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HERHALEN  作者: 鬼子
6/6

6 終話 『初まりの始まり』

 呼吸を整え頭を整理する。

 化け物にダメージはしっかり入ってる。

 雌型を殺せたし、雄型も殺せるはずだ。


 きっと上手く行く。


 服を少し破き、右脚の出血している箇所に巻く。

 その後に部屋の扉を少し開けた。

 

「よし、廊下には誰もいない」


 廊下を全力で走り、屋敷の出口を目指す。

 長い廊下。曲がり角の多い屋敷だ。

 注意しながら進まなければ戦闘の時に上手くはいかないだろう。


 屋敷から飛び出て、あるところへ向かう。

 

 行き着いたのは小さな服屋だ。

 血まみれになった服を変え、気持ちに整理をつける。


「よし、屋敷に戻るか・・・」


 ゆっくり歩きながら屋敷に戻る。

 一歩一歩砂利をしっかりと踏みしめる感覚が足のそこから脳まで到達する。


 ザッザッと音を立てながら屋敷の前まで行き、見上げる。


「・・・よし」


 その時背後からパキッと乾いた木を踏む音がした。

 ゆっくり振り返るとそこには一体の化け物がいる。


「こいよ、殺してやるから」


 俺はそう呟き、走り出した。


 屋敷には扉がない。

 穴はデカく、1人だとかなりの助走が必要になる。

 気づかなかったら落下するのは必然だ。


 穴を飛び越え、転がるように屋敷の中に入る。

 すぐに起き上がり2階への階段を駆け上がりショットガンを入り口に向ける。


「入ってきたら殺す」


 化け物の姿が見え、引き金を引こうとした瞬間。

 ガラガラと音を立てて化け物は穴に落ちて行く。


「クソッタレ・・・」


 ショットガンを下ろし、後ろを振り返ると別の個体が立っていた。


「何体いるんだ⁉︎」


 すぐにショットガンを構え、銃口をそいつに向ける。


 すると化け物はゆっくりと首を振った。

 それを疑問に思い、ショットガンの銃口を少し下に下げた瞬間、奴は走り出した。


「あ、クソ待て!」


 雄型の個体が走り出し、それを追いかける。

 長い通路だ。曲がり角も多い。


 雄型の姿が曲がり角で消える、さらに追おうと追跡をつづけた結果、角で雄型から体当たりをもらう。


 バタンと倒れ俺の上に乗り、化け物は腕をショットガンの形状に変化させる。


「ふざけんな!」


 変化した右腕に反応し、ショットガンの銃口を右肩に押し付ける。

 そのまま一気に引き金を引いた。


 化け物が痛みに呻き、右肩を押さえながら走り出す。 なんで撃つのを躊躇った?

 何かあるのか?

