囚われる。

酒がもし乾いておらず、其の時に出られたなら、正しい手段で

黄泉へと向かう事が許されたかも知れないですね。

永遠の桃源郷、もしかすると彼の信友もあるいは……

桃の花見て花見酒(桃源郷)

宙吊りの皆既日食は月見酒(首*りと酒の走馬灯)

本作題名の「(シュ)」には”酒に溺れる”という意味も

あります。意味は複数あるものの、夢中になって本心を失う。

という意味等があります。男の人生か、或いは”誰か”の事か。


因みに作中に登場する「桑の木」花言葉は「ともにしのう」

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