 化け物のほうが確実に早く撃てたはずだ。


 何か理由があるのかもしれないとそう思うが、家族を殺した罪は償ってもらわなきゃならない。


 化け物を追いかけて、走る。

 片腕がないせいか、かなり速度が下がっている。


 すると視界にいる化け物はある部屋に入って行った。


 俺も続けて入ると、研究室のような場所だった。

 薬品の匂いと、見たこともない機械がズラッと並んでいる。

 壁には研究の資料が沢山貼られている。


「実験?」


 ガサっと音がして、化け物が姿を現す。

 出血で動けなくなったのか壁にもたれ、背中を擦りながらその場に座る。


 化け物の左手には何枚かの資料が握られている。

 化け物は俺にそれを見せるように伸ばしてきた。


「知らねぇよ」


 伸ばされた左手を振り払うと、資料は床にバラバラと落ちる。

 化け物はそれを見て落ち込んでいるようだった。


 ショットガンを構え、照準を化け物に合わせる。


 すると化け物は、自分の左手で自分自身を差し、その人差し指を俺に向けた。


 俺は化け物が、お前は俺を殺すのか?と聞いているのかと思った。


「そうだよ。仇だ、家族のな」


 そう言って引き金を引いた。


 壁に化け物の血がベットリとついている。

 赤い血だ、まるで人間のような。


「終わったか・・・最後はあっさりだな・・」


 ヒーローものみたいに、長い戦いの末終わりましたってことはないらしい。


 帰ろうと振り返ったその時、資料のことが頭に浮かんだ。

 殺されそうな瞬間に、資料を手渡そうとしていたんだ、普通ならありえない。


 資料を拾い、懐中電灯で照らしながら目を通す。


「なんだこれ・・・」


 なんともイカれた資料だった


「HERHALEN実験?」


 資料にはそう書かれていた。

 輪廻転生・・・時間のループについて、ループの最初はどこから、そして誰から。 今いる自分は何人目の自分か・・・など変な資料だ。


「なんでこんなもの渡そうとしたんだ?」


 資料をグシャっとポケットに押し込み、屋敷を出る。

 街を出る時には、入った瞬間の嫌な違和感がなかった。


 車に乗り込み、地図を開いて家を目指す。

 アクセルを目一杯に踏み、帰路を辿る。


 どのくらい走っただろうか。

 家からはそう遠くはないところで車が止まってしまう。


「やべ・・・ガソリン切れか・・・」


 銃は持っていても意味がない・・・車のトランクに置いて、後は歩いて家を目指そう。


 車を降りて歩き出す。

 歩きだと遠いが、歩けない距離じゃない。


 一歩一歩、しっかりと歩いていく。

 今の時刻は何時くらいだろうか、確認すると15時ごろ。いつもの生活なら、まだ仕事中だな・・・


 空が鈍色で重い。雨でも降るんだろうか。

 そういえば、家族が殺された日もこんなだった。


 色々考えながらも家を目指す。

 右脚の傷が開き、血が滲み、垂れる。


 それから数時間。

 時刻は17時過ぎくらいだ。


 家の前についた。

 

 あんな事件があったのに、何故か見違えるほど綺麗になっていた。


「誰かがやってくれたのか?」


 血を垂らしながらも痛む脚を引きずり、玄関に手をかける。

 

 ドアノブを捻り、扉を開けるとそこには化け物の家族がいた。


「は?」


 なんで、家は間違いなく俺の家だ。

 こいつらなんでいるんだ⁉︎

 確かに、この時間帯で住民が見えなかった。

 こいつらの仕業か?


 頭のなかを複数の意見が飛び交う。

 一つ違うのは、この化け物は俺を見ると逃げるように離れていく事だ。


 キッチンに行き、ナイフを取り出す。

 場所も並びも変化はない。俺の家で間違いないはずだ。


 雌型の化け物は1番小さい化け物を庇うように抱きしめている。

 動きも遅く殺しやすい。


 何度か刺し、倒れたところで小さな化け物を取り上げると、それに手を伸ばし雌型は叫んだ。


 それを見ながら小型の化け物を刺し殺す。

 

「化け物でも親の愛情ってのはあるんだな」


 その時、視界の外からガタガタと音がする。

 倉庫に行ったのか?

 ここが本当に俺の言うなら、銃が隠されている。

 まずい・・・


 すぐに走り出し、銃が隠されているであろう棚の前で中型の化け物を捉え、首をナイフで切り開く。


 ドロリと鮮血が溢れ、中型は痙攣しながら絶命した。


 母親と思わしき化け物のそばに行くと、まだ息がある。

 小型を見つめながらなんとか這い寄ろうとしていた


「殺しといてやるか、あの世で会えるだろ」


 ナイフを突き立てようとした瞬間、玄関の扉が開く。

 音に惹かれて玄関の方を見ると、殺した化け物より一回り大きい化け物がいた。


「でかいな・・・」


 俺がつぶやくと、化け物が叫んだ。

 何を言っているのかわからない。

 

 それに、この化け物はチカラが強そうだ。

 ナイフ一本じゃ勝てる気がしない。本能が危険だと言っている。


 俺はナイフを持ったまま家を飛び出して、走った。

 走って走って、疲れるまで走った。


 俺が帰った家は俺の家ではなかった。

 場所はあっていたはず。

 何かがおかしい。


 でもわからなかった。


 車まで戻り、武器を取る。

 アイツはきっと俺を追ってくる。


 あのゴーストタウンなら、まだ俺に地の利がある。

 追ってきたら返り討ちにして、本当の家に帰ろう。


 ショットガンを背負い、懐中電灯を持つ。

 歩きだからかなり遠いが、アイツよりかは早く着くはずだ。


 そうして俺は、ゴーストタウンを目指すことにした。




 HERHALEN 完

こんにちは鬼子です。

今回も短編の小説に落ち着きました(^^)


次は何を描こうか悩む日々、色々忙しくなり、思うように動けない日々が続いております。


寒いですしね


楽しんでいただけると幸いです。

御愛読ありがとうございました。

では、また!

